体格指数(Body Mass Index、BMI)は体重を身長の2乗で割る指標で、脂肪と筋肉の違いや、脂肪が付いた場所までは示さない。日本肥満学会はBMI18.5以上25未満を普通体重とする一方、BMI25未満でも腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上で、血圧・血糖・血清脂質のうち2項目以上が基準を外れればメタボリックシンドロームと診断されるとしている。体重が標準範囲にあることと、代謝上の問題がないことは同義ではない。

健診会場で看護師が男性の腹囲をメジャーで測る様子

救急要請を急ぐ症状──腹囲の測定より先に

腹囲が基準を超えただけで救急要請が必要になるわけではない。ただし、突然の激しい頭痛、顔の片側のゆがみ、ろれつが回らない、片側の手足に急に力が入らない、急な呼吸困難、胸の中央を締め付ける痛みが2〜3分続く場合は119番を急ぐ。総務省消防庁の救急車利用マニュアルは、こうした成人の症状を「ためらわず救急車を呼んでほしい症状」として示している

BMIが普通でも腹部肥満は残る

BMIは集団の体格を比べるには簡便だが、同じ値でも体脂肪率や脂肪分布は異なる。米国の国民健康栄養調査(NHANES III)に参加した成人1万5184人を追跡した研究では、BMIが普通で腰臀比が高い腹部肥満の人は、BMIが同程度で腹部肥満のない人より全死亡リスクが高いという関連が認められた。この結果は関連を示したもので、腹部脂肪が死亡増加を直接引き起こしたとの証明ではない。

内臓脂肪は腹腔内の臓器周囲に蓄積する脂肪を指す。皮下脂肪と位置が違うため、腹部をつまんだ感触だけでは区別できない。2024年の総説は、機能不全に陥った内臓脂肪が脂肪酸や炎症性サイトカインを門脈へ放出し、肝臓の異所性脂肪、インスリン抵抗性、炎症に関わる経路を整理している。腹囲は内臓脂肪蓄積の手掛かりだが、内臓脂肪量そのものを測る検査ではない。

日本の腹囲はへその高さで測る

日本の健診で使う腹囲は、原則としてへその高さの胴回りだ。立った姿勢で両足をそろえ、両腕を自然に下ろす。メジャーを床と水平に保ち、皮膚へ食い込ませず、軽く息を吐いた終わりに読む。厚生労働省の健康情報サイトは、へその高さで測る腹囲を内臓脂肪蓄積の目安とし、男性85cm・女性90cm以上という日本の基準を示している

へそが脂肪で下方へずれている場合は、肋骨下縁と上前腸骨棘の中点の高さを使う。毎回同じ位置と姿勢で測り、単発の増減より推移を残す。服の上から測った値や、腹をへこませた値は健診値と比較しにくい。

85cm・90cmだけでメタボとは決まらない

日本の基準では、腹囲は入口の一つである。男性85cm以上、女性90cm以上に加え、血圧、血糖、脂質の3項目中2項目以上が基準を外れたときにメタボリックシンドロームの診断対象になる。腹囲だけが線を越えても診断は確定しない。反対に腹囲が基準未満でも、血圧や血糖、脂質の異常が消えるわけではない。

日本の特定健康診査は身長、体重、BMI、腹囲に加え、血圧、血糖、脂質、肝機能、尿を確認し、結果に精密検査や治療の案内があれば健診結果を持って医療機関を受診するよう求めている。家庭で測った腹囲は、採血や血圧を省いて自己診断するための数字ではない。

腰高比0.5は研究上の目安

腰高比(Waist-to-Height Ratio、WHtR)は、腹囲を身長で割る。横断研究24件と前向き研究10件、計51万2809人をまとめたメタ解析では、腰高比は糖尿病やメタボリックシンドロームとの関連を捉える点でBMIより強く、BMIが腰高比を上回った評価項目はなかった。一方、研究結果のばらつきは大きく、著者らも慎重な解釈を求めている。

78研究をまとめた別の系統的レビューは、男女とも腰高比0.5を境界値の簡便な目安として提案した。身長170cmなら腹囲85cm、身長160cmなら80cmに相当する。ただし、0.5は日本のメタボリックシンドローム診断基準ではない。日本の特定健診はBMIと腹囲を別々に測り、血圧、血糖、脂質と合わせて判定する。

妊娠中、子ども、持病がある人

ここまでの腹囲基準は成人一般を対象にしたものだ。妊娠中は腹囲が胎児の成長で変わり、小児は年齢と成長段階に応じた評価が要る。立位を保てない人も標準手順と同じ条件では測れない。糖尿病、脂質異常症、高血圧、肝疾患の治療中の人や常用薬がある人は、腹囲の変化だけで治療内容を変えず、主治医が示す検査と目標を優先する。

健診会場のカウンターに置かれた健康診断結果と血液検査票

健診結果を次の確認につなげる

腹囲が基準以上だった場合は、同じ健診の血圧、血糖、脂質、肝機能も確認する。「要精密検査」「要治療」と記載されていれば、結果票を持って医療機関を受診する。基準未満でも腹囲が継続して増える、または検査値が悪化している場合は、体重が変わらないことを理由に放置しない。

家庭で残すなら、測定日、時刻、腹囲、体重を同じ条件で記録する。BMI、腹囲、腰高比にはそれぞれ見える範囲と見えない範囲がある。三つの数字を病名へ置き換えるのではなく、健診の検査値と一緒に変化を確認する資料として扱う。

よくある質問

BMIが普通なら腹囲を測らなくてもよいか
BMIが普通でも腹部肥満はありうる。日本の特定健診もBMIと腹囲を別の項目として扱っている。

男性85cm、女性90cmを超えたらメタボなのか
腹囲だけでは決まらない。日本の診断基準では、血圧、血糖、脂質の3項目中2項目以上が基準を外れることも条件になる。

腰高比0.5を超えたら病気なのか
病気の診断ではない。国際研究から提案されたスクリーニング上の目安で、日本の正式なメタボリックシンドローム基準とは異なる。

家庭用体組成計の「内臓脂肪」表示で判断してよいか
機器が推定した指標であり、表示方法は製品ごとに異なる。健診の腹囲や血液検査に置き換えず、異常の指摘があれば結果を医療者に示す。