「デトックス」「アルカリ性体質」「ケトジェニック」──健康食品やダイエットの宣伝で繰り返し使われてきた三つの言葉だ。行政と医療の資料をたどると、三つの位置づけはそろっていない。一つは表示と広告の規制が扱う領域にあり、一つは血液の恒常性と噛み合わないまま残った古い分類で、もう一つは保険診療のなかに位置を与えられた治療食である。なお本稿は一般向けの情報整理であり、個々の症状や治療方針の判断に代わるものではない。

「デトックス」──行政が扱ってきたのは表示の側

体内にたまった毒素を出す、という触れ込みの食品や施術について、その効果を日本の公的機関が体系的に評価した資料は見当たらない。厚みがあるのは、売り方を規律する側だ。食品として販売する物の広告や表示で、健康の保持増進の効果について著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させる表示をすることは、健康増進法第65条が何人に対しても禁じており、消費者庁がこの誇大表示の禁止について解説を置いている。景品表示法の優良誤認表示に当たる場合もあり、両法の適用の考え方は消費者庁の留意事項にまとめられている

もう一段強い枠が医薬品医療機器等法(薬機法)だ。食品に医薬品のような効能効果をうたえば、承認を受けていない医薬品の広告として扱われうる。東京都は健康食品の監視指導の考え方として、「好転反応」を示すことで効能効果を暗示する表示を、医薬品的な効能効果に当たるものとして挙げている。使い始めて出た不調は効いている証拠だ、という説明の型が、行政の側から名指しで問題視されている。裏を返せば、その型がそれだけ広く使われてきたということでもある。

相談の実態も積み上がっている。国民生活センターは健康食品に関する危害情報を整理しており、危害の内容としては消化器障害と皮膚障害が多いとしている。不調が出たあとも使用を続けるよう勧められ、症状が長引いた例も相談として寄せられている。体調が変わったら使用をやめ、医療機関に相談してほしい。

物質を体の外へ出す働きそのものは、臓器がすでに担っている。MSDマニュアル家庭版は、肝臓が腸で吸収された物質や体内で生成された有害な物質を無害な物質に分解し、副産物を胆汁中や血液中へ排泄すると説明する。胆汁に出た副産物は腸に入って便とともに、血液に出た副産物は腎臓でろ過されて尿とともに体外へ向かう。肝臓、腎臓、腸に肺と皮膚を加えた経路が、常時動いている。

食品安全委員会は2015年12月、いわゆる「健康食品」について19項目のメッセージをまとめた。摂るかどうかを決める前に考えたいこと、「健康食品」の特性、健康被害が疑われるときの対応を整理した文書で、「健康食品」を選ぶ行為を不確かさのもとでの選択として位置づけている。効くと確認された物を選ぶ話ではない、という前提がここに書かれている。

デトックスや浄化をうたうジュースや健康食品が並ぶ棚(イメージ)

「アルカリ性体質」──血液のpHは食事で動かない

体が酸性に傾くと病気になりやすい、だからアルカリ性の食品を摂る、という説明は日本でも長く流通してきた。生理学の側から見ると、前提が成り立たない。東邦大学医療センター大橋病院の栄養部は、人の血液が弱アルカリ性(pH7.35〜7.45)に保たれており、健康な状態では腎臓や肺の働きで酸性の物質が尿や呼吸として体外に出され、血液が弱アルカリ性に戻されると説明する。恒常性を保つ仕組みが働いているため、アルカリ性食品を食べても血液がアルカリ性になることはない

そもそも「酸性食品」「アルカリ性食品」という分け方は、食品を燃やした灰に残るミネラルの性質で分類する古い考え方に由来する。口に入れたときの味とも、飲んだ液体そのもののpHとも別の話だ。分類の名前が血液のpHを動かす根拠になるわけではない。

「体質」という言い方も、検証の手立てを持たない。血液のpHは測れるが、その値は狭い範囲に収まっている。測れる指標は動かず、動くとされる「体質」の側には測る方法がない。確かめようのない前提が、確かめようのない解決策と対になっている形だ。

pH試験紙でボトル入りの水の酸性度を調べる様子(イメージ)

「ケトジェニック」──日本では保険診療のなかに位置がある

三つ目は、前の二つと性格が異なる。ケトン食は難治性てんかんの治療食として、日本の保険診療に組み込まれている。厚生労働省が示す入院時食事療養の留意事項は、「てんかん食」を、難治性てんかんの患者に対してグルコースに代わりケトン体を熱量源として供給する目的で、炭水化物量の制限と脂質量の増加を厳格に行った治療食と定義し、特別食加算の対象としている。グルコーストランスポーター1欠損症やミトコンドリア脳筋症の患者に治療食として提供した場合も「てんかん食」として扱う。平成28年度の診療報酬改定で加わった枠組みだ。

