足白癬(水虫)は、皮膚糸状菌(dermatophytes)が足の角層に感染して起こる。白癬菌は湿度が高く柔らかくなった足の指の間から入りやすく、高温多湿の時期には症状が目立ちやすい。ただし、皮むけやかゆみのすべてが足白癬ではなく、かゆみがない足白癬もある。
日本皮膚科学会は、足白癬を、指の間が白くふやける趾間型、足裏に小さな水疱が出る小水疱型、足裏全体が厚く硬くなる角質増殖型に分け、角質増殖型ではかゆみがほとんどないと説明している。症状が涼しい季節に引いても、菌が消えたとは限らない。
先に確認する──受診を急ぐ変化
足からふくらはぎにかけて突然赤く腫れ、触れると熱い、痛む、38℃以上の発熱、強いだるさ、食欲低下、悪寒を伴う場合は、白癬の自己処置を続けず、速やかに皮膚科または内科を受診する。東京都健康長寿医療センターは、蜂窩織炎で突然の下肢の発赤・腫れ・熱感・痛みが生じ、38℃以上の発熱、倦怠感、食欲低下、悪寒を伴う場合があると説明している。これらは白癬そのものより、皮膚から入った細菌による感染を疑う変化である。
足の指の間に深い亀裂やびらんがあり、赤みや腫れが足の甲やすねへ広がる場合も早期の診察が必要になる。日本皮膚科学会は、趾間型の足白癬で生じた亀裂やびらんから細菌が入り、蜂窩織炎などを起こす場合があり、特に糖尿病がある人では重症化しやすいとしている。
足、爪、体、股、癜風は同じ病変ではない
足白癬。趾間型では指の間の白いふやけ、鱗屑、赤み、びらんがみられる。小水疱型では足裏に小さな水疱が生じ、乾くと皮がむける。角質増殖型では、かかとを含む足裏が厚く硬くなり、ひび割れる場合がある。いずれも、かゆみの有無だけでは判定できない。
爪白癬。爪の先から白色または黄色に濁り、厚くなり、爪の下がもろくなる形が多い。日本皮膚科学会は、外傷、炎症、圧迫でも爪は変化するため、治療前に爪の中の白癬菌を確認して診断する必要があるとしている。濁った爪を見ただけで爪白癬とは決められない。
体部・股部白癬。体部白癬は体毛のある皮膚、股部白癬は外陰部とその周囲に生じる。境界の比較的はっきりした赤い発疹が輪のように外へ広がり、中心の炎症が弱く見える場合がある。日本皮膚科学会は、体部・股部白癬が強いかゆみから湿疹と誤られ、ステロイド外用薬によってかえって悪化する場合があると注意を促している。以前処方されたステロイド外用薬を、似た発疹へ自己判断で転用しない。
癜風(でんぷう)。足白癬や股部白癬の原因となる皮膚糸状菌ではなく、皮膚に常在するマラセチア(Malassezia)が過剰に増えて生じる。胸、背中、肩を中心に、淡い褐色、白色、赤褐色の円形に近い斑が複数現れ、つながる場合がある。色だけで白癬やほかの色素異常と区別するのは難しい。
見た目だけで薬を決めず、真菌を確認する
皮膚科では、皮膚の鱗屑や爪の一部を採り、水酸化カリウム(KOH)を使う直接鏡検で真菌を探す。病変の場所や経過によって真菌培養を追加する場合もある。日本皮膚科学会は、皮膚、毛、爪から採った試料を顕微鏡で観察し、白癬菌の有無を調べ、原因菌の確認が必要な場合は真菌培養を行うと説明している。
湿疹、接触皮膚炎、乾癬、汗疱、外傷による爪変形は白癬と似ることがある。診断が違えば治療も変わる。足の皮むけ、爪の濁り、体の環状の発疹を一つの「カビ」とまとめ、市販薬を順に試す方法は鑑別を遅らせる。
治療──部位と病型で外用・内服が変わる
日本皮膚科学会と日本医真菌学会の「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」は、足白癬と体部・股部白癬で外用抗真菌薬を治療の中心に置き、爪白癬では確定診断後に病変の広さや内服の可否を踏まえて内服薬または爪用外用薬を選ぶとしている。癜風では外用抗真菌薬が第一選択となり、広範囲または再発を繰り返す場合に内服を検討する。
足白癬は症状が先に消えても角層に菌が残る場合があり、外用を終える時期は病型と真菌検査を踏まえて決まる。爪白癬の内服薬には、併用薬との相互作用に注意が必要なものや、肝機能を血液検査で確認するものがある。薬剤、塗る範囲、使用期間、検査時期は、診断した医師の指示または市販薬の添付文書に合わせる。
外用薬を使った部分を中心に赤み、小水疱、皮むけ、かゆみが強くなった場合は、薬による接触皮膚炎も候補になる。日本皮膚科学会は、水虫薬の使用中に症状が悪化した場合は薬による接触皮膚炎を疑い、皮膚科を受診するよう案内している。別の水虫薬へ次々に替える前に、診断を確かめる。
子ども、妊娠・授乳中、糖尿病、常用薬がある人
子ども。日本皮膚科学会は、家庭内では子どもを含む誰にでも足白癬が感染しうると説明している。一方、市販薬には年齢によって使えない製品があるため、成人用を量だけ減らして使う判断は避ける。年齢を伝え、皮膚科医または薬剤師に確認する。
