膝の痛みの受診先は、救急性を確かめた後、外傷の有無と診断がついているかで分ける。原因がまだ分からない初診では整形外科が起点になり、診断後に筋力、関節の動く範囲、歩行や階段動作を立て直す段階ではリハビリテーション科が関わる。

両科の担当範囲には重なりがあり、医療機関ごとに外来の受付方法も異なる。「外傷なら整形外科、慢性痛ならリハビリテーション科」と症状の長さだけで二分せず、最初に救急の兆候を除外する。

診察室の机に置かれた膝関節のX線画像、診療記録とペン(イメージ)

荷重不能・変形など外傷後の兆候は119番

転倒、衝突、ひねり動作の後に膝や脚が変形している、動かせない、激しく痛む、力が入らない、しびれる、足先が反対側より冷たい・青白い、または患側へ体重をかけられない場合は119番へ連絡する。 総務省消防庁の2014年版救急受診ガイドは、手足のけがでこれらの兆候が一つでもあれば、緊急度を「赤」として119番につなげている。痛む脚で歩けるかを繰り返し試さない。

外傷がなくても、膝を動かせない、体重をかけられない、著しく腫れた・形が変わった、膝が固定されて伸びない、発熱や悪寒と膝の赤み・熱感が重なる場合は、当日中に救急相談または医療機関へ連絡する。 英国の公的医療サービスNHSは、強い膝痛、運動・荷重不能、著しい腫れや変形、ロッキング、発熱を伴う赤み・熱感を、直ちに緊急相談する兆候としている

安全に移動できない、重い外傷がある、意識や呼吸の異常を伴う場合は119番を優先する。救急車を呼ぶか迷う成人は、実施地域で♯7119を使う。厚生労働省は、♯7119が一部地域で実施され、医師・看護師らが緊急性と受診時期を判断し、必要なら緊急出動へつなぐと案内している

夜間の病院救急入口と赤い救急表示(イメージ)

外傷か、徐々に始まった痛みかを分ける

転倒や衝突、着地、急停止、方向転換、膝をひねった場面があれば、日時と動きを記録する。直後から腫れたか、音がしたか、膝が抜ける感じや引っかかりがあるか、完全に伸ばせるか、体重をかけられるかも確認する。日本整形外科学会は、膝関節捻挫の評価では受傷時の外力と膝の姿勢を聞き、圧痛や不安定性を診察し、X線で分からない靱帯・半月板・軟骨の損傷には診察や磁気共鳴画像(MRI)を使うと説明している。痛みが軽い、後から歩けたという理由だけで損傷を除外しない。

明確な外傷がなく、立ち上がりや歩き始め、階段、しゃがむ動作で痛む場合も、痛みが出る動作と時間帯を記録する。日本整形外科学会は、変形性膝関節症では動作開始時の痛みから始まり、進行すると階段昇降、膝を伸ばす動作、歩行が難しくなる例があり、問診、可動域・腫れ・変形の診察、X線、必要に応じたMRIで評価すると説明している。これは症状から変形性膝関節症を自己診断するための一覧ではない。

運動場の脇に置かれた膝用サポーターと運動靴(イメージ) 膝痛の受診経路を、救急兆候、外傷、診断の有無から分けるフロー図

診断前の受診は整形外科を起点にする

日本整形外科学会は、整形外科を骨・関節、周囲の筋肉、それらを支配する神経からなる運動器の疾患を扱う診療科と位置付け、膝関節外科やスポーツ医学を専門分野に挙げている。原因が分からない膝痛、外傷後の腫れや不安定感、動作制限がある初診では、整形外科から始めると構造と機能を一緒に評価しやすい。

診察では、痛みが始まった経過、腫れ、熱感、圧痛、可動域、安定性、歩行を確認する。画像検査は全員に同じ順番で行うものではない。骨折や変形を調べるX線、靱帯や半月板などを調べるMRIの要否は、外傷歴と診察所見を基に医師が決める。

