首・肩の痛みでは、痛む場所より先に、発症の速さ、外傷の有無、しびれ・脱力、発熱、胸部症状を分ける。突然の神経症状や呼吸・胸部の異常があれば診療科選びの段階ではなく、救急要請を優先する。

警告サインがなく、首すじから肩の張りや痛み、動かしにくさが中心なら、整形外科が受診の起点になる。日本整形外科学会は、肩こりの診察で筋肉の圧痛・緊張、肩関節の可動域、頚椎疾患を確認し、X線や磁気共鳴画像(MRI)、筋電図などを必要に応じて選び、まず整形外科医へ相談するよう案内している。手までしびれる、力が入りにくい、歩き方や手先の動作が変わった場合は、神経の評価を加える。

頚部の可動域評価表、角度計、治療器具が置かれたリハビリテーション室の机(イメージ)

突然の脱力・しびれ、胸部症状、38℃以上の発熱は119番

厚生労働省は、突然のしびれ、突然の片側の腕・脚の脱力、顔半分の動かしにくさ、ろれつが回りにくい状態を、迷わず救急車を呼ぶ成人の症状に挙げている。 支えなしで立てないほどの急なふらつき、急な呼吸困難、胸の中央を締め付けるか圧迫する痛みが2〜3分続く場合も救急要請の対象である。主な訴えが首・肩の痛みでも、これらが重なれば直ちに119番する。

東京消防庁の「首が痛い・肩が痛い」救急受診ガイドは、痛みが一瞬で起きた場合、両腕または手足の動き・感覚の異常、突然の激しい頭痛や吐き気、胸部不快感、意識の変化、息苦しさ、38℃以上の発熱を緊急度「赤」の確認項目にしている。一瞬で始まる強い痛みや発熱を、姿勢や肩こりだけの問題と決めない。

同ガイドは、けがの直後、腕のしびれや脱力、首の腫れ・赤み・熱感を、早い受診判断へ進む「黄」の項目に挙げている。転倒や衝突後に首を動かしにくい場合は、繰り返し可動域を試さず医療機関へ連絡する。自力で安全に移動できない、または前段の救急兆候がある場合は119番へ切り替える。

明るく表示された病院の救急外来入口(イメージ)

通常受診は整形外科が軸、広い神経症状は脳神経内科

警告サインがなければ、痛みやこわばりが首・肩に限られるか、腕・手指へ続くか、両手足や歩行にも変化があるかで入口を整理する。これは病名を決める表ではなく、最初に相談する診療科を選ぶための目安である。

主な状態 受診の起点 伝える内容
首から肩の張り・痛み、動作や姿勢との関連、外傷後の痛み 整形外科 発症時刻、痛む動き、可動域、外傷の経過
首から肩・腕・手指へ続く痛みやしびれ、上肢の筋力低下 整形外科 しびれる指、弱くなった動作、首の向きとの関係
しびれの範囲が広い、両手足に及ぶ、歩行・手先・嚥下・発話にも変化がある 脳神経内科 症状の分布、左右差、発症の速さ、随伴症状
リハビリテーション科での初診を希望する 受診予定施設へ確認 初診受付の有無、対象疾患、紹介状の要否

日本神経学会は、脳神経内科が脳、脊髄、神経、筋肉の病気を扱い、しびれ、脱力、歩きにくさ、ふらつき、むせ、話しにくさなどを診察し、骨や関節が原因なら整形外科へ紹介すると説明している。ただし、突然の片側脱力や発話の異常は外来予約を待つ症状ではなく、119番の対象である。

整形外科、脳神経内科、リハビリテーション科のどこを初診窓口とするかを一律に定めた日本国内の全国共通資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。診療科名が同じでも初診対象や検査体制は施設ごとに異なる。厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)は、診療科目、対応可能な疾患・治療内容、診療時間から全国の医療機関を検索できる。受診前に施設へ電話し、首・肩の痛みと神経症状の内容を伝える。

整形外科、脳神経内科、リハビリテーション科への分岐を示す院内案内(イメージ)

手までしびれる時は神経根と脊髄を分けて評価

頚椎症性神経根症(cervical radiculopathy)は、首の神経根が圧迫または刺激されて起こる病態である。日本整形外科学会は、肩から腕の痛み、腕や手指のしびれ、上肢の筋力低下や感覚障害が現れ、首を後ろへ反らすと症状が強まる場合があると説明している。この組み合わせに当てはまっても神経根症とは確定せず、左右の筋力、感覚、反射、首の動きを診察で確認する。

手先の変化と歩行の変化が重なる場合は、腕だけの神経根症とは分けて考える。日本整形外科学会は、頚椎症性脊髄症でボタンの留め外し、箸、筆記が不器用になり、足がもつれる、階段で手すりが必要になる、手足がしびれるなどの症状が現れると説明している。徐々に進む場合も早めに整形外科か脳神経内科へ連絡し、突然起きた場合は119番の基準を優先する。

頚椎と神経根の模型、腕の神経分布図が置かれた診察台(イメージ)

