ドライアイは、涙の量が少ない状態だけを指す病名ではない。日本眼科学会は、眼表面を覆う涙液膜が崩れやすくなり、目の不快感や見えにくさを生じる病気と説明し、乾燥感のほか、かすみ、まぶしさ、疲れ、痛み、異物感、充血、流涙、眼脂を症状に挙げている。涙が出ていても、ドライアイを否定する材料にはならない。

症状の種類や強さだけで原因は決められない。眼科では、色素を使って涙液膜が崩れ始めるまでの時間と眼表面の傷を確認し、必要に応じて涙の分泌量も調べる。乾燥感に合わない強い痛みや急な見え方の変化があれば、点眼薬を替えながら様子を見る段階ではない。

急な視力低下・激しい痛みは119番の判断

急に物が二重に見える、目がかすむ、見えにくくなる、または突然激しく痛む。 東京消防庁の救急受診ガイドは、これらを救急車を呼ぶ症状に挙げている。119番へ連絡する。

片目または両目の視力が、数分から数日のうちに落ちた。 日本眼科学会は、急激な視力低下には角膜の傷や感染、網膜や視神経の異常など重い原因が多く、速やかな眼科受診が必要だとしている。通常の乾燥だと自己判断せず、速やかに受診する。

コンタクトレンズ装用中に違和感、充血、痛み、視力低下が出た。 日本眼科医会は、直ちにレンズの使用を中止し、早急に眼科を受診するよう案内している。点眼してレンズを入れ直す対応は避ける。

画面だけに原因を絞らない

日本眼科学会は、加齢、長時間の画面作業、低湿度、空調や送風、コンタクトレンズ、涙の分泌を減らす内服薬、点眼薬の防腐剤、マイボーム腺の病気、シェーグレン症候群や関節リウマチなどを危険因子に挙げる。画面を見る時間を減らしても続く場合は、環境以外の要因も確認する必要がある。日本国内の一般住民を対象に、年齢階級ごとの最新有病率を示す全国統計は、本稿の執筆時点で確認できていない。

口の乾きや関節痛を伴う、持病の薬を使い始めてから症状が変わったという情報は、眼科と処方元の医師へ伝える。原因と思える薬があっても、自分の判断で中断しない。処方内容と市販薬を含む薬の一覧を診察時に示す。

ノートパソコンの画面を見ながら目元を押さえるオフィスワーカー(イメージ)

職場では1時間以内を目安に画面作業を区切る

厚生労働省の情報機器作業ガイドラインは、連続作業を1時間以内とし、次の作業までに10〜15分の作業休止を設け、連続作業の途中にも1〜2回の小休止を入れるよう事業者へ示している。これは職場の労働衛生管理の目安であり、ドライアイ患者全員に共通する治療間隔ではない。

同ガイドラインは、画面までおおむね40センチ以上を確保し、画面上端を目の高さと同じか、やや下に置くことも示す。作業計画には情報機器を使わない別の業務を組み込み、画面作業が長く続かないようにする。空調の風が目へ直接当たる位置を避け、乾燥する室内では湿度を調整する。

市販の人工涙液は回数を一律に決めない

日本眼科学会は、軽い症状が市販の点眼薬で改善する場合がある一方、眼科では不足する涙の成分を補う点眼薬、炎症を抑える点眼薬、涙点プラグなどを状態に応じて使うと説明している。乾燥感が同じでも、必要な治療が同じとは限らない。

日本眼科医会は、市販の人工涙液による水分補給は短時間で元に戻る場合があり、防腐剤を含む製品を多く使うとかえって障害を起こす場合があると説明している。頻回に必要なら、防腐剤の有無やコンタクトレンズとの適合を眼科医か薬剤師へ確認する。充血を取る目的だけの点眼薬を、ドライアイ治療の代わりにしない。

厚生労働省が定める一般用人工涙液の注意事項は、激しい眼痛がある人、治療中の人、薬のアレルギー歴がある人、緑内障と診断された人に使用前の相談を求め、使用後の充血・かゆみ・腫れ、改善しないかすみ、約2週間使っても改善しない症状を中止・相談の条件に挙げている。ソフトコンタクトレンズを着けたまま使えるかも製品ごとに確認する。

日本眼科学会、日本角膜学会、ドライアイ研究会が承認した2023年の診療ガイドラインは、マイボーム腺機能不全(Meibomian Gland Dysfunction、MGD)の患者に対する温罨法を強く推奨している。対象はMGDであり、乾燥感だけで病型を自己判定して全てのドライアイへ当てはめる根拠ではない。強い痛みや急な視力変化がある時は、温めて経過を見ない。

目元を温め、人工涙液の容器を手にする人(イメージ)

子ども・妊娠中・持病・常用薬は分けて考える

子ども。 一般用人工涙液の共通注意事項は、子どもへ使う場合に保護者の指導監督を求めている。対象年齢とコンタクトレンズ装用中の使用可否は製品表示で確認する。日本弱視斜視学会の3歳児健診用問診票は、目を細める、物へ近づく、頭を傾ける行動を目の病気のサインになりうる確認項目に挙げている。幼児でこうした行動が続く場合は、点眼だけで済ませず眼科へ相談する。

妊娠中・授乳中の人。 人工涙液を含む市販点眼薬について、妊娠・授乳中の全製品に共通する使用基準は確認できていない。医薬品医療機器総合機構は、市販薬を選ぶ際、妊娠中・授乳中の人は薬剤師へ相談し、添付文書を読むよう案内している。眼科や産科から薬を処方されている場合は、その内容も伝える。

持病がある人・常用薬がある人。 涙の分泌へ影響する内服薬や全身疾患があるため、服薬開始時期と目の症状が始まった時期を整理する。処方薬、市販薬、健康食品を一覧にし、薬を自己中断せず、眼科と処方元へ相談する。

通常の眼科受診は「強さ」と「続き方」で決める

119番の兆候がなくても、見えにくさが残る、痛みが強い、コンタクトレンズを外しても症状が続く場合は眼科を受診する。市販の人工涙液を使った後に充血、かゆみ、腫れが出た時は使用を中止し、製品の添付文書を持参して医師か薬剤師へ相談する。

日本眼科医会は、一般的なドライアイを失明につながる病気ではないと説明している。ただし、急な視力低下や激しい痛みまでドライアイだと思い込めば、角膜感染症、網膜や視神経の異常など別の病気への対応が遅れる。症状が長引く時は、点眼回数を増やす前に原因を調べる。

よくある質問

涙が出るならドライアイではないのか
流涙もドライアイでみられる症状の一つである。涙が出る事実だけでは、涙液膜が安定しているか、眼表面に傷がないかは分からない。

人工涙液は何回まで使えるのか
全製品に共通する回数は設けない。製品の添付文書と医師・薬剤師の指示に従い、かすみが改善しない、約2週間使っても症状がよくならない、使用後に充血・かゆみ・腫れが出た場合は使用を中止して相談する。

画面を見なければ治るのか
長時間の画面作業は危険因子の一つだが、加齢、空調、コンタクトレンズ、薬、マイボーム腺や全身の病気も関係する。画面時間を調整しても続く症状は、別の要因を眼科で確認する。

温めれば全てのドライアイが改善するのか
温める方法は、マイボーム腺からの油分泌を促す目的で使われる。急な視力変化や激しい痛みがある場合は対象外であり、温めて受診を遅らせない。