医療用モニターに映る膝関節画像と診察器具、診療記録(イメージ)

リハビリテーション科は機能と生活動作を評価

日本リハビリテーション医学会は、変形性膝関節症やスポーツによる運動器障害をリハビリテーション治療の対象に挙げ、筋力と関節可動域、立ち上がり、歩行、階段などの日常生活動作の改善を目指すと説明している。診断後も歩き方、筋力、膝の動く範囲、仕事や競技への復帰が課題として残る場合は、リハビリテーション科が評価と治療計画を担う。

リハビリテーション科を初診で直接予約できるか、整形外科やかかりつけ医からの紹介が必要かは医療機関で異なる。両科のどちらを初診窓口とするかについて、全国一律の公的な振り分け基準は、本稿の執筆時点で確認できていない。予約時に「膝痛の原因は未診断」「診断済みで機能回復の相談を希望」のどちらかを伝え、受付方法を確かめる。

リハビリテーション室の弾力バンド、訓練用階段と膝運動器具(イメージ)

予約前に四つの情報を記録

受診先へ伝える内容は、①始まった日時と急か徐々か、②転倒・衝突・ひねり動作の有無、③痛む場所と腫れ・赤み・熱感・引っかかり・不安定感、④膝を曲げ伸ばしできるか、歩けるか、体重をかけられるか、の四つである。外傷時の姿勢、受傷直後と現在の変化、発熱の有無も加える。

痛みや腫れが強くなる、歩けていたのに荷重できなくなる、発熱や赤み・熱感が加わる場合は、予約日を待たず前段の救急基準で判断する。膝を無理に曲げ伸ばしし、ロッキングや不安定感を再現する自己検査は行わない。

机に置かれた膝痛の記録用紙、カレンダーとペン(イメージ)

小児・妊婦、持病や常用薬がある人

小児。 成人の振り分けをそのまま当てはめない。原因の分からない跛行は膝以外から生じる場合があり、保護者が病名を決めず受診につなぐ。NHSは、小児の原因不明の跛行は診察を受け、突然の股・膝・大腿の痛み、荷重不能、脚の変形、高熱や悪寒を伴う全身不調、症状の悪化があれば直ちに救急評価を受けるよう示している。日本では安全に移動できなければ119番へ連絡する。

妊婦・妊娠の可能性がある人。 受診時に妊娠の可能性を伝え、膝痛を理由に市販薬を自己判断で始めたり、処方薬を中断したりしない。厚生労働省は、妊娠中に使えない市販薬があり、妊娠判明後も継続が必要な処方薬があるため、開始と中止を自分で決めず医師または薬剤師へ相談するよう案内している

持病・常用薬がある人。 持病、膝の手術歴、処方薬、市販薬、サプリメントを予約時と診察時に伝える。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、処方薬の量や中止を自己判断で変えず、複数の医療機関や薬局を利用する際は市販薬を含む使用中の薬をすべて伝えるよう求めている。膝の手術直後は一般的な初診の振り分けより、退院時に示された連絡基準を優先して手術先へ相談する。

よくある質問

膝の痛みで最初に受診する診療科はどこか
救急の兆候がなく原因が未診断なら、整形外科を起点にする。すでに診断を受け、筋力、可動域、歩行や階段動作の回復が主な課題なら、担当医とリハビリテーション科の関与を確認する。

膝の痛みで119番を呼ぶ兆候は何か
外傷後の変形、運動不能、激痛、脱力・しびれ、反対側より冷たい・青白い足先、荷重不能は119番の対象である。外傷がなくても荷重不能、著しい腫れや変形、発熱を伴う赤み・熱感は当日中に緊急相談し、安全に移動できない場合は119番へ連絡する。

けがをしていない膝痛も整形外科でよいか
整形外科は外傷に限らず、加齢変化を含む運動器疾患を扱う。痛みが徐々に始まった場合も、原因が未診断なら整形外科で診察を受け、必要な検査とリハビリテーションの時期を判断する。