米マサチューセッツ州の連邦地裁は2026年8月14日、ソマリアを対象とする一時保護資格(Temporary Protected Status、TPS)の終了を止めていた暫定停止命令を解除した。ミネソタ州の放送局KSTPによると、アリソン・バローズ(Allison Burroughs)連邦地裁判事は、原告側が回復不能な損害を説得的に示した一方、本案で勝つ見込みは示せなかったとして、政権によるTPS終了を認めた。訴訟自体は続くが、3月からTPSと就労許可を維持してきた裁判所の命令は効力を失った。

国立国会図書館の解説は、TPSを1990年移民法に基づく制度とし、国土安全保障長官による国別指定の下で、対象者を退去強制から保護して就労許可を与えるものと整理している。個人の事情を審査する難民・庇護制度とは仕組みが異なり、TPSだけで永住資格に移るわけではない。

3月の停止から8月の解除まで

米国土安全保障省(Department of Homeland Security、DHS)は2026年1月14日付の米官報(Federal Register)で、ソマリアはTPS指定の条件を満たさなくなったと当時のクリスティ・ノーム(Kristi Noem)長官が判断し、3月17日を終了日とした。指定は更新されなければ同日に満了する予定だった。

4人のソマリア人と2つの支援団体が3月9日、終了決定を争ってボストンの連邦地裁へ提訴した。バローズ判事は3月13日、審理に必要な行政記録と双方の主張がそろうまで終了を停止し、TPS保持者と申請中の人について、就労許可とTPSを根拠とする退去強制・拘束からの保護を維持すると命じた

移民関連の書類と旅券を重ねた様子(イメージ)
移民関連の書類と旅券(イメージ/Photo by Jakub Zerdzicki on Pexels)

最高裁判決が狭めた争点

転機は6月25日の米最高裁判決だった。Mullin v. Doeはソマリアではなく、シリアとハイチのTPS終了を巡る二つの訴訟を扱った。最高裁は6対3で、TPS指定の終了に関する非憲法上の請求は連邦法により司法審査の対象外となると判断し、ハイチ原告の平等保護請求も本案で勝つ見込みが低いとして、係争中の終了延期を認めなかった

この判決は、TPSを巡る訴えをすべて一律に扱えないとしたものではない。憲法上の請求まで司法審査排除が及ぶかは確定せず、最高裁は暫定救済のための予測判断として平等保護請求の勝訴見込みを否定した。ソマリア訴訟でも、Mullin判決の下で原告がなお本案勝訴の見込みを示せるかが問われ、バローズ判事は8月14日に否定した。

対象は「約1100人」──1月時点のDHS推計

DHSの1月の米官報は、ソマリアTPSの承認者を1,082人、2025年12月8日時点の申請中案件を1,383件と推計している。報道で使われる「約1,100人」は、承認者の推計を丸めた数字である。

ただし、1,082人は8月14日現在の人数ではない。資格や申請の状態はその後に変わり得るが、同じ基準による新しい公式総数は確認できていない。申請中の1,383件も、承認済みの人数と合算して「影響を受ける人数」とは扱えない。

資格終了と退去強制は同義ではない

差し止め解除により、TPSだけを在留と就労の根拠としていた人は、退去強制からの保護が外れ、TPSに基づく就労許可も失う。一方、DHSの米官報は、TPS終了時に取得前の移民資格がなお有効ならその資格に戻り、TPS期間中に合法的に得た別の資格が有効ならその資格が残ると説明している。対象者全員が同じ日に直ちに退去強制されるという意味ではなく、影響は各人の移民法上の状態で異なる。

8月14日の裁定は、原告が求めた暫定救済を退けたものであり、訴訟全体への最終判決ではない。日本の外務省、法務省、出入国在留管理庁が2026年8月の本件裁定を日本語で解説した公的資料は、執筆時点で確認できていない。制度の位置づけと裁定の範囲は、日本の国立国会図書館による制度解説と米国の政府公報、裁判資料に基づく。

よくある質問

一時保護資格(TPS)は永住資格なのか
永住資格ではない。対象国の指定中、要件を満たす人を退去強制から保護し、就労を認める一時的な制度で、TPSの取得だけで永住資格や別の移民資格には移行しない。

今回の裁定で何が変わったのか
3月13日からソマリアTPSの終了を止めていた暫定停止命令が解除された。政権は指定終了を進められるが、原告が提起した訴訟への最終判決が出たわけではない。

約1100人全員が直ちに退去強制されるのか
一律には決まらない。約1,100人は1月の米官報にある承認者推計を丸めた数字で、別の有効な移民資格または申請の有無により影響は異なる。TPSだけを根拠としていた人は、保護と就労許可を失う。