新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019、COVID-19)は、2023年5月に5類感染症へ移行した後も、定点医療機関からの報告で流行を追っている。2026年8月の日本では、直近週の全国値が前週を下回り、国内で多く検出された系統も海外の一部地域とは異なった。

単週の患者報告や変異株名だけで個人の危険度は決まらない。救急の警告サインを先に確認し、年齢、持病、免疫機能、妊娠、症状が始まった日を分けて判断する必要がある。

先に確認する──急な息苦しさと意識の異常は119番

顔色が明らかに悪い、唇が紫色になる、急に息苦しくなる、少し動いただけで息苦しい、胸が痛む、横になれず座らないと息ができない、意識がおかしい、または意識がないといった変化があれば119番を要請する。日本感染症学会、日本救急医学会など4学会の声明は、これらを救急車の利用をためらわない症状として挙げている。検査結果を待ちながら自宅で経過を見る場面ではない。

水分を飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい場合も早めの診療が要る。65歳以上、基礎疾患がある人、妊娠中の人は、症状が軽くてもかかりつけ医へ早めに相談する。

小児・妊婦、持病や常用薬がある人

小児では年齢と体重で適応となる治療が異なり、成人向けの薬や受診判断をそのまま当てはめない。顔色、呼吸、水分摂取、反応の変化を見て、かかりつけの小児科へ相談する。妊娠中は使えない抗ウイルス薬があり、妊娠の可能性も含めて受診時に伝える。

持病や常用薬がある人は、お薬手帳か服薬一覧を医療機関へ持参する。新型コロナの抗ウイルス薬には、腎機能による調整や併用できない薬がある。慢性病の薬を自己判断で中止せず、家族の残薬も使わない。

1 外来定点1.12、入院報告287人──同じ週でも別の動き

厚生労働省が2026年8月21日に公表した第33週(8月10〜16日)の全国報告数は3,896件、定点当たり1.12で、前週の1.79と前年同期の6.30を下回る一方、基幹定点の入院報告は前週の246人から287人へ増えた。第29〜33週の定点当たり報告数は2.12、1.53、1.70、1.79、1.12と推移した。外来報告と入院報告は同じ方向へ動くとは限らない。

定点報告は、指定された医療機関が診断した患者を集計する仕組みである。未受診者を含む国内の感染者総数ではない。感染症週報の共通注記は、お盆に当たる第33週頃は報告数が下がる傾向があり、2025年第15週から急性呼吸器感染症定点の数も変わったため、解釈に注意が要るとしている。次週以降の外来と入院の推移を確認する必要がある。

2 国内最多はBA.3.2──PQ.16.1.1とは別の監視結果

国立健康危機管理研究機構が8月19日時点でまとめた2026年7月(第27〜31週)の国内ゲノム監視では、BA.3.2が119検体中81検体、68.07%で最も多かった。次いでXDV.1.5.1.1.8.1が19検体、15.97%だった。

この国内表でPQ.16.1.1は個別の系統として表示されていない。ただし、検出割合が1%未満の系統は「その他」にまとめられ、解析データの追加登録で数値も変わる。国内に存在しないとの結論は導けない。

PQ.16.1.1は、世界保健機関(World Health Organization、WHO)が7月27日に監視下の変異株(Variant Under Monitoring、VUM)へ指定した系統である。WHOは世界的な追加の公衆衛生リスクを低いと評価し、他の流行系統より臨床的に重くなるとの監視結果はない一方、比較研究がなく確信度は低いとした。「監視下」は追跡を優先する分類であり、重症度が上がったとの判定ではない。

3 高齢者・基礎疾患・免疫低下は症状初期に相談

高齢、悪性腫瘍、肥満、心血管疾患、慢性腎臓病、慢性呼吸器疾患、糖尿病、免疫抑制治療、臓器移植、妊娠などは重症化リスクの評価対象になる。該当項目の数、持病の管理状態、当該シーズンのワクチン接種歴、症状の経過を合わせて医師が判断する。

発熱、のどの痛み、鼻水、せき、強いだるさは新型コロナ以外の呼吸器感染症でも起こる。病名を症状だけで決めず、呼吸、水分摂取、意識の変化と高リスク条件を優先して受診時期を判断する。高リスク者は検査だけを先に済ませようとして診療を遅らせない。

4 抗ウイルス薬は発症初期の評価と相互作用確認

日本の5学会による2025年診療指針は、経口抗ウイルス薬に発症から3日以内または5日以内という開始時期があり、重症化リスク、年齢、腎機能、妊娠・授乳、併用禁忌薬を合わせて選ぶとしている。陽性なら全員が同じ薬を使う仕組みではない。

症状が始まった日と常用薬の一覧は、診療時の判断材料になる。高リスク者に呼吸器症状が出た場合は早めに医療機関へ連絡し、抗ウイルス薬の要否は医師の判断による。相互作用を心配しても、常用薬を自分で休薬しない。

5 ワクチンは重症化予防が中心──2026年度詳細は未公表

厚生労働省は新型コロナワクチンに入院や死亡などを減らす重症化予防効果が認められたと説明し、毎年度秋冬に自治体の定期接種を行っているが、2026年度の対象者と使用製剤の詳細は本稿執筆時点で未公表としている

現行制度の定期接種は65歳以上と所定の障害がある60〜64歳が対象で毎年秋冬に1回、対象外や期間外は任意接種となり、接種後も感染する場合がある。したがって、過去の接種回数だけで2026年度の要否は決まらない。国の詳細発表と居住自治体の実施期間、自己負担額、指定医療機関を照合する必要がある。

よくある質問

第33週の3,896件は、日本の新規感染者数か
感染者総数ではない。指定医療機関から報告された患者数で、未受診者は含まず、定点外の医療機関の患者も全国値へ直接は入らない。

PQ.16.1.1は日本の主流株か
最新の国内公表資料からはそう読めない。2026年7月の119検体ではBA.3.2が68.07%で最も多く、PQ.16.1.1は個別表示されていない。ただし、国内未流入との意味でもない。

自宅検査が陰性なら呼吸困難を見ても待ってよいか
待たない。急な息苦しさ、胸痛、横になれない呼吸困難、唇の変色、意識の異常があれば119番を要請する。検査結果より緊急性を優先する。

陽性なら抗ウイルス薬を飲むのか
一律ではない。重症化リスク、発症日、腎機能、妊娠、常用薬との相互作用を医師が評価する。家族の残薬を使わず、常用薬も自己判断で止めない。

2026年度の定期接種はいつ始まるか
厚生労働省は毎年度秋冬の実施方針を示しているが、2026年度の対象者と使用製剤の詳細は本稿執筆時点で公表していない。自治体の日程と費用が出てから予約条件を確認する。