目を細める、顔を傾ける、物へ極端に近づくという行動は、子どもの見え方に問題がある時に表れる手掛かりである。日本弱視斜視学会の3歳児健診用問診票は、目を細める、物に近づく、頭を傾ける、明るい場所で片目をつぶるといった行動を確認項目に挙げている。
ただし、行動は診断名ではない。近視、遠視、乱視、左右の屈折差、斜視、眼球運動の異常が似た外見につながる場合がある。幼い子は自分の見え方を言葉にできず、片目が見えにくくても反対の目で補うことがあるため、左右を分けた検査が要る。
急な視力低下・外傷・白色瞳孔は待たない
片目または両目が、数分から数日で急に見えにくくなった。 その日のうちに眼科へ連絡し、速やかに検査を受ける。日本眼科学会は、急激な視力低下には網膜の損傷、眼内の出血、視神経や脳へ信号を送る経路の異常など重い原因があり、速やかな眼科受診が重要だとしている。
急に二重に見える、かすむ、見えにくい、または突然激しく痛む。 東京消防庁の救急受診ガイドは、大人・子ども共通の眼科症状として1時間以内の受診を案内し、病院がすぐ見つからない場合や、こうした症状が現れた場合は119番へ連絡するよう示している。
目や頭を打った後に急に見えにくくなった、または物が二重に見える。 東京消防庁は、目や頭への外傷後に急な視力低下または複視が出た場合を、救急車を呼ぶ対象に挙げている。受診先を探すために通報を遅らせず、119番へ連絡する。
洗剤、漂白剤、消毒剤などが目に入った。 製品名を調べる前に、その場でまぶたを開き、水道水などの流水を10分以上当てる。日本眼科学会は、化学物質と目が接触する時間が長いほど障害が重くなるとして、直ちに10分以上洗い、洗眼後はただちに眼科を受診するよう示している。痛みが弱まっても受診を取りやめない。
瞳が白く見える、光って見える、または片目だけ視線がずれる。 国立成育医療研究センターは、白色瞳孔や乳幼児の片眼だけの眼位異常を重い眼疾患が隠れうる兆候に挙げ、早急な眼科受診を案内している。白い反射だけで病名は決められないが、撮影条件のせいだと家庭で結論づけない。
目細めや顔の傾きだけでは近視と決まらない
日本眼科医会が2023年に公表した資料は、「目を細める」「顔をしかめる」「極端に近づいて見る」を、子どもの視機能低下に周囲が気づく手掛かりとして示している。目細めや物への近づきは屈折が合っていない可能性を示すが、外見から近視、遠視、乱視のどれかは分からない。
顔をいつも同じ側へ傾ける、顔を回す、顎を上げ下げする行動は、見やすい頭位を探している場合がある。日本眼科学会は、見る方向によってずれ方が変わる斜視では、ずれが小さくなる方向へ顔を傾ける場合があり、乳幼児期の斜視は複視を自覚しないこともあるため早期受診が必要だと説明している。顔の傾きだけで斜視と断定せず、眼位と眼球運動を調べる。
片目をつぶる、読む時だけ頭の向きが変わる、黒板を見る時だけ目を細める場合は、どちらの目で、どの距離と方向を見た時に起きたかを記録する。読書中の行飛ばしや板書の遅れがあっても、家庭や学校の観察だけで原因を決めない。
3歳児健診と学校検査は診断の入口
こども家庭庁は、自治体が実施する3歳児健診では、目の評価に向けて事前に家庭で視力を測り、アンケートへ記入する必要があると案内している。検査がうまくできなかった場合も「異常なし」とせず、その事実を健診側へ伝える。
こども家庭庁の令和5年度調査では、1,741市区町村のうち、3歳児健診の視覚検査に屈折検査を全員へ導入した自治体は1,509、86.8%で、一部へ実施した自治体は38、2.2%だった。会場での視力検査や精密検査後の追跡体制も一律ではない。2026年度時点の自治体別の実施状況は、本稿の執筆時点で確認できていないため、居住自治体から届く案内を確かめる。
日本眼科医会の学校保健資料は、幼稚園、小学校、中学校、高校の視力検査を毎年のふるい分け検査と位置づけ、確定診断を目的とするものではないと明記している。受診勧告を受けた場合は、眼科で原因を確認する。
健診や学校検査で基準内でも、目の位置のずれが時々現れる、片目をつぶる、顔の傾きが続く、黒板や読書で困る場合は、次回の検査まで待たない。日本眼科医会の2023年資料も、屈折検査が正常範囲でも全ての異常を除外するものではないとしている。
眼科では視力・屈折・眼位を分けて調べる
