こむら返り(有痛性筋けいれん)は、ふくらはぎなどの筋肉が本人の意思と関係なく急に縮み、強い痛みと硬さが出る発作だ。夜間に起きたときは、まず転倒しない姿勢を取り、縮んだ筋肉をゆっくり伸ばす。
日本医師会の2016年「健康ぷらざ」は、つった側の膝を伸ばし、つま先とかかとを支えて足首をすね側へゆっくり反らす方法を示している。急に強く引かず、筋肉の収縮が緩むまで同じ方向へ伸ばす。
先に分ける──119番と早期受診
急な息切れや呼吸困難、突然の強い胸痛、胸の中央を締め付けるような痛みが2〜3分続く場合は、こむら返りの対処を続けず119番を呼ぶ。厚生労働省は、急な呼吸困難や持続する胸部の圧迫痛を、成人が迷わず救急車を呼ぶ症状に挙げている。
片方の脚だけが赤く腫れ、痛みが続く場合も、通常の短い筋けいれんと決めつけない。厚生労働省の研究班資料は、深部静脈血栓症で大腿から下の脚に発赤・腫れ・痛みが現れたら急いで受診し、血栓が肺へ流れると胸痛、呼吸困難、失神が起こりうるとしている。胸の症状や失神を伴えば119番、脚の症状だけでも早期に医療機関で確認する。
暑い場所での運動や作業中に足がつり、めまい、立ちくらみ、手足のしびれ、吐き気、強いだるさが重なった場合は熱中症を考える。厚生労働省は、涼しい場所への移動、体の冷却、水分と塩分の補給を示し、自力で水を飲めない、意識がない場合は直ちに救急車を呼ぶよう求めている。
発作時は足首をすね側へゆっくり反らす
1.安全な姿勢を取る。 ベッド上で上体を起こすか、床や椅子に安定して座る。暗い室内で急に立つと転倒しやすいため、立位で無理に伸ばさない。
2.膝を伸ばし、足首を反らす。 かかとを前へ押し出すように膝を伸ばし、つま先を手で持ってすね側へゆっくり引く。手が届かなければ足先にタオルを掛けて引くか、足裏を壁へ当てて同じ方向へ反らす。痛みが増す角度まで引かない。
3.緩んだ後に軽くさする。 硬さが取れてから、ふくらはぎを軽くさする。強くもむ、反動をつける、痛みをこらえてさらに引く動作は避ける。厚生労働省のストレッチ資料は、痛くなく心地よい程度で伸ばし、痛いほど伸ばすと伸張反射で筋肉がかえって硬くなるとしている。
国内の公的資料と専門学会資料には、発作時の足首の反らし方を何秒続けるかについて統一した数値がない。本稿の執筆時点で確認できた範囲では、秒数を固定せず、収縮が緩むまでゆっくり行い、痛みが増せば中止するのが安全側の整理となる。
2021年のコクランレビューは、脚のけいれんに対する薬を使わない対策の無作為化試験が非常に少なく、ストレッチで夜間のけいれんの重さが軽くなる可能性はあるものの、頻度への効果は明確でないと結論づけた。発作時のストレッチで痛みが和らいでも、再発予防が証明されたとは扱わない。
「不足している栄養素」を症状だけで決めない
夜間のこむら返りだけを見て、カルシウムや他の電解質が不足しているとは判断できない。2020年のコクランレビューは、主に高齢者を対象とした試験ではマグネシウム補給が発作の頻度や重さを減らす可能性は低く、妊婦での効果は証拠が不確かだと結論づけた。症状だけを根拠に不足する栄養素を決め、補給を始める材料にはならない。
発汗の多い暑熱環境で起きたけいれんは熱中症の一部となりうる一方、就寝中に単独で起きる発作まで同じ原因とは限らない。症状だけを根拠にサプリメントや塩分を追加せず、発生状況と持病を分けて考える。
繰り返す場合は頻度と経過を記録
睡眠や日常生活を妨げるほど繰り返す、しびれや筋力低下を伴う、発作後も痛みや腫れが残る場合は、かかりつけ医へ相談する。受診時には、起きた日時、左右、続いた時間、筋肉が硬くなったか、運動や暑さとの関係、腫れ・しびれの有無、使用中の薬を伝えると経過を切り分けやすい。
こむら返りは症状名であり、原因の診断名ではない。日本医師会の資料は、反復する場合には原因となる病気や服用薬を確認する必要があるとしている。毎回同じ対処で済ませず、普段と違う所見が加わった時点で評価を受ける。
子ども、妊婦、透析中・服薬中の人
