2026/27シーズンのインフルエンザ定期接種は、当初予定されていた高用量ワクチンの導入が見送られ、従来の標準量を軸に実施される。厚生労働省は2026年7月23日、製造工程上の課題で今季の供給が困難になったとして、高用量ワクチンの2026年度からの定期接種化を見送る方針を示した。
標準量ワクチンの制度は変わらない。対象は65歳以上と、心臓、腎臓、呼吸器またはHIVによる免疫機能に一定の障害がある60〜64歳で、毎年度の秋冬に1回接種する。接種開始日、予約方法、自己負担額は全国共通ではなく、市区町村の発表を確かめる必要がある。
接種後に119番を急ぐ症状
接種後に全身の赤い発疹や腫れ、息苦しさ、意識がもうろうとする状態が急に現れた場合は、アナフィラキシーが疑われるため119番を急ぐ。日本救急医療財団心肺蘇生法委員会の市民向け指針は、全身の発疹や腫れ、気道が狭くなる息苦しさ、血圧低下に伴う意識の異常を挙げ、直ちに119番へ通報するよう示している。厚生労働省は、ショックや呼吸困難を含むアナフィラキシー様症状が接種後の比較的早い時期に起こる場合があるとして、接種後30分は医療機関内で安静にするよう案内している。帰宅後に異常が出た場合も、速やかに医療機関へ連絡する。
定期接種の対象──65歳以上と一部の60〜64歳
厚生労働省が示す定期接種の対象は、65歳以上と、心臓、腎臓、呼吸器の機能またはHIVによる免疫機能に重い障害がある60〜64歳で、実施は毎年度の秋冬に1回である。年齢だけでみれば60〜64歳の全員が対象になるわけではない。
定期接種は市区町村が実施するため、同じ都道府県内でも期間や自己負担額が異なる場合がある。厚生労働省のQ&Aも、実施期間と費用は自治体によって異なり、定期接種対象外の人にも自治体独自の助成がある場合を示している。居住地の自治体サイト、予診票、指定医療機関の案内を確認する。
高用量ワクチン──今季の導入は見送り
高用量ワクチンは、標準量より抗原量を増やした高齢者向けの製剤だ。厚生労働省の審議会は75歳以上を対象に定期接種へ加える方針をいったん了承していたが、2026/27シーズンに予定した3価製剤の承認と供給が間に合わなくなった。今回の決定は今季の導入見送りであり、将来の定期接種化を撤回したものではない。薬事承認と供給状況を踏まえ、導入時期を改めて審議する。
このため、2026年秋に75歳以上が一律に高用量製剤を公費で受ける制度は始まらない。高用量を前提に予約先を選ばず、市区町村が案内する定期接種の対象製剤を確認する。
2026/27シーズンも3価
国内で広く使われる不活化インフルエンザワクチンは、A型のH1N1株とH3N2株、B型のビクトリア系統株を含む3価で、厚生労働省はA型とB型の双方への効果が期待されると説明している。厚生労働省は2026年6月4日付で、2026/27シーズンのインフルエンザHAワクチン製造株を決定した。
ワクチンは感染を完全に遮断するものではない。厚生労働省は、発病を抑える効果は一定程度にとどまる一方、発病後の重症化や死亡を予防する効果が期待されると説明している。接種後も手洗い、換気、体調不良時の外出回避といった基本的な感染対策は残る。
接種時期と新型コロナワクチンとの同時接種
日本では例年12月から3月に流行し、1月末から3月上旬にピークを迎えることが多いため、厚生労働省は12月中旬までに接種を終えることが望ましいとしている。実際の日程は、自治体やかかりつけ医が示す実施期間の中で決める。
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは、医師が認めた場合に同時接種が可能で、別の日に受ける場合も接種間隔の制限はない。同時接種の適否は、当日の体調、過去の副反応、持病を確認した医師が判断する。
接種前に医師へ伝える状態
厚生労働省によると、発熱中または重い急性疾患にかかっている人は、その時点では接種を受けず、過去にワクチン成分でアナフィラキシーを起こした人も接種対象外となる。心臓、腎臓、肝臓、血液、呼吸器の病気、けいれん歴、免疫不全、鶏卵や鶏由来成分へのアレルギーがある人は、予約時と予診時に医師へ伝える。
接種部位の赤み、腫れ、痛みは10〜20%、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感は5〜10%にみられ、通常は2〜3日で消えると厚生労働省は案内している。症状が強まる、長引く、手足に力が入りにくい、けいれんや意識の異常が出る場合は医療機関へ連絡する。
子ども、妊娠中、持病や常用薬がある人
子どもと妊娠中の人は、国の高齢者向け定期接種の対象区分とは別に扱われる。自治体が小児や妊婦へ独自助成を設ける場合があるため、対象年齢、助成期間、指定医療機関を居住地で確認する。小児は年齢や製剤によって接種方法が異なるため、成人の予定をそのまま当てはめない。
妊娠中・授乳中の人、基礎疾患がある人、免疫を抑える治療を受ける人、常用薬がある人は、接種時期を産科や主治医と相談する。発熱や急性疾患がある場合も含め、当日の予診で接種を延期するかを医師が判断する。
よくある質問
2026年秋は全国一斉にいつ始まるのか
全国一律の開始日ではない。定期接種は秋冬に1回だが、実施期間、予約方法、費用は市区町村ごとに確認する。
75歳以上は高用量ワクチンを公費で受けるのか
2026/27シーズンの定期接種への導入は見送られた。供給遅延が理由で、今後の導入時期は改めて審議される。
3価は4価より効果が低いのか
価数だけで一律には判断できない。国内で広く使われる3価はA型2株とB型1株で構成され、厚生労働省はA型とB型の双方への効果が期待されるとしている。
新型コロナワクチンと同じ日に受けられるのか
医師が認めれば同時接種が可能だ。別日にする場合も接種間隔の制限はない。
出典・参考資料
- 第66回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料1 高用量インフルエンザワクチンについて(厚生労働省)2026年度からの高用量ワクチン定期接種化を供給遅延で見送る方針
- インフルエンザワクチン(季節性)(厚生労働省)定期接種の対象、時期、効果、副反応、接種前の注意事項
- 令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A(厚生労働省)3価ワクチンの構成、接種時期、自治体による日程と費用の違い
- ワクチンの供給状況について(厚生労働省)2026年6月4日付のインフルエンザHAワクチン製造株決定
- 新型コロナワクチンQ&A(厚生労働省)他のワクチンとの同時接種と接種間隔
- 救急蘇生法の指針2020(市民用・改訂6版)(日本救急医療財団心肺蘇生法委員会 / 政府広報オンライン)アナフィラキシーを疑う症状と119番通報