のどの痛みは、咽頭や扁桃などの粘膜に炎症が起きた時に現れる症状だ。原因にはウイルスや細菌による感染のほか、たばこの煙などの刺激もあり、痛み方だけで病名や抗菌薬の要否は決められない。
呼吸と嚥下が普段どおりで全身状態が安定していれば、水分を取り、刺激を避けて休むことが自宅対応の軸になる。塩水うがいは成人には選択肢となるが、呼吸しにくい、水や唾液を飲み込めないといった状態ではセルフケアを続けない。
先に確認する救急の兆候
急な息切れや呼吸困難、唇が紫色、顔色が明らかに悪い、意識がはっきりしない場合は119番へ連絡する。 子どもで激しいせきやゼーゼーを伴って呼吸が苦しそうな場合、呼吸が弱い場合も同様だ。厚生労働省の救急車利用案内は、成人の急な息切れ・呼吸困難と、子どもの紫色の唇、激しいせきや喘鳴を伴う呼吸苦、弱い呼吸を119番通報の目安に挙げている。
息を吸う時に高い音がする、水や唾液を飲み込めずよだれが出る、症状が急速に悪化する場合も救急対応を急ぐ。 のどの腫れで空気の通り道が狭くなっている可能性がある。英国の国民保健サービス(NHS)は、呼吸困難、嚥下不能、よだれ、吸気時の高い音、急速に悪化する重い症状を、直ちに救急部門へ向かう条件として示している。日本では状態が切迫していれば119番を選ぶ。
のどの痛みに呼吸のつらさを伴う場合は、軽いかぜと決めつけない。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、急性喉頭蓋炎の腫れが気道をふさぐ場合があるとして、のどの痛みと呼吸のつらさが重なる時は直ちに耳鼻咽喉科医を受診するよう案内している。
強い嚥下痛や開口障害は早急に受診
食事が取れないほど痛い、つばを飲み込む時の痛みが強い、口が開きにくい場合は、当日中を目安に耳鼻咽喉科へ相談する。耳へ響く痛みが加わる場合も放置しない。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、扁桃周囲膿瘍では強い咽頭痛と嚥下痛、食事困難、開口障害が現れ、切開排膿や抗菌薬治療、入院が必要になる場合があると説明している。
強い声がれや、口の中に物を含んだような声が目立つ場合も早めに診察を受ける。鏡で見える腫れの大きさだけでは重症度を判断できない。
救急の兆候がない時の自宅対応
水分を少しずつ取る。 冷たい水でも温かい飲み物でも、飲み込みやすい温度を選び、熱すぎる飲み物は避ける。尿が少ない、色が濃い、口が強く乾く場合は脱水が疑われるため、早めに医療機関へ相談する。
成人は温かい塩水でうがいする。 うがいの後は飲み込まずに吐き出す。うまく吐き出せない子どもには行わせない。塩水うがいは痛みを和らげる補助であり、感染の原因を判別したり、気道の腫れを治したりする手段ではない。
冷たく軟らかい食品を選び、休息を取る。 硬い食品、熱い飲食物、たばこと受動喫煙はのどへの刺激になる。NHSは、十分な水分、冷たく軟らかい食品、禁煙、休息、成人の温かい塩水うがいを、のどの痛みを和らげる自宅対応として案内している。
市販薬と抗菌薬を自己判断で扱わない
鎮痛薬や薬用トローチは、年齢、妊娠・授乳、持病、常用薬によって使えない場合がある。購入前に添付文書を確認し、判断に迷えば薬剤師へ相談する。複数の総合感冒薬や鎮痛薬を重ねて使うと、同じ成分を重複して服用するおそれがある。
NHSは、のどの痛みには通常は抗菌薬を必要とせず、細菌感染が疑われる場合に限って処方すると案内している。抗菌薬を使うかは医師の判断による。処方後の使い方も医師または薬剤師の指示に従う。
家庭内で広げないための基本
感染症が原因の場合に備え、手洗いを行い、せきやくしゃみはマスク、ティッシュ、袖で覆う。発熱や強い倦怠感がある間は無理に出勤や登校をせず、使用済みのティッシュを捨てた後も手を洗う。厚生労働省は、インフルエンザなど急性呼吸器感染症の基本的な予防策として、手洗いとマスク着用を含む咳エチケットを挙げている。
子ども、妊婦、持病や常用薬のある人
子ども。 呼吸が苦しそう