健康サポート薬局は、処方薬を渡す機能に加え、地域住民の健康相談を受け、必要に応じて医療機関へつなぐ薬局だ。薬局内の血圧計や、自己採血した血液から血糖値などを測る検体測定室は、医療機関へ足を運ぶきっかけを日常生活の近くにつくる。ただし、そこで得た数値は診断ではなく、公的な健診の代わりにもならない。

薬局の役割──測って終わりではなく受診へつなぐ

厚生労働省は2016年、かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加え、地域住民の健康づくりを積極的に支える薬局を「健康サポート薬局」と表示する仕組みを始めた。薬や健康食品の相談、受診が必要な人への勧奨、地域の医療機関や介護サービスとの連携が役割に含まれる。名称は、独自の検査で病気を見つける医療施設を意味しない。

厚生労働省の2024年度委託調査では、届け出のあった健康サポート薬局3,226軒を対象とし、1,202軒から有効回答を得た。各薬局が報告した3,689件の取り組みでは、健康相談が62.6%、講習会やポスターなどの情報提供が44.7%、血圧測定など健康状態の測定が25.5%だった。相談が中心で、測定は役割の一部という実態が見える。

急な症状は測定を待たず119番

薬局の測定は、救急対応を要する症状の様子見には使わない。厚生労働省は、急な息切れや呼吸困難、胸の中央を締め付ける痛みが2〜3分続く場合、突然の激しい頭痛、顔の片側のゆがみ、ろれつが回らない状態、片腕や片脚に急に力が入らない状態を、迷わず119番を呼ぶ症状として挙げている。数値を測り直したり、薬局が開くまで待ったりする段階ではない。

検体測定室で分かること、分からないこと

薬局などに設けられる検体測定室は、利用者がその場で自ら採取した検体を使う簡易検査の場だ。主な対象は血糖値や中性脂肪で、診療に使う検査ではない。厚生労働省の案内は、事業者が伝える内容を測定値と基準値に限り、結果に基づく診断や医学的な指導を行わず、健康診断やかかりつけ医への相談を勧めるよう定めている。採血前後の消毒や処置も利用者本人が行う。

基準範囲に入った数値も「異常なし」という診断にはならない。示されるのは測定値と基準値で、ほかの検査や診察を合わせた医学的判断は含まれない。反対に、基準から外れた結果だけで病名を決めたり、処方薬の量や飲み方を変えたりする根拠にもならない。結果票とお薬手帳を持ち、健康診断の実施機関やかかりつけ医に相談するのが次の段階になる。

特定健診とは別の制度

公的医療保険の特定健康診査は、40〜74歳を対象に、メタボリックシンドロームに着目して年1回行う制度である。生活習慣を改める必要がある人には、保健師や管理栄養士による特定保健指導が用意される。薬局で一つの項目を測ったからといって、加入する医療保険者から案内された特定健診を受けた扱いにはならない。

用語の区別も要る。厚生労働省の健康情報サイトは、幅広く健康状態を確かめて経時的な変化を追う「健診」と、がんなど特定の病気を見つけて治療につなげる「検診」を分けている。骨密度、体組成、眼圧などを測る民間サービスも、名称や機器が似ているだけで公的な健診・検診と同じ根拠や精度管理を備えるとは限らない。参加前に、実施主体、測定項目、費用、異常時の紹介先を確認する必要がある。

子ども・妊婦・治療中の人は別の確認を

子どもや妊婦には、成人一般とは別の公的な健診がある。乳幼児健診では、市町村に1歳6か月児と3歳児の健診実施が義務付けられ、ほかの月齢・年齢にも国の支援制度が設けられている妊婦健診では、妊婦と胎児の状態を確認するため、身体測定、血圧、尿、血液などの検査を行い、市区町村が公費補助の受診券を交付する。薬局の成人向け測定をこれらの代わりにせず、自治体の案内や担当医の予定に沿う。

持病がある人、処方薬や市販薬を継続して使う人も扱いが異なる。測定値の変化は、疾患、薬、食事、測定条件を合わせて判断する必要があるため、薬剤師に服薬状況を伝え、結果はかかりつけ医と共有する。薬局で得た一度の数値を理由に、本人の判断で服薬を中止したり量を変えたりしない。

長期効果はまだ測れていない

地域の薬局は、予約なしで相談しやすく、日常の導線上で健康状態を振り返る接点になる。一方、健康サポート薬局での相談や測定が、疾病の発症率や死亡率を長期的に下げたと示す日本全国の公的な評価資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。利用者数や相談件数と、疾病予防の効果は同じ指標ではない。

薬局で確かめるべきなのは、「この数値で病名が決まるか」ではなく、誰が測定を担い、結果をどの医療機関へつなぐ設計になっているかだ。簡易測定を入口、公的な健診と医療機関の評価を次の段階とする分担が制度の前提になる。