子ども。 夜の脚痛をすべてこむら返りや「成長痛」と扱わない。日本小児整形外科学会は、成長痛の典型像を3〜12歳、夕方から夜に現れて翌朝には問題がない痛みとし、発熱、脚の腫れ、日中にも続く症状があれば整形外科を受診するよう示している。痛む場所が固定する、歩けない、外見の変化がある場合は、成人向けの伸ばし方だけで様子を見ない。
妊婦。 厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、妊娠週数が進むほどこむら返りが増え、妊娠後期には70%が経験するとし、局所を伸ばす、軽くマッサージする、温める方法を挙げる一方、確立した治療法はないとしている。改善しない場合は妊婦健診先へ相談する。片脚だけの腫れや胸痛、呼吸困難は妊娠に伴う通常の症状とみなさず、前述の基準で受診する。
血液透析中の人。 日本腎臓学会など5学会の「腎代替療法選択ガイド2020」は、透析中または透析後の血圧低下に関連する症状として下肢のつりを挙げ、過度な除水は血圧低下や透析後の疲労につながるとしている。透析中は直ちにスタッフへ伝え、自宅で反復する場合も透析施設へ相談する。自己判断で水分や塩分を増やさない。
持病や処方薬がある人。 薬の開始や変更後に発作が増えた場合は、薬名と発生時期を処方した医師か薬剤師へ伝える。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、薬の使用中に気になる症状が出たら医師か薬剤師へ相談し、処方薬の量を自己判断で変えたり中止したりしないよう求めている。
よくある質問
夜中につった直後は何をするか
安全に座るか上体を起こし、膝を伸ばす。かかとを前へ押し出しながら、足首をすね側へゆっくり反らし、ふくらはぎの収縮が緩むのを待つ。
何秒伸ばせばよいか
急性期の保持時間を定めた国内の公的な統一手順は確認できていない。秒数を固定せず、反動をつけずに伸ばし、痛みが増す場合は中止する。
どの症状なら119番か
急な呼吸困難、突然の強い胸痛、胸の中央を締め付ける痛みが続く、失神や意識の異常がある場合は119番を呼ぶ。片脚だけの赤み、腫れ、痛みは早期に受診する。
カルシウムを取れば再発を防げるか
こむら返りだけではカルシウム不足と判断できず、一律の補給で再発を防げる根拠もない。食事やサプリメントを変える前に、発生状況、持病、服用薬を医療者と確認する。
出典・参考資料
- 健康ぷらざ No.462「こむらがえり―足がつった時の対処法」(日本医師会)こむら返りの急性期に、足首を反らして筋肉を伸ばす手順と、反復時の原因確認を示す一般向け資料
- ストレッチングの実際(厚生労働省)痛みを我慢して伸ばさず、反動をつけない静的ストレッチの原則を示す公的資料
- 被災地での健康を守るために(深部静脈血栓症/肺塞栓症Q&A)(厚生労働省)深部静脈血栓症の脚症状と肺塞栓症の胸痛・呼吸困難・失神を示す公的資料
- こんな時は迷わず119へ(厚生労働省)急な息切れ・呼吸困難、持続する胸部圧迫痛など、救急車を呼ぶ成人の症状を示す公的資料
- 熱中症予防のために(厚生労働省)暑熱環境でのこむら返りを含む熱中症症状、冷却、水分補給、救急要請の目安を示す公的資料
- Non-drug treatments for leg and foot cramps(Cochrane)ストレッチなど薬を使わない対策の無作為化試験が少なく、有効性の確実性が低いとした2021年の系統的レビュー
- Magnesium for muscle cramps(Cochrane)高齢者と妊婦のこむら返りに対するマグネシウム補給の効果と証拠の確実性を検討した2020年の系統的レビュー
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)妊娠中のこむら返りの頻度、対処法の限界、改善しない場合の相談を示す公的ガイド
- 成長痛(日本小児整形外科学会)子どもの夜間の脚痛と、発熱・腫れ・日中の症状を伴う場合の受診目安を示す一般向け資料
- 腎代替療法選択ガイド2020(日本腎臓学会ほか4学会)血液透析中または透析後の血圧低下に伴う下肢のつりと、除水・体液管理を示す共同ガイド
- 処方されたくすりを使用する場合の注意(医薬品医療機器総合機構)気になる症状が出た場合の相談と、処方薬を自己判断で変更・中止しない原則を示す公的資料