子どもの近視の多くは、眼球の前後方向を示す眼軸長が過度に伸び、遠くの像の焦点が網膜の手前にずれることで生じる。厚生労働省e-ヘルスネットは、眼軸長が伸びるほど近視が強くなり、進行の大半は8〜12歳、最も速い時期は7〜10歳だと説明している

眼鏡度数は焦点を合わせるためのレンズの強さ、視力は見分ける力、眼軸長は眼球の長さを表す。三つは関連するが同じ情報ではない。前回と同じ眼鏡を使えていても、それだけで眼軸の伸びや近視の進行が止まったとは判断できない。

突然の視力低下・視野欠損は予定日を待たない

片目または両目が急に見えにくくなった、視野の一部がカーテンのように欠けた、光が走って見える、新しい黒い点や糸くずのような影が急に増えた。 次の定期受診を待たず、速やかに眼科を受診する。日本眼科学会は、飛蚊症や光視症を網膜剥離の初期症状に挙げ、進行するとカーテン状の視野欠損や急な視力低下が起こると説明している。症状だけで原因を決めず、眼底を含む診察につなぐ。

コンタクトレンズやオルソケラトロジー(orthokeratology)用レンズの使用中に、違和感、充血、痛み、視力低下が出た。 レンズを外して装用を中止し、早急に眼科を受診する。日本眼科医会は、これらの症状がある状態で装用を続けると重い角膜感染症を見逃すおそれがあるとして、直ちに使用を中止するよう案内している

眼鏡度数、視力、眼軸長を分けて読む

屈折度数は、目の光学的な状態をレンズの強さで表す。眼軸長は角膜側から網膜側までの構造的な長さである。視力は検査時の見分ける力を示し、眼鏡による矯正や検査への反応にも左右される。どれか一つを別の指標の代わりにはできない。

国際近視研究所(International Myopia Institute、IMI)が2025年に公表した測定機器の報告は、屈折度数を光学面、眼軸長を構造面の指標と位置づけ、近視の進行と治療効果を追う際は両方の変化を比較する必要があるとしている。眼軸長は年齢、性別、屈折状態などを踏まえて読むため、左右の別、測定日、使用機器とともに記録する。

眼軸長の一回の値は診断名でも治療変更の指示でもない。子ども全員に一律に当てはめられる「正常な眼軸長」や、年間何ミリ伸びたら治療を変えるという国内の公的基準は、本稿執筆時点で確認できていない。同じ条件で得た連続値と、調節を抑えて測った屈折度数を眼科医が合わせて評価する。

子どもの近視について、発症年齢、家族歴、屈折度数、眼軸長を並べた図

「散瞳」後に測る調節麻痺下屈折検査

子どもの近視を確かめる際に使うのは、点眼でピントを合わせる力を一時的に抑えた調節麻痺下屈折検査である。瞳孔も広がるため「散瞳検査」と呼ばれることがあるが、屈折度数を測る目的と、眼底を観察する目的は分けて考える。

子どもは調節力が強く、調節が残った自動屈折検査では近視側に測定値がずれる場合がある。IMIの2025年報告は、調節麻痺を使わない検査では近視を強く見積もり、遠視や正視の子を近視に分類する可能性があると指摘した。日本近視学会の手引きも、治療前には調節の影響を除いて近視を診断し、年齢相応の視力発達や別の眼疾患を確認するよう求めている。

散瞳後の度数が散瞳前より弱かったという事実だけから、「仮性近視だった」「治療は不要だ」と家庭で決めない。調節麻痺下の屈折値、矯正視力、左右差、眼軸長、眼底や眼表面の所見を眼科で確認する。検査結果も一つの時点を示すため、過去の同条件の値との比較が要る。

発症年齢・家族歴・過去の進み方で追跡を決める

追跡の手掛かりは、初めて近視と診断された年齢、両親の近視、過去の屈折度数と眼軸長、屋外時間、近くを見る時間と距離、これまでの治療歴である。低年齢での発症や、短期間での変化がある子には、より早い再評価が検討される。

日本近視学会の2025年手引きは、低濃度アトロピン(atropine)点眼薬を始めた場合、開始後1週間〜1カ月に使用状況と安全性を確認し、その後は3〜6カ月ごとに進行と安全性を追うとしている。調節麻痺下屈折検査は年1回を目安とし、眼軸長も定期測定する

この間隔は低濃度アトロピン点眼薬を使う場合の手引きで、未治療の子や別の方法へ一律に当てはめる数字ではない。実際の受診日は、年齢、進行速度、治療法、眼表面の状態、副作用、通院を続けられるかを踏まえて眼科医が決める。

進行抑制は「治す」「眼鏡を外す」と別の目的

近視進行抑制は、将来の屈折度数や眼軸長の増加を小さくすることが目的で、すでにある近視を元に戻す治療ではない。眼鏡やコンタクトレンズによる視力補正が別に必要になる場合もある。方法を比べる時は、進行抑制の根拠、国内での承認内容、年齢、眼表面の健康、日々の管理、費用、通院間隔を分けて確認する。

