遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness、DOMS)は、慣れない運動や普段より強い負荷をかけた後、時間を置いて現れる筋肉の痛みだ。痛む部位へ同じ高強度の負荷を重ねず、症状が弱まるまで運動の種類と強度を変える。

ただし、運動後の痛みをすべて遅発性筋肉痛として扱うのは危険である。予想を超える強い痛み、はっきりした脱力、茶色やコーラ色の尿があれば、横紋筋融解症など別の状態を疑い、直ちに医療機関を受診する。

病院の救急部門へ続く廊下(イメージ)

先に確認する受診の警告サイン

米疾病対策センター(CDC)は、予想を超える筋肉痛やけいれん、茶色またはコーラ色の尿、脱力や強い疲労を横紋筋融解症の主な症状に挙げ、一つでもあれば直ちに医療を受けるよう求めている。症状は筋肉を傷めた直後ではなく、数時間から数日後に始まる場合もある。

尿の色が変わっていなくても、強い痛みや脱力があれば除外できない。CDCは症状が脱水や熱けいれんなどと似るため、症状だけでは判別できず、診断には医療機関でのクレアチンキナーゼ(CK)の血液検査が要るとしている。

運動中に急な鋭い痛みが出た、関節を動かせない、転倒や衝突の直後から痛む場合も、翌日に出る遅発性筋肉痛とは経過が異なる。厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」情報シートは、関節や筋肉の強い痛み、胸痛、動悸、めまい、普段と違う強い疲れなどが運動中に現れたら、直ちに運動を中止するよう示している

翌日から痛む遅発性筋肉痛

米国スポーツ医学会(ACSM)は、遅発性筋肉痛は通常、運動の12〜24時間後に始まり、24〜72時間後に最も強くなる場合があると説明している。下り坂を走る、重りを下ろすといった、力を出しながら筋肉が伸ばされる動作で起きやすい。

原因を乳酸の蓄積とみなすのは正確ではない。ACSMは、乳酸はこの過程の構成要素ではなく、慣れない負荷による筋線維の微細な損傷に対する修復過程が関係するとしている。痛みの有無はトレーニング効果の判定材料にもならない。

太ももに温熱パッドを当てる人(イメージ)

同じ部位を鍛えるかは痛みの強さで分ける

日常動作に支障がなく、動かすと少し張る程度なら、散歩などの軽い活動や、痛くない別の部位の運動へ切り替える選択肢がある。ACSMは、軽い活動が回復を妨げる根拠はない一方、回復を早める根拠も乏しいとしている。動いて一時的に楽になっても、組織が回復したとは限らない。

階段の上り下りや着替えがつらい、フォームを保てない、痛みを避けて動作が崩れる場合は、その部位への高強度トレーニングを休む。強い症状がある間の運動は悪化につながりうるため、数日控え、症状が弱まってから負荷を戻す。再開時は重量、回数、時間のいずれかを下げ、一度に元の水準へ戻さない。

マッサージや冷却は、痛みを一時的に和らげる場合がある。ただし、ACSMはこれらが回復や通常の機能への復帰を早める根拠は限られると説明している。痛みが鈍った直後に高い負荷へ戻す理由にはならない。強く押す、無理に伸ばすなど、痛みが増す方法は中止する。

痛みをこらえながら重量トレーニングを続ける人(イメージ)

子ども、妊婦、持病や常用薬がある人

子ども。 痛みの程度や尿の変化を自分でうまく説明できない場合がある。歩きたがらない、普段できる動作ができない、強い疲れがあるときは、尿色の変化を待たず小児科や救急外来へ相談する。子どもの横紋筋融解症では褐色尿が少ないとする国内の公的な一般向け資料は、本稿の執筆時点で確認できていないため、尿色だけに基づく年齢別の判断は示さない。

妊婦。 筋肉痛だけを理由に運動を全面的にやめる必要があるとは限らないが、妊娠前と同じ再開基準を一律に使わない。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」は、運動中に立ちくらみ、胸痛、呼吸困難、下腿の痛みや腫れ、腹部緊満、子宮収縮、性器出血、胎動減少、羊水流出感などが現れた場合、医師へ連絡して継続・中止を相談するよう勧めている

持病や常用薬がある人。 厚生労働省の運動ガイドは、新たに運動を始める際、高血圧、糖尿病、運動で悪化する整形外科的な問題、内服薬の情報を事前に把握する必要があるとしている。同省の重篤副作用疾患別対応マニュアルは、薬剤性の横紋筋融解症で、手足などの筋肉痛、しびれ、力が入らない、こわばる、全身のだるさ、赤褐色尿などが現れるとしている。運動後の異常な痛みを自己判断で通常の筋肉痛とせず、処方薬を勝手に中止しないで、使用中の薬を医師や薬剤師へ伝える。

脚の不調がある子どもに付き添う保護者と軽い運動をする妊婦(イメージ)

よくある質問

筋肉痛がある部位を続けて鍛えてよいか
痛みが強い、日常動作やフォームに影響する場合は、その部位への高強度の負荷を控える。軽い活動は回復を妨げないとされるが、回復を早めるとは限らない。

温めたり伸ばしたりすれば早く治るのか
症状が一時的に和らぐ場合はあるが、痛みの軽減と組織の回復は同じではない。痛みが増すほど強く押したり伸ばしたりせず、楽になった直後に高強度運動へ戻らない。

遅発性筋肉痛は乳酸が残っている状態か
乳酸の蓄積が原因ではない。慣れない負荷による筋線維の微細な損傷と、その後の修復過程が関係する。

何日続いたら受診するのか
日数だけで決めない。予想を超える痛み、脱力、茶色やコーラ色の尿は直ちに受診する。痛みが弱まらず日常生活に支障が続く、悪化する、関節症状や外傷を伴う場合も医療機関で原因を確かめる。