ナイジェリア南西部オスン州では8月15日、州知事選の投票中に、野党・アフリカ民主会議(African Democratic Congress、ADC)の候補ナジーム・サラーム(Najeem Salaam)氏が投票したエジグボ(Ejigbo)の投票所で混乱が起きた。
ナイジェリア紙Vanguardによると、混乱はサラーム氏夫妻の投票直後に広がり、有権者、選管職員、監視員、記者が現場を離れ、同氏は警護担当者に退避させられた。報道時点で投票は止まったままで、混乱の発端と負傷者の有無は明らかになっていなかった。
エジグボの投票所で混乱──治安要員の到着後も停止
現場は第4区のイロイン・アヨ広場(Iroyin Ayo Open Space)に置かれた第3投票所である。混乱が強まると選挙事務を続けられなくなり、サラーム氏の警護担当者は安全確保を優先して同氏を現場から移した。
国家保安局(Department of State Services、DSS)とナイジェリア治安・民間防衛隊(Nigeria Security and Civil Defence Corps、NSCDC)の要員が後から到着したが、Vanguardは緊張が解けず、要員も現場を離れたと伝えた。現場に残った有権者は再開の知らせを待ったものの、同紙の取材終了時まで投票は再開していなかった。
BVASの不具合──1投票所で342人中75人
選挙では、生体情報を使う有権者認証端末「BVAS」(Bimodal Voter Accreditation System)が本人確認を担う。Vanguardの別の現地報道では、イラ地方行政区のオジュデ・アラ第1投票所でBVASが3度不調となり、登録有権者342人のうち午後0時40分までに認証と投票を終えたのは75人だった。選管の臨時職員も遅れを認め、復旧作業を続けていた。
オスン州の選挙管理責任者は投票前、3763台のBVASを投票所へ配備し、別に664台を予備として用意すると説明していた。端末は認証に加え、投票所結果を選挙結果閲覧ポータル(INEC Result Viewing Portal、IReV)へ送る用途も担う。イラで確認された不具合は個別の投票所報告であり、州全体の稼働率はこの事例だけでは分からない。
約230万人の州知事選──投票所は3763カ所
ナイジェリアのデータ報道機関Dataphyteは、今回の登録有権者を約230万人、投票所を30地方行政区の3763カ所とし、現職アデモラ・アデレケ(Ademola Adeleke)氏が再選を目指す選挙だと報じた。同州の2022年知事選は登録有権者の42.09%が投票し、同州知事選では過去最低の投票率だった。
エジグボの混乱やイラの端末不具合は、有権者が投票を終えられるかという選挙運営上の問題を示す。一方、二つの投票所で確認された事例から、州全体の投票率や選挙結果への影響を算定する段階にはない。
全国日程とずれる「オフサイクル選挙」
日本貿易振興機構(ジェトロ)がナイジェリア独立選挙管理委員会(Independent National Electoral Commission、INEC)の発表を基にまとめた日程表は、オスンを含む8州では選挙周期が異なり、2027年の全国日程では州知事・州議会選を実施しないと注記している。オスン州知事選は、大統領選や多くの州知事選と同時には行わない「オフサイクル選挙」に当たる。
調査機関CDD West Africaの資料は、オスン州の選挙周期が全国日程からずれた背景を、2007年の州知事選後に続いた訴訟だと説明している。判決記録を掲載するWeekly Reports of Nigeriaによると、控訴裁判所は2010年11月26日、争われた地方行政区の票を無効とし、当初の当選者オラグンソイェ・オインロラ(Olagunsoye Oyinlola)氏の当選を取り消して、ラウフ・アレグベソラ(Rauf Aregbesola)氏を当選者とした。判決後に州政府の発足時期が変わり、州知事選の周期が全国日程から外れた。
IReVで投票所結果を公開──正式発表は別の段階
INECが運営するIReVは、投票所単位の結果を公衆が確認するための公開ポータルである。INECの見解を収録したVanguardの記事は、IReVに載るのは投票所結果票の画像で、当選者を決める集計とは別の手続きだと説明している。
本稿の基準時点である15日夕方には、州全体の正式な当選者と得票数は発表されていなかった。エジグボの投票中断が当該投票所の扱いや州全体の集計に及ぼす影響も確定していない。
日本政府が今回の投票所混乱を個別に説明した資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。本稿で確認できた日本語の公的資料はジェトロによる選挙日程の説明に限られるため、現場の経緯はナイジェリアの現地報道に基づく。
よくある質問
エジグボの投票所では何が起きたのか
サラーム氏夫妻の投票後に混乱が広がり、有権者、選管職員、監視員、記者が現場を離れた。サラーム氏は警護担当者に退避させられ、治安要員が到着した後も緊張が続き、Vanguardの報道時点で投票は停止していた。
BVASの不具合は州全体で起きたのか
州全体の故障率は確認されていない。具体的な数字が確認できたのはイラの1投票所で、BVASが3度不調となり、午後0時40分までに342人中75人が認証と投票を終えた。
オスン州知事選が全国選挙と別の日なのはなぜか
2007年州知事選を巡る訴訟で2010年に当選者が変更され、州政府の発足時期が全国の周期からずれたためである。ジェトロの資料では、オスンを含む8州が異なる選挙周期にある。
出典・参考資料
- Osun election: ADC's Najeem whisked away after violence at his polling unit(Vanguard)エジグボの投票所での混乱、サラーム氏の退避、投票停止、治安機関の対応を確認
- OSUN POLL: Only 75 of 342 voters accredited in Ila unit over BVAS glitch(Vanguard)イラの投票所でのBVAS不具合と午後0時40分時点の認証人数を確認
- Osun 2026: We'll be waiting for voters at polling units - REC(Vanguard)BVAS3763台、予備664台の配備計画とIReVへの結果送信方針を確認
- Osun governorship election 2026: Osun's two-decade decline in electoral participation(Dataphyte Insight)登録有権者約230万人、3763投票所、30地方行政区と過去の投票率を確認
- ナイジェリア独立選挙管理委員会発表の選挙関連日程(日本貿易振興機構(ジェトロ))オスンを含む8州の州知事選が全国日程と異なることを確認
- 2018 Osun State Governorship Election: Things To Know(Centre for Democracy and Development West Africa)2007年州知事選後の訴訟がオスン州の選挙周期を全国日程からずらした経緯を確認
- RAUF ADESOJI AREGBESOLA & 2 ORS. vs OLAGUNSOYE OYINLOLA & 2 ORS.(Weekly Reports of Nigeria)2007年州知事選を巡る訴訟と2010年11月26日の控訴裁判所判断を確認
- INEC Result Viewing Portal(Independent National Electoral Commission)投票所結果を閲覧するIReVの公開ページを確認
- INEC's position on e-transmission of election results(Vanguard)IReVで公開する投票所結果票と当選者を決める集計が別の手続きであることを確認