つまり日本でのケトン食は、偽科学として片づく類の話ではない。日本小児神経学会は、てんかんのケトン食療法について一般向けの解説を設けている。ただし、そこで想定されているのは、診断がつき、薬で発作が十分に抑えられない患者に対して、医療機関が栄養管理のもとで行う治療である。何をどれだけ食べるかは個別に組み立てられ、経過を見ながら調整される。

減量を目的に自分で糖質を極端に削る食べ方は、この枠の外にある。治療としてのケトン食が医療機関の管理下に置かれているのは、栄養の偏りや体調の変化を見ながら調整する必要があるからだ。持病がある人、薬を使っている人、妊娠中の人、子どもは、健康な成人と同じようには考えられない。始める前に医師や薬剤師に相談してほしい。

高脂質・低糖質のケトジェニック食を盛り付けた皿(イメージ)

宣伝文句を見分ける三つの手がかり

三つを並べると、宣伝の型に共通する部分が見えてくる。

第一に、敵の輪郭がぼやけている。「毒素」も「酸性に傾いた体」も、何を指すのかが定まらず、測る方法も示されない。輪郭のない敵は、輪郭のない解決策と相性がいい。

第二に、体が無力なものとして描かれる。実際には肝臓も腎臓も肺も、外から助けを求められる前から働いている。健康な体をいつ壊れてもおかしくないものとして語る説明の先には、たいてい売り物が置かれている。

第三に、解決が特定の商品の購入に結びつく。食品安全委員会のメッセージも東京都の監視指導の考え方も、扱っているのは表示と広告の適否であって、何かを買えば片づくという筋書きは出てこない。

加えて、使い始めて出た不調を効果の表れとして説明する話法が出てきたときは、東京都の整理では医薬品的な効能効果を暗示する表示に当たる。その説明を受け入れる前に、使用をやめて医療機関に相談したほうがいい。表示や広告そのものに疑問があるときは、お住まいの自治体の消費生活センターが窓口になる。

本稿は一般向けの情報整理であり、医師・歯科医師・薬剤師による診断、治療、服薬指導に代わるものではない。症状や治療方針、健康食品の利用については医療機関または薬剤師に相談してほしい。

よくある質問

デトックスをうたう食品を摂れば体内の毒素が出るのか
有害な物質を分解して体外へ出す働きは、肝臓と腎臓を中心とする経路がすでに担っている。肝臓は有害な物質を無害な物質に分解し、副産物を胆汁や血液へ排泄する。デトックスをうたう食品や施術の効果を日本の公的機関が体系的に評価した資料は確認できていない。行政の資料が扱っているのは、その効果をどう表示・広告できるかという側面である。

使い始めて肌が荒れたが「好転反応」だと説明された
東京都は、「好転反応」を示して効能効果を暗示する表示を、健康食品には認められない医薬品的な効能効果に当たるものとして挙げている国民生活センターに寄せられる健康食品の危害情報でも、消化器障害と皮膚障害が多い。症状が出たら使用をやめて医療機関に相談し、販売元の説明で判断を先送りしないほうがいい。

アルカリ性の食品で体質は変わるのか
血液は弱アルカリ性(pH7.35〜7.45)の狭い範囲に保たれ、腎臓と肺の働きで元に戻される。アルカリ性食品を食べても血液がアルカリ性になることはない。「酸性食品」「アルカリ性食品」は食品を燃やした灰のミネラル組成による分類で、血液のpHを動かす根拠にはならない。

ケトジェニックダイエットは危険なのか
ケトン食そのものは、難治性てんかんの患者に対する「てんかん食」として特別食加算の対象になっている治療食で、医療機関の管理下で行われる。減量目的で自己流に糖質を極端に削る食べ方は、その枠の外にある。持病がある人、薬を使っている人、妊娠中の人、子どもは条件が変わるため、始める前に医師や薬剤師に相談してほしい。

広告のどこを見れば判断しやすいか
健康の保持増進の効果について著しく事実と違う、あるいは著しく誤認させる表示は、健康増進法第65条が何人に対しても禁じている。食品に医薬品のような効能効果をうたう表示も認められない。輪郭のはっきりしない「毒素」や「体質」を敵に置き、解決を特定の商品に結びつける構成は、この二つの線に触れやすい。