熱中症の起こりやすさは、気温、湿度、日射、風、活動量、暑さへの慣れ、持病や服薬が重なって決まる。最高気温だけでは、同じ地域にある体育館、日なたの道路、冷房のない室内の差までは読めない。

日本の公的情報で出発点となるのは、暑さ指数と熱中症警戒アラートである。家庭では外出前の予測、在宅中の室温、同行者の体調を分けて確認し、中止や屋内への変更を症状が出る前に決める必要がある。

先に確認する救急の兆候

暑い場所にいた人の返事がおかしい、意識を失った、けいれんがある、体が熱いといった変化は、救急対応を急ぐ兆候である。厚生労働省は、熱中症が疑われる人が自力で水を飲めない、または意識がない場合、直ちに救急車を呼ぶよう案内している

119番へ連絡した後は、冷房の効いた室内か風通しのよい日陰へ移し、衣服を緩め、首回り、脇の下、脚の付け根などを冷やす。環境省のマニュアルは、呼びかけへの反応がおかしい、答えがない、吐き気や嘔吐がある時は、口から水分を与えず、救急搬送を優先するとしている。救急要請と冷却は同時に進める。

熱疲労と熱射病の症状を並べ、救急要請が必要な兆候を示す図

出発前は最高気温より暑さ指数

暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature、WBGT)は、気温に加えて湿度や日射などの熱環境を反映する指標である。環境省の実況・予測ページは、WBGTが25以上28未満なら積極的な休息、28以上31未満なら激しい運動の中止、31以上なら運動を原則中止とする区分を示している。これは運動時の目安であり、持病のある人を含む全員の外出可否を一つの数値で決める線ではない。

環境省は熱中症警戒アラートの発表地域で、涼しい環境に移り、こまめに休憩と水分・塩分を取り、高齢者や子どもを見守り、涼しい場所以外での運動を中止するよう示している。アラートが出ていない場合も、日なた、体育館、車内、風のない室内の危険が消えるわけではない。

暑さによる危険度を色分けし、段階ごとの行動を示す図

家庭の備え──冷房・日陰・飲水・休息

厚生労働省の予防情報は、屋内で冷房、遮光、室温確認を行い、屋外では日傘や帽子、日陰、こまめな休憩を使い、のどが渇く前から水分を取るよう示している。休息は疲れを感じた後ではなく、移動や活動の予定に先に組み込む。

水分は室内でも外出先でも、のどの渇きだけを合図にせず、こまめに取る。ただし、全員に共通する「1日何杯」という量は定めにくい。発汗量、食事、活動時間で必要量が変わり、心臓や腎臓の治療で水分・塩分の指示を受けている人は、その指示を優先する。薬を自己判断で中断したり、補給量を大きく変えたりしない。

日陰、水分補給、風通し、休息による熱中症対策を示す図

高齢者・子ども・持病のある人は同じ線で扱わない

環境省の高齢者・子ども向け資料は、高齢者では暑さやのどの渇きを感じにくくなり、子どもでは体温調節が未発達で、炎天下では深部体温が上がりやすいと説明している。本人の申告を待たず、周囲が室温、顔色、汗、元気の変化を確かめる。

対象 先回りする対応 個別に確認する点
乳幼児・子ども 保護者が活動場所のWBGTと顔色、発汗、元気を確認し、早めに涼しい場所へ移す。消費者庁は、短時間でも子どもを車内に残したまま離れないよう注意を促している 自分で不調や口渇を十分に伝えられない可能性を見込む。
高齢者 感覚に頼らず室温を測り、家族や支援者が冷房の使用と飲水を確認する。 心臓・腎臓の持病、水分・塩分制限、常用薬の指示を確かめる。
高血圧・糖尿病など持病のある人 暑くなる前に、治療中の病気と常用薬を踏まえた過ごし方を主治医へ確認する。 一般向けの水分・塩分補給を自己判断で上乗せせず、薬も変更しない。
妊婦 一般の予防策として暑さを避け、こまめに休息と飲水を取る。 妊婦に固有の基準は国内公的資料で確認できていないため、持病や個別の指示があれば産科の判断を優先する。

厚生労働省の2026年3月の職場向けガイドラインは、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全などを熱中症の発症に影響しうる疾病に挙げ、医師の意見を踏まえて作業場所の変更などを検討するよう定めている。一方、高血圧、糖尿病、脂質異常症を一括し、同じ水分量や外出中止のWBGTを当てる国内公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。

屋外作業とスポーツは管理者の中止判断が要る

屋外作業では、地域の予測値を眺めるだけでは足りない。厚生労働省のガイドラインは作業場所でWBGTを把握し、作業強度や服装、暑熱順化の有無に応じて評価するよう示す。暑熱順化は7日以上かけて負荷と作業時間を段階的に増やし、基準値を大幅に超える場合は原則として作業を行わない。やむを得ず作業する場合も単独作業を避け、休憩を長くする。

文部科学省が2026年7月に更新した学校安全情報は、気温25〜30℃の時期から対策を取り、アラートの有無にかかわらず、実際の活動場所のWBGTで活動内容を判断するよう求めている。休業日明けは子どもの体が暑さや学校活動に慣れていない可能性があり、運動強度を下げる、中止する、体調を確認する体制が要る。

屋外作業と運動で暑さへの慣れを段階的に進める日程の図

判断役と中止条件を事前に決める

  1. 出発前。 当日と翌日のアラート、最寄り地点のWBGT、同行者の持病や体調を確認し、外出の短縮・中止・屋内への変更を決める。
  2. 活動中。 休憩時刻、涼しい退避先、体調を確認する人を決める。子ども、高齢者、暑さに慣れていない人を一人にしない。
  3. 帰宅後。 頭痛、吐き気、強いだるさ、反応の変化がないかを見る。返事がおかしい、自力で飲めない、意識がない場合は119番と冷却へ移る。

暑さ指数は行動を決める材料であり、数値が低ければ誰にとっても安全だという保証ではない。場所、活動、本人の状態を重ね、症状が出る前に予定を変えられる形にしておく。