水様便は、形のない水分の多い便が繰り返し出る状態である。便の見た目だけで、感染性胃腸炎、食中毒、薬の影響など原因を決めることはできない。最初に確かめるのは、水分を口から保てるか、尿が出ているか、受け答えと活動性が普段どおりかである。
先に確認する119番の兆候
呼びかけても反応がない、普段どおり話せない、顔色が明らかに悪い場合は119番へ連絡する。成人では、突然の激しい腹痛、激しい腹痛の持続、血便または真っ黒い便、支えなしでは立てないほどの急なふらつきも対象になる。子どもは、激しい下痢や嘔吐で水分が取れず意識がはっきりしない、嘔吐が止まらない、激しい腹痛で苦しがる、血便が出る場合に救急要請を急ぐ。厚生労働省の救急車利用案内は、成人の腹痛、血便・黒い便、急なふらつきと、子どもの飲めないほどの下痢・嘔吐、意識の変化、止まらない嘔吐、血便を119番の目安に挙げている。
119番に至らなくても受診を急ぐ兆候
水分を飲んでも吐いて保てない、強い口の渇きや口内の乾燥がある、尿が普段より少ないか濃い、目や頬がくぼむ、強いだるさやめまいがある場合は、脱水を疑って速やかに医療機関へ連絡する。頻回の嘔吐、強い腹痛、血や膿が混じる便、意識や活動性の変化も、日数を待たず受診する兆候である。米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)は、口の渇き、尿量減少、濃い尿、めまい、目のくぼみを脱水徴候とし、意識状態の変化、頻回の嘔吐、強い腹痛、黒い便や血・膿の混じる便があれば直ちに医師へ連絡するよう示している。
乳幼児は変化が速い。ぐったりする、水分が取れない、唇や舌が乾く、尿が半日以上出ない、尿量が少なく色が濃い、血液や粘液、黒っぽい便が出る、けいれんがある場合は至急受診する。こども家庭庁の保育所向け感染症対策ガイドラインは、これらを子どもの下痢で至急受診が必要と考えられる兆候に挙げ、下痢の回数、便の色、嘔吐、排尿、食べた物、周囲の同様症状を記録するよう示している。
飲める場合の初動──量より先に保てるかを確認
救急の兆候がなく、飲んだ水分を保てる成人は、水やスープ、電解質を含む飲料などを取り、排便、嘔吐、排尿、体温、活動性の変化を見る。飲んだ物を吐いて保てなくなった場合は、家庭での観察から受診へ切り替える。厚生労働省の2026年「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版」は、急性下痢症では水分摂取を優先し、成人の経口補水では糖分、ナトリウム、カリウムなどの電解質を含む飲料が大切だとし、小児では脱水の有無を早く評価して経口補水療法につなぐとしている。
経口補水液(Oral Rehydration Solution、ORS)は、一般の清涼飲料水と同じ位置づけではない。日本では、感染性胃腸炎の下痢・嘔吐に伴う脱水時に水と電解質を補う「特別用途食品」の病者用食品である。消費者庁は、経口補水液は一般的なスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムが多く、日常的な使用や大量摂取を避け、必要性を医師、管理栄養士、薬剤師へ相談し、製品表示を確認するよう案内している。食事制限を受けている人は自己判断で選ばない。
記録する項目は、水様便と嘔吐の開始時刻と回数、便の色、血液や粘液の有無、飲んだ物、尿の回数と色、体温、受け答えと活動性である。常用薬と直前に使った市販薬も書き留める。記録は悪化を拾い、受診時に経過を伝えるために使い、病名の自己判断には使わない。
食事は長く止めず、薬は自己判断で足さない
食欲が戻ったら、急性下痢を理由に長く絶食する必要はない。脂肪の多い食事、アルコール、カフェイン、大量の単純糖を含む飲食物は症状を悪化させる場合があるため、体調に合わせて控える。NIDDKは、食欲が戻った成人は通常の食事へ戻り、子どもは年齢相応の食事、乳児は母乳または育児用ミルクを続け、急性下痢で過度な制限食や絶食を行わないとしている。
血便や発熱がある人、乳児、幼児、子どもは、市販の下痢止めを自己判断で使わない。処方薬や抗菌薬を飲んでいる人は、下痢を理由に休薬や減量を決めず、処方した医師か薬剤師へ連絡する。NIDDKは、乳幼児と子ども、血便または発熱がある人には市販の下痢止めを通常勧めず、乳児は普段どおり母乳または育児用ミルクを飲ませ、経口補水液を使う前に医師へ相談するよう示している。