日本眼科学会などが2024年にまとめた「小児の眼鏡処方に関する手引き」は、眼科一般検査の流れに、視力、眼位・眼球運動、前眼部、調節麻痺薬を用いた屈折検査、中間透光体と眼底の確認を挙げている。一つの視力表の数値で、屈折状態、斜視、眼底の状態まで正常とは決められない。
視力検査は左右の目でどの大きさまで見分けられるか、屈折検査は近視、遠視、乱視と左右差があるかを調べる。眼位検査と眼球運動検査は、両目の向きや動きを確認する。子どもはピントを合わせる力が強いため、眼科医が必要と判断した場合は、点眼で調節を一時的に抑えた調節麻痺下屈折検査を行う。
検査内容は年齢、症状、理解度、協力の程度で変わる。手引きは、小児では機嫌や集中力によって測定の再現性が下がり、途中で検査を続けられない場合があるとしている。一回で全項目が終わらなかった時は、得られた所見と次の検査時期を確認する。
乳幼児・発達特性・持病では検査条件を先に伝える
言葉や指差しで答えにくい乳幼児でも、固視、追視、片目を隠した時の反応、年齢に合う視標を使って見え方を調べる方法がある。「視力表に答えられる年齢まで待つ」と家庭で決めず、気になる兆候を眼科へ伝える。
全身疾患、神経発達症、過去の眼疾患・眼外傷・眼科手術がある子は、予約時に病歴と発達上の配慮を伝える。日本眼科学会の手引きも、器質的な眼疾患、斜視、弱視、全身疾患、神経発達症がある子には特別な配慮が必要としている。常用薬があれば薬名が分かる一覧を持参し、急な視力変化や外傷時は資料をそろえるために受診を遅らせない。
一般外来を予約する目安と持参記録
救急の兆候がなくても、目細め、顔の傾き、片目つぶり、物への近づきを繰り返す、いつも同じ方向へ頭を向ける、学習や遊びに支障が出る場合は眼科外来を予約する。学校から受診勧告を受けた、今の眼鏡で見えにくそうにする、予定していた経過観察が途切れた場合も受診の対象である。
何日、何回続けば受診するという全国一律の基準は、国内の公的資料で確認できていない。回数だけで線を引かず、同じ行動が繰り返されるか、片目だけか、いつも同じ方向か、日常生活へ影響しているかを整理する。
記録するのは、始まった日、頻度、続く時間、遠くと近くのどちらで起きるか、どちらの目をつぶるかである。自然に症状が出た時の短い動画、健診結果、学校の受診勧告書、過去の眼鏡と処方記録、病歴と薬の一覧を持参する。撮影のために不快な姿勢や片目で見る動作を繰り返させない。
よくある質問
目を細めてテレビを見ると近視なのか
目細めは見えにくさの手掛かりだが、近視とは限らない。遠視、乱視、左右差なども含め、左右別の視力と屈折検査で原因を確かめる。
学校の視力検査が基準内なら眼科は不要か
持続する症状がなければ予定された健診を受ける。目細め、片目つぶり、顔の傾き、眼位のずれが続く場合は、学校検査の結果だけで眼科受診を見送らない。
写真で片方の瞳だけ白く写ったらどうするか
同じ目で白い反射を繰り返す、肉眼でも瞳が白く見える場合は早急に眼科へ連絡する。画像を削除せず、撮影日時とともに診察時に示す。
出典・参考資料
- 3歳児健診における眼科問診票(日本弱視斜視学会)目細め、物への近づき、頭の傾き、片目つぶり、白色瞳孔などの確認項目
- 小児の目の健康を守るために(日本眼科医会)日常の視覚サイン、家庭視力検査の限界、屈折検査の役割
- こどもの斜視(日本眼科学会)斜視と顔の傾き、乳幼児が複視を自覚しない場合、早期受診
- 急に見にくい(急激な視力低下)(日本眼科学会)数分から数日で起こる視力低下と速やかな眼科受診
- 東京版救急受診ガイド 眼科関連(東京消防庁)急な複視、かすみ、視力低下、突然の激しい眼痛の救急区分
- 東京版救急受診ガイド 眼のけが(東京消防庁)目や頭を打った後の急な視力低下と複視の119番判断
- 化学眼外傷(日本眼科学会)化学物質が入った直後の10分以上の流水洗眼と洗眼後の即時受診
- 眼科(国立成育医療研究センター)白色瞳孔、眼位異常、頭の傾き、物へ近づく乳幼児の受診兆候
- 乳幼児健診について(こども家庭庁)3歳児健診前の家庭視力検査とアンケート
- 令和5年度 3歳児健康診査における視覚検査の実施状況等について(こども家庭庁)市区町村の視覚検査、屈折検査、精密検査フォロー体制の実施状況
- 眼科学校保健 資料集(日本眼科医会)学校視力検査の対象、ふるい分けの性格、受診勧告
- 小児の眼鏡処方に関する手引き(日本眼科学会ほか)小児の視力、眼位、眼球運動、前眼部、調節麻痺下屈折、眼底の検査