妊娠中・授乳中の人。市販の外用薬を含め、購入前に妊娠または授乳中であることを薬剤師へ伝える。PMDAは、妊娠中、授乳中、持病の治療中の人には使用できない市販薬があるため、薬剤師へ相談するよう求めている。足白癬・爪白癬の薬剤選択を一括して示す国内の一般向け公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。
糖尿病がある人。足の感覚低下や血流障害があると、傷や感染に気づきにくい。国立健康危機管理研究機構の糖尿病情報センターは、糖尿病がある人に水虫や細菌感染の疑い、足の傷、赤い腫れが一つでもあれば、放置せず主治医または皮膚科へ相談するよう案内している。痛みが弱いことを軽症の根拠にしない。
肝臓の病気や常用薬がある人。爪白癬などで内服治療を検討する際は、持病、処方薬、市販薬、健康食品を医師と薬剤師へ伝える。内服の適否、相互作用、血液検査の必要性は個別に決まるため、残薬を使ったり他人の薬を分けてもらったりしない。
再感染を減らす──足、靴、家庭内の順に整える
足。石けんを泡立て、足の指の間を強くこすらずに洗い、水分を押さえて乾かす。角質をむしる、軽石で削りすぎると角層に傷がつく。日本皮膚科学会は、角質をむしったり軽石でこすりすぎたりせず、石けんの泡でなでるように足を洗うよう案内している。
靴。同じ靴を毎日続けて履かず、洗える靴は洗って十分に乾かす。洗えない靴は内側を拭き、乾燥させる。日本皮膚科学会は、靴を複数用意して履き替え、洗浄または内側の拭き取りの後にしっかり乾燥させることを勧めている。長時間履く靴は、蒸れに加えて摩擦が強くならないよう、足に合う大きさを選ぶ。
家庭内。同居人に足白癬や爪白癬がある家庭では、感染している人の治療が対策の起点になる。スリッパやサンダルを共用せず、足ふきマットを分ける。日本皮膚科学会は、家庭内の足白癬・爪白癬を治療することを優先し、スリッパやサンダルの共用を避け、足ふきマットを分ける方法を挙げている。同学会は、家庭内に患者がいる場合、洗える布類は通常の洗濯を行い、床は掃除機や水拭きで落ちた角質を取り除くよう案内している。
よくある質問
かゆくなければ水虫ではないのか
かゆみがない足白癬はある。逆に、かゆい足がすべて足白癬でもない。皮むけ、水疱、ひび割れが続く場合は、皮膚科で真菌の有無を確認する。
爪が黄色く厚ければ爪白癬なのか
爪白癬でよくみられる変化だが、外傷、圧迫、炎症、乾癬などでも爪は濁り、厚くなる。治療前の真菌検査が判断の分かれ目になる。
体の白い斑は足の水虫が広がったものか
胸、背中、肩の白色や褐色の斑は癜風でも生じる。癜風はマラセチアが関わり、足白癬の皮膚糸状菌とは異なる。外観だけではほかの色素異常と区別できない。
症状が消えたら外用薬を終えてよいのか
症状の消失と真菌の消失は一致しない場合がある。終了時期は病型、使っている薬、真菌検査で変わるため、処方時の指示または市販薬の添付文書を確認する。
出典・参考資料
- 皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会・日本医真菌学会)足白癬、爪白癬、体部・股部白癬、癜風の診断、治療、再発予防
- 白癬(水虫・たむしなど)Q7 白癬はどのようにして診断されるのですか(日本皮膚科学会)皮膚・爪の試料を用いる直接鏡検と真菌培養
- 白癬(水虫・たむしなど)Q10 足白癬にはどのような症状があるのですか(日本皮膚科学会)足白癬の3病型と、かゆみがない例
- 白癬(水虫・たむしなど)Q17 足白癬は子供にもうつりますか(日本皮膚科学会)子どもを含む家庭内での足白癬の感染
- 白癬(水虫・たむしなど)Q19 水虫の塗り薬でかぶれることはありますか(日本皮膚科学会)外用薬による接触皮膚炎と症状悪化時の受診
- 白癬(水虫・たむしなど)Q22 爪白癬とは何ですか(日本皮膚科学会)爪白癬の外観、鑑別、糖尿病がある人の細菌感染リスク
- 白癬(水虫・たむしなど)Q29 足白癬で死亡することはありますか(日本皮膚科学会)趾間の亀裂・びらんから生じる細菌感染と糖尿病での重症化
- 白癬(水虫・たむしなど)Q30 体部・股部白癬の症状(日本皮膚科学会)環状の発疹とステロイド外用薬による悪化
- 白癬(水虫・たむしなど)Q24 足白癬の予防(日本皮膚科学会)家庭内感染を減らす治療と共用品の扱い
- 白癬(水虫・たむしなど)Q25 足のケア(日本皮膚科学会)足の洗浄と角層を傷つけない手入れ
- 白癬(水虫・たむしなど)Q26 靴のケア(日本皮膚科学会)靴の洗浄、乾燥、履き替え
- 白癬(水虫・たむしなど)Q27 部屋のケア(日本皮膚科学会)家庭内に患者がいる場合の洗濯、掃除、水拭き
- 市販のくすりを使用する場合、どんなことに注意したらよいですか(医薬品医療機器総合機構(PMDA))小児、妊娠・授乳中、持病・治療中の人が市販薬を選ぶ際の確認事項
- 蜂窩織炎(東京都健康長寿医療センター)急な下肢の発赤、腫れ、熱感、痛み、発熱などの症状
- 糖尿病足病変(国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター)糖尿病がある人の足の真菌感染、傷、腫れと受診