幼少期に米国へ入国した若者の国外退去を延期する措置(Deferred Action for Childhood Arrivals、DACA)の適用を受けていた女性が、米政府によりメキシコへ送還された。その後、米当局は送還当日の国境移動を「無許可の渡航」としてDACAを終了する意向を通知した。女性側は国外退去が違法だったとして、テキサス州南部の連邦裁判所に救済を求めている。

7歳で米国へ、DACAは2027年4月まで有効

AP通信によると、ジェシカ・トレビーニョさん(34)は7歳で米国へ渡り、20歳でDACAの適用を受けた。直近のDACAと就労許可は2027年4月まで認められていた。AP通信は当初の入国年齢を8歳から7歳へ訂正しており、本稿は訂正後の数字を採用した。

連邦捜査員は2025年12月、トレビーニョさん夫妻を追跡し、南テキサス州のホームセンター「Home Depot」の駐車場で拘束した。司法省所管の移民裁判官は、トレビーニョさんが移民・税関捜査局(ICE)に収容されていた2026年2月、自主出国命令を出した。夫妻は3月25日にメキシコへ送還され、国境都市マタモロスで暮らしている。

移民手続きを扱う法廷で審理に臨む関係者(イメージ)
DACAの有効期間中だった女性の国外退去と、その後の終了通知の適法性が争われている。(イメージ/Photo by Boko Shots on Pexels)

送還日を「無許可の渡航」と記載

米市民権・移民局(U.S. Citizenship and Immigration Services、USCIS)がトレビーニョさんに送った終了意向通知は、「2026年3月25日ごろの米国外への無許可の渡航」を理由に挙げた。3月25日は国土安全保障省が本人を国外へ送った日でもある。通知書の全文は本稿の確認範囲で公開資料を特定できていない。

DACAは在留資格そのものではなく、該当者の国外退去を一定期間延期する行政上の措置だ。国土安全保障省の最終規則はDACAを移民法執行上の行政裁量と位置づけ、USCISが終了意向通知と反論の機会を経て措置を終了しうると定めている。事前渡航許可(Advance Parole)を得ずに出国し、その後に審査を受けず再入国した受給者も終了の対象になりうる

規則が渡航に関連する終了事由として明記するのは、事前許可なしの出国に続いて審査を受けず再入国した場合だ。AP通信の報道には、トレビーニョさんが送還後に米国へ再入国したとの記載はない。本件では、政府が実施した国外退去を無許可の渡航として扱えるか、DACAが有効だった段階の国外退去に法的根拠があったかが争点になる。

帰国支援とDACA維持を求め提訴

代理人のデービッド・ロザス弁護士はブラウンズビルの連邦裁判所に申し立て、国外退去の違法確認、米政府によるトレビーニョさんの帰国支援、DACAの維持を求めた。訴状の全文は公開資料で確認できず、裁判所は請求の当否を判断していない。国土安全保障省もAP通信の取材に回答していないため、政府側の詳しい主張は明らかになっていない。

夫妻の子ども3人はいずれも米国籍を持ち、米国側の国境地域で親族と暮らす。両親はメキシコ側のマタモロスにおり、家族は国境を挟んで離れている。AP通信の報道時点で、子どもたちは翌月の新学期を控えていた。

DACA受給者への執行規模

AP通信は、国土安全保障省が2026年2月に民主党のリチャード・ダービン上院議員へ送った書簡を基に、トランプ政権下でDACA受給者86人が国外退去となり、別に241人が逮捕されたと報じた。書簡原文は本稿の確認範囲で確認できず、数字の対象期間や集計基準の詳細は不明だ。2月時点の数字であり、3月に国外退去となったトレビーニョさんの事例が含まれるとは限らない。

本件について日本の政府機関が公表した資料は、本稿執筆時点で確認できていない。事件の経緯はAP通信、制度の説明はUSCISの公開資料を基に整理した。裁判所の判断や政府側の提出書面が公開されれば、送還とDACA終了の関係を検証する材料が増える。

よくある質問

DACAは米国の在留資格なのか
DACAは在留資格や市民権を与える制度ではない。一定の要件を満たす人について国外退去を一時的に延期し、条件を満たせば就労許可の申請対象とする行政上の措置だ。

DACA受給者は自由に米国外へ出られるのか
自由な出国と再入国が認められているわけではない。DACA最終規則は、事前渡航許可を得ずに出国した後、審査を受けず米国へ再入国した受給者について、USCISが終了意向通知と反論の機会を経てDACAを終了しうると定めている

トレビーニョさんのDACA終了は確定したのか
AP通信が報じたのはUSCISによる終了意向通知で、女性側は連邦裁判所に救済を申し立てた。国外退去とDACA終了の適法性について、裁判所の判断はまだ出ていない。