乳幼児、妊婦、高齢者、持病・常用薬のある人
乳幼児と子ども。 成人の補水量を当てはめない。母乳または普段の濃さの育児用ミルクを続け、経口補水液の種類と量は小児科へ確認する。救急の兆候がなく、休日・夜間に受診の要否を迷う場合は、全国共通の子ども医療電話相談「♯8000」から、小児科医師や看護師に対処と受診先を相談できる。実施時間は都道府県ごとに異なる。意識や呼吸に異常がある場合は♯8000を待たず119番を優先する。
妊婦。 嘔吐が続く、水分を保てない、尿が減る、腹痛や発熱を伴う場合は、産科のかかりつけ医か医療機関へ早めに連絡する。補水量と市販薬を自己判断で決めない。
高齢者、腎臓病・糖尿病などの持病、免疫機能が低下している人。 脱水の影響と適した飲料が成人一般と異なる場合がある。NIDDKは、高齢者、免疫機能が低下した人、糖尿病や腎臓病などがある人に、経口補水液を飲む前に医師へ相談し、適した溶液と液体量を確認するよう求めている。心臓や腎臓の病気で水分・塩分制限を受けている人は、経口補水液を自己判断で追加しない。
抗菌薬や常用薬を使っている人。 下痢が薬と関係する場合もあるが、症状だけで原因薬は決められない。薬の名称、服用開始日、最後に飲んだ時刻を伝え、継続や変更は医師または薬剤師の判断に沿う。NIDDKは、妊婦、65歳を超える人、抗菌薬を使用中の人、免疫機能が低下した人では下痢に伴う問題が起きやすく、医師と連絡を保つ必要があるとしている。
よくある質問
水だけを飲めばよいのか?
水分は必要だが、水様便では電解質も失う。飲める成人は水、スープ、電解質を含む飲料などから保てる物を選ぶ。経口補水液は病者用食品であり、日常の飲料として大量に飲まず、適否と量を医師、管理栄養士、薬剤師へ確認する。
下痢が止まるまで食べない方がよいのか?
長い絶食は勧められていない。食欲が戻ったら体調に合わせて通常の食事へ戻す。乳児は母乳または普段の育児用ミルクを続ける。
何日続いたら受診するのか?
発症後の日数や1日の便回数だけで受診を決める日本の全国一律の公的基準は、本稿の執筆時点で確認できていない。NIDDKは、成人では下痢が2日を超えるか1日に6回以上の軟便がある場合、子どもでは下痢が1日を超える場合を、直ちに医師へ連絡する目安に挙げているが、日本の全国一律の受診基準ではない。意識の変化、強い腹痛、血便・黒い便、水分を保てない嘔吐、尿量低下などがあれば、日数を待たず受診する。警告サインがなくても、改善しない、悪化する、繰り返す場合は医療機関へ相談する。
出典・参考資料
- こんな時は迷わず119へ(厚生労働省)成人と子どもの腹痛、血便、嘔吐、意識変化など、119番通報を急ぐ兆候
- 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編(厚生労働省)成人と小児の急性下痢症における脱水評価、水分・電解質補給、経口補水療法の位置づけ
- 経口補水液について(消費者庁)病者用食品としての経口補水液の用途、成分上の特徴、使用上の注意
- 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2023年10月一部修正)(こども家庭庁)乳幼児の下痢で至急受診を考える脱水徴候、少量頻回の水分補給、記録と便処理
- Symptoms & Causes of Diarrhea(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)脱水徴候、成人と子どもの受診目安、妊婦・高齢者・免疫機能が低下した人の注意点
- Treatment of Diarrhea(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)水分と電解質の補給、乳児の哺乳、市販の下痢止め、持病がある人の経口補水液に関する注意
- Eating, Diet, & Nutrition for Diarrhea(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)急性下痢時の食事再開、乳児と子どもの食事、避ける飲食物
- 子どもの症状は♯8000(厚生労働省)休日・夜間に小児科医師や看護師へ受診判断を相談する全国共通番号