警告サインがない時の対応──姿勢を切り、無理に伸ばさない

外傷、突然の発症、脱力、広がるしびれ、発熱、胸部症状がなく、長い同一姿勢の後に張りや軽い痛みが出た場合は、同じ姿勢を中断する。痛みを増やさない範囲で姿勢を変え、肩と首を穏やかに動かす。日本整形外科学会の肩こり資料は、同じ姿勢を長く続けず、蒸しタオルなどで温め、適度な運動を行う方法を示している。

日本整形外科学会は、起床時の首の痛みが数時間から数日で改善する場合は徐々に首を動かし、強い痛みや改善しない状態では整形外科を受診し、痛みを我慢したストレッチを避けるよう説明している。首を勢いよく回す、痛む方向へ何度も押す、家族が強く動かす方法は取らない。しびれや脱力が加わる、痛みが急に強くなる場合は自宅対応を止める。

目線の高さに調整したモニターと、タオルで包んだ温熱パックがある机(イメージ)

画像検査──MRIだけで症状の原因は決まらない

初診では、発症経過と外傷歴を聞き、首・肩の可動域、筋力、感覚、反射を調べた上で画像検査を選ぶ。日本整形外科学会の肩こり資料は、問診、触診、神経学的診察、肩関節可動域と頚椎疾患の確認を行い、X線、MRI、筋電図などを必要に応じて使うとしている。症状が軽いか強いかという一項目だけでMRIの要否は決まらない。

画像にも限界がある。日本整形外科学会の頚椎症性神経根症資料は、MRIで神経根の圧迫を確認しにくい場合があると説明する。同学会の頚椎症性脊髄症資料は、中年以降では症状がなくてもX線の頚椎症性変化やMRIの脊髄圧迫所見がみられる場合があり、検査所見だけでは診断できないとしている。画像は症状、診察所見、外傷や感染の疑いと合わせて読む。

首・肩の痛み全般について、初診から何日後にX線やMRIを行うかを一律に定めた日本の一般向け全国共通資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。外傷、進む筋力低下、歩行や手先の変化、38℃以上の発熱などがあれば、日数を待たず医療機関へ連絡する。

頚椎画像を表示した医療用モニターと診察記録(イメージ)

受診前は発症時刻、しびれの範囲、弱くなった動作を記録

診察では、痛みが始まった時刻と速さ、転倒・衝突の有無、痛みが首から腕へ続くか、どの指がしびれるか、どの動作で力が入りにくいかを伝える。ボタン、箸、筆記、歩行、階段の変化、発熱、胸部不快感、息苦しさも記録する。症状が左右どちらか、両側か、広がっているかという経過も分流の材料になる。

医療機関には、持病、過去の首・肩のけがや手術、使用中の処方薬と市販薬を伝える。救急車を呼んだ場合は、保険証、診察券、お薬手帳を準備し、発症から救急隊到着までの変化を説明する。

首・肩の痛み、手指のしびれ、力の変化を記録するノート(イメージ)

小児、妊婦、持病・常用薬がある人

小児。 成人向けの分科表や自宅対応をそのまま当てはめず、小児科または受診予定施設へ相談する。意識や呼吸の異常、突然の手足の動かしにくさがあれば119番する。厚生労働省は、休日・夜間に子どもの症状への対処や受診先で迷う場合、全国共通の短縮番号「♯8000」で小児科医師・看護師へ相談できると案内している。受付時間は都道府県ごとに異なる。

妊婦・妊娠の可能性がある人。 受診先へ妊娠の可能性を伝え、成人一般の服薬判断を当てはめない。厚生労働省は、薬局やドラッグストアで買える医薬品にも妊娠中に使えないものがあり、使用開始や処方薬の中断を自己判断せず、医師または薬剤師へ相談するよう求めている

持病・常用薬がある人。 成人一般の自宅対応だけで判断せず、かかりつけ医か受診先へ相談する。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、処方薬の量を変えたり中止したりせず、市販薬を含む使用中の薬を医師・薬剤師へすべて伝えるよう案内している。首・肩の痛みを理由に常用薬を自己調整しない。

よくある質問

首・肩の痛みは最初からリハビリテーション科でよいか?
日本の一般向け学会資料では、警告サインのない肩こりや強い寝違えは整形外科への相談が示されている。リハビリテーション科が初診を受けるか、紹介後の診療を中心にするかは施設で異なるため、事前に確認する。

頚部の可動域評価表と治療器具が置かれた整形外科の診察室(イメージ)

手のしびれは整形外科と脳神経内科のどちらか?
首から肩、腕、手指へ続く痛みやしびれは整形外科が入口になる。両手足に及ぶ、歩行や手先、嚥下、発話にも変化がある場合は脳神経内科も候補になる。突然の片側脱力や発話異常は外来ではなく119番を優先する。

頚椎と神経根の模型、腕の神経分布図が置かれた診察台(イメージ)

初診でMRIを受けるべきか?
MRIを先に選ぶ固定手順ではない。問診と診察で頚椎、肩関節、神経のどこを調べるかを絞り、必要に応じてX線、MRI、筋電図などを選ぶ。画像所見だけで症状の原因は確定しない。

頚椎画像を表示した医療用モニターと診察記録(イメージ)

首・肩の痛みに発熱が重なったら?
東京消防庁の救急受診ガイドは、首・肩の痛みと38℃以上の発熱の組み合わせを緊急度「赤」に分類している。自宅で温めたり伸ばしたりせず、119番へ連絡する。