低濃度アトロピン点眼薬。 日本では2024年12月、近視の進行抑制を目的とする点眼薬が初めて承認された。日本近視学会の手引きは、近視を改善する薬でも視力を矯正する薬でもなく、眼科で診断、処方、定期観察を行う治療と位置づけている。医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency、PMDA)の電子添文は、定期検査で進行を確認し、効果が認められない場合は漫然と続けないこと、散瞳の影響で羞明や霧視が出る場合があることを記載している

単回使用ソフトコンタクトレンズ。 PMDAの承認品目一覧には、近視患者の視力補正と進行抑制を目的とする単回使用ソフトコンタクトレンズが2025年8月19日付で掲載された。承認は全ての子に合うことを意味しない。角膜の状態、装用と衛生管理を守れるかを眼科で評価し、違和感や痛みがあれば装用を止める。

近視管理用眼鏡。 日本近視学会の2025年ガイドラインは、多分割レンズの処方前に調節麻痺下屈折検査を強く推奨し、眼軸測定も勧めている。現在の近視を治すレンズではなく、将来の進行速度を抑える目的だとも明記した。眼鏡なら管理が不要という意味ではなく、装着状態、装用状況、屈折度数と眼軸長の追跡が前提となる。

オルソケラトロジー。 就寝中に特殊なハードコンタクトレンズを着け、日中の裸眼視力を得る方法で、使用をやめると屈折状態は元へ戻る。日本コンタクトレンズ学会のガイドラインは、未成年を慎重処方とし、角膜感染症の危険、保護者による装用管理、処方後3カ月ごとの定期検査を示している。家庭の清潔管理と通院を続けられない場合は適さない。

家庭では屋外時間と近見作業を整える

厚生労働省e-ヘルスネットは、近視予防策として1日2時間ほどの屋外活動を確保し、紙でも画面でも近くを見る時は30センチ以上離れ、30分以上続けないよう示している。20分に1回、20秒以上、約6メートル先を見る「20-20-20」も紹介している。

屋外活動は直射日光を浴び続けることではない。木陰や建物の影を使い、帽子やサングラス、暑い時間帯を避ける対応を優先する。読書、宿題、スマートフォン、ゲームを別々に数えず、近くを見続ける一連の時間として休憩を入れる。

これらは近視の発症を減らすための生活上の対策で、すでに見えにくい子の眼科受診や、処方された眼鏡、進行抑制治療の代わりにはならない。生活を整えても眼軸長が伸びない保証はない。

屋外活動、近見作業の休憩、検査記録を示す子どもの目の健康チェック図

低年齢・持病・常用薬では一般論を当てはめない

就学前から強い近視がある、左右差が大きい、年齢相応の視力が出ない場合は、生活習慣だけが原因と決めない。日本近視学会の手引きは、低年齢で近視が強い子では、弱視を優先して扱い、近視を伴う別の眼疾患を除外するよう求めている。

低濃度アトロピン点眼薬について、5歳未満の子を対象にした国内承認時の臨床試験は実施されていない。5歳未満だから治療しない、または必ず治療するという意味ではなく、診断と選択を慎重に行うための情報の限界である。

緑内障や眼圧上昇の素因、薬への過敏症、慢性疾患、眼の病気、常用薬がある子は、治療開始前に病名と薬の一覧を眼科へ示す。PMDAの電子添文には禁忌と併用注意がある。コンタクトレンズを使う方法では、アレルギー、ドライアイ、角膜の状態、本人の理解度と保護者の管理能力も選択条件となる。

受診時に持参するのは時系列の記録

眼科へ持参する資料は、過去の眼鏡処方、裸眼・矯正視力、調節麻痺下屈折検査、左右別の眼軸長、検査日、分かれば測定機器名、治療の開始・中止日、装用状況、副作用である。初めて近視と診断された年齢、両親の近視、屋外時間、読書や画面までの距離も短く整理する。

診察では、屈折度数と眼軸長がそれぞれどう変わったか、今回の値を年齢と過去の傾向からどう読むか、次回までに何を記録するかを確認する。治療を始める場合は、目的、期待できないこと、起こりうる不具合、中止や変更を検討する条件、受診間隔を聞く。

よくある質問

眼鏡度数が変わらなければ、近視は進んでいないのか
そうとは限らない。眼鏡処方、調節麻痺下の屈折度数、視力、眼軸長は別の情報である。同じ条件で測った複数回の結果を並べて判断する。

眼軸長が長ければ、すぐ治療を変えるのか
一回の値だけでは決めない。年齢、左右差、過去の伸び、屈折度数、測定機器、治療の実施状況を合わせ、眼科医が変更の要否を判断する。

散瞳後に近視度数が弱くなれば、仮性近視なのか
差が出たことだけでは診断できない。調節麻痺下屈折検査は調節の影響を減らす検査であり、矯正視力、眼軸長、眼の健康状態と合わせて評価する。

屋外活動を増やせば、治療をやめられるのか
屋外活動と近見作業の休憩は予防の基本だが、すでに始めた治療の中止条件ではない。処方や通院を家庭の判断で変えず、屈折度数と眼軸長の推移を確認する。