寝違えは、眠りから覚めた時に首の後ろや肩に痛みが出る状態を指す日常語だ。原因を一つに決める診断名ではなく、初日は必ず冷やし、翌日以降に温めるという一律の順序も確立していない。

日本整形外科学会は、寝違えの正確な原因を示す証拠はなく、筋肉の血流不足や疲労、けいれん、頸椎の関節包の炎症などが考えられると説明している。起床後の経過や随伴症状を見ず、「炎症だから冷却」と決めるのは早い。

先に確認する救急受診の兆候

首のこわばりと同時に発熱、強い頭痛、嘔吐、意識がもうろうとする状態、けいれん、押しても色が消えない点状の出血が現れた場合は、直ちに救急受診する。厚生労働省は、侵襲性髄膜炎菌感染症の髄膜炎例で頭痛、発熱、髄膜刺激症状、けいれん、意識障害がみられ、敗血症例では点状出血や出血斑が現れるとしている。寝違えと自己判断して温度刺激やストレッチを試す状況ではない。

呼吸しにくい、飲み込みにくい、見え方が変わった、腕や脚の感覚または動きに新たな異常がある場合も急いで医療機関へ向かう。豪州政府出資のhealthdirectは、発熱、呼吸・嚥下の異常、視覚の変化、手足の感覚や動きの変化を、斜頸で緊急の医療評価が必要な兆候に挙げている

転倒、交通事故、スポーツ中の衝突の後に首が痛む場合は、起床時の寝違えとは分けて考える。強い痛みが続く、市販の鎮痛薬でも軽くならない、腕や脚へ痛みが走る、頭痛に手足のしびれや脱力を伴う場合は速やかな診察が要る。

医師が患者の首の両側に手を添えて診察する様子(イメージ)

「初日は冷却」の根拠が当てはまる範囲

冷却の手順が示される代表例は、外傷による頸部の捻挫や筋損傷だ。米国整形外科学会は、頸部捻挫・挫傷では受傷後2〜3日、冷却材を布で包んで1回15〜30分、1日数回当てる方法を示し、温熱は筋肉のけいれんを緩める目的で1回20分以内としている

この資料が扱うのは「injury」としての頸部捻挫・挫傷であり、外傷がない起床時の寝違え全般ではない。日本整形外科学会の寝違え資料には、冷却を先行させる時間手順が記載されていない。一方、healthdirectは一般的な斜頸の自宅対応として穏やかな温熱とマッサージを挙げており、資料間の助言は一致していない。

したがって、初日は全員が冷却しなければ回復が遅れるとは断定できない。明らかな外傷後で腫れや熱感があり、冷却を試す場合は布越しに当て、皮膚へ直接触れさせない。冷却や温熱で痛みが増す場合は中止する。

首の側面に布で包んだ冷却材を当てる人(イメージ)

動かし方──固定せず、痛みも我慢しない

首をまったく動かさない状態を続ける必要はないが、痛む方向へ無理に回すのも避ける。日本整形外科学会は、起床時の痛みが数時間から数日で改善する場合、徐々に首を動かしていくのが一般的とし、発症時は痛む方向へ動かさないよう案内している。

ストレッチは痛みを我慢しない範囲に限る。日本整形外科学会は、緩やかなストレッチが役立つ場合がある一方、痛みを我慢して行うと逆効果になる場合があるとしている。勢いをつけて首を回す、他人が強く引っ張る、痛みを押して長時間続ける方法は避ける。

healthdirectは、痛みが悪化しない範囲で普段に近い活動と自然な首の動きを保つよう案内している。完全に固定することと、痛みを押して動かすことのどちらか一方に寄せず、症状の変化に合わせる。

首に温熱パッドを巻いた人(イメージ)

受診する時期と薬の線引き

痛みが強い、改善せず続く、診察で手足のしびれや動きの異常が疑われる場合は整形外科で評価を受ける。日本整形外科学会は、寝違えなら数時間から数日で改善するのが一般的とし、治らない場合は別の病気の可能性を調べる必要があるとしている。healthdirectも、悪化する場合または7〜10日で改善しない場合の受診を案内している。

市販の鎮痛薬を使うかは、年齢、妊娠、持病、常用薬で判断が変わる。購入前に薬剤師または登録販売者へ相談し、処方薬の増減や中断も自己判断で行わない。

腰を急に痛めた場合も、冷却から温熱へ切り替える固定手順の根拠は限られる。部位は異なるが、温度刺激の位置づけは「ぎっくり腰」は冷やすか温めるかでも整理している。

小児、妊婦、持病や常用薬がある人

小児。 発熱、呼吸しにくい状態、強い不機嫌、手足の感覚や動きの変化を伴う首の傾きは、成人の寝違えとして扱わず、速やかに小児科または救急外来へつなぐ。乳児が片側で授乳しにくい、いつも同じ側だけを向く、顔や頭の形に左右差がある場合も医師へ相談する。首を大人が強く動かさない。

妊婦。 市販薬を自己判断で選ばない。厚生労働省は、妊娠中には使用を避けるべき医薬品がある一方、継続が必要な薬もあるため、薬を始める時も中断する時も医師または薬剤師へ相談するよう求めている

持病や常用薬がある人。 厚生労働省は、持病がある人、治療中の人、妊娠・授乳中の人が一般用医薬品を選ぶ際は、薬剤師または登録販売者へ相談するよう案内している。受診時や購入時には、治療中の病気と現在使っている薬を伝える。

自宅で首をゆっくり傾ける妊婦(イメージ)

よくある質問

寝違えの初日は必ず冷やすのか
必須とは言い切れない。外傷性の頸部捻挫では受傷後の冷却手順があるが、起床時の寝違え全般を対象とした日本の公的資料には、一律の順序が示されていない。

温めてもよいのか
healthdirectは斜頸の自宅対応に穏やかな温熱を挙げている。ただし、冷却と温熱のどちらでも悪化する場合は中止し、強い痛みや警告サインがあれば受診を優先する。

痛くても首を伸ばすべきか
痛みを我慢したストレッチは避ける。痛む方向へ無理に動かさず、症状が改善するにつれて動く範囲を徐々に戻す。

何日で受診するのか
発熱、意識障害、呼吸・嚥下の異常、手足の感覚や動きの変化は日数を待たず急いで受診する。警告サインがなくても、痛みが強い、悪化する、数日たっても改善へ向かわない場合は整形外科へ相談する。

首の温冷ケアと頭痛が重なる場合は、締めつける頭痛で119番を急ぐ兆候と首の温冷ケアも参照できる。