コンゴ民主共和国で続くブンディブギョウイルス病(Bundibugyo virus disease)の感染は、2026年8月9日時点で約4200例、死亡は1900人を超えた。AP通信はコンゴ保健当局の最新集計として、5月に始まった流行が感染約4200例、死亡1900人超に達し、2014〜16年の西アフリカ流行に次ぐ規模になったと報じた。感染の中心は北東部のイトゥリ州だが、接触者追跡の外で見つかる例が多く、現場の人員不足も封じ込めを遅らせている。

河船の疑い例は陰性 キンシャサへの拡大確認されず

首都キンシャサ近郊では8月6日、コンゴ川を航行してきた河船がマルク港で隔離された。以前この船に乗っていた男性が、キンシャサから1000キロ以上離れたモンガラ州ピムで下船した後、エボラ出血熱に似た症状を示して死亡したためだ。港はキンシャサから約65キロにあり、200人を超す乗客が船内にとどめられた。

コンゴ保健当局は8月8日、症状から感染が疑われた乗客の検体はすべて陰性で、船内からブンディブギョウイルス感染は確認されなかったと発表した。船は消毒され、キンシャサでも確定例は報告されていない。人の移動による遠隔地への波及が懸念された事案だったが、少なくとも今回の検査は首都圏への感染拡大を示さなかった。

説明用の図を手に地域住民へ感染対策を伝える担当者(イメージ)
接触者の把握と地域への情報提供が、感染経路を断つための基礎となる。(イメージ)

承認済みワクチンなし 支持療法と公衆衛生対策が軸

今回の原因は、過去の大規模流行で多かったザイール型とは異なる。世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務局は、ブンディブギョウイルス病を対象とする承認済みワクチンと特異的治療薬はなく、候補ワクチンや治療薬の評価を急いでいると説明している。これは治療手段が一切ないという意味ではない。早期発見、輸液を含む支持療法、感染管理、安全な埋葬、接触者追跡と地域住民の協力が対応の柱となる。

WHOが7月17日に公表した報告では、7月15日時点でコンゴ民主共和国の確定例は2124例、死亡は828人で、46保健区域のうち38区域が直近21日間にも症例を報告していた。この報告は、検査能力の拡充によって以前に採取された検体が処理され、確定例の増加に反映された面もあると注意を促す。日ごとの累計差を、そのまま同じ期間に起きた新規感染とみなすことはできない。

追跡網の外で感染 未払いが現場を圧迫

8月9日のAP通信報道によると、現在の新規例の60〜70%は、保健当局が監視していた接触者の名簿外で確認されている。感染者と接触した人を特定し、発症の有無を追う仕組みが伝播に追いついていないことを示す。

対応する医療従事者の待遇も不安定だ。イトゥリ州の治療施設では、5月の発生宣言後も給与を受け取っていないと訴える医療従事者がおり、支払いの遅れや施設への攻撃を理由に職場を離れた例も出ている州都ブニアでは8月6日、看護師を含む数十人が未払いの給与と手当を求めて抗議し、一部の医療施設を離れた。感染者の隔離や接触者の追跡を増やしても、担い手への支払いが滞れば実務は続かない。

日本の検疫対応 帰国・入国時に滞在歴を申告

WHOは5月17日、コンゴ民主共和国とウガンダでの発生を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)と判断し、日本の検疫所は両国に滞在した人へ入国時に検疫官へ申し出るよう求め、必要に応じて健康監視などを行うとしている

一方、日本の公的機関が公表する邦文資料で、8月9日の約4200例、死亡1900人超まで反映したものは、本稿の執筆時点で確認できていない。本稿の最新値はコンゴ保健当局の集計を伝えたAP通信に基づく。流行規模の確認には、WHOの定期報告とコンゴ当局の更新を併せて見る必要がある。