インドのナレンドラ・モディ首相が試験問題流出への対応を語ったFacebook動画が7月28日未明、一時的に閲覧不能となった。Meta Platformsは誤って削除したと認め、動画を同日中に復旧した。インド電子・情報技術省(Ministry of Electronics and Information Technology、MeitY)は説明が不十分だとして、同社に技術面の詳しい説明と再発防止策を求めた。

動画は、医学部共通入学試験NEET-UGをめぐる抗議のさなかに公開された。7月25日にはダルメンドラ・プラダン教育相が辞任し、若者主体の抗議運動が活動終了を表明していた。首相の発信を誤って止めた経緯と、プラットフォームが認証済みアカウントをどう扱うかが争点となった。

「法的要請」の表示後に復旧

モディ首相は7月23日、学生や若者に向けた自撮り形式の動画を投稿し、試験問題流出への処罰を強める方針を説明した。Business Standardによると、28日午前1時25分ごろ、Facebook上の動画にはインドで法的要請に応じて閲覧を制限したとの通知が表示されたが、根拠となる法令や要請した機関は示されなかった

動画は数時間後に再び見られるようになった。Metaの広報担当者は「誤って削除され、すでに復旧した」と説明した。自動コンテンツフィルターの不具合が原因だと政府側へ伝えたものの、誤作動が起きた具体的な過程は公表していない。画面に出た法的要請の通知と、技術的不具合との関係も判然としない。

インドの政府機関庁舎の外観(イメージ)
インド電子・情報技術省はMetaに詳しい技術説明を求めた。(イメージ/Photo by Brijender Dua on Unsplash)

MeitY、技術協議と再発防止を要求

MeitYのS・クリシュナン次官は、謝罪は前向きな一歩だとしつつ、技術的な不具合だったとの説明だけでは十分でないと述べた。ANIが配信した発言によると、同省は誤削除の経緯を調べる詳細な技術協議を開き、インドの著名人が使う認証済みアカウントを機械的な誤判定から守る仕組みをMetaに求めた

政府が問題視したのは、首相の動画が短時間見られなくなった事実に加え、認証済みの発信でも自動処理によって止まりうる点である。一方、認証済みであることが投稿内容の正確性や規約適合性を保証するわけではない。政府要人向けの保護を強めれば、一般利用者との審査手順の差をどう説明するかという透明性の課題が残る。

Meta、上級担当者による追加審査を回答

The Times of Indiaが伝えたPTIの報道によると、Metaは7月29日、モディ首相と一部の著名人アカウントの投稿に追加の監督を設け、上級担当者が審査する仕組みを導入したと政府へ回答した

ただし、対象となる「著名人」の選定基準や、追加審査をどの国まで広げるかは明らかでない。同様の仕組みを日本の政府要人や認証済みアカウントにも適用するとの公表資料は、本稿執筆時点で確認できていない。今回の対応がインド固有の運用なのか、Meta全体の審査手順の変更なのかも未確定である。

背景にNEET-UG問題と若者の抗議

動画が注目された背景には、NEET-UGの問題流出疑惑を契機とする若者の抗議がある。AP通信は、プラダン教育相が7月25日に辞任し、「コックローチ」と呼ばれる若者主体の運動が、政府が要求を受け入れたとして数週間続いた抗議を終えたと報じた

モディ首相の動画は、試験制度への不信と政府の説明責任が問われる時期の発信だった。その一時削除は、元の政治的争点とは別に、自動化されたコンテンツ審査の精度、削除理由の表示、影響力の大きいアカウントに対する例外的な扱いを可視化した。

よくある質問

モディ首相の動画はなぜ見られなくなったのか
Metaは自動コンテンツフィルターの技術的不具合による誤削除だと説明した。ただし、詳しい原因は公表されておらず、法的要請と表示された理由も明らかでない。

インド政府はMetaに何を求めたのか
誤削除が起きた経緯の詳細な技術説明と、認証済みの著名人アカウントで同じ事態を繰り返さないための仕組みを求めた。

Metaはどのような対策を示したのか
モディ首相ら一部の著名人アカウントについて監督を増やし、投稿への措置を上級担当者が確認する手順を政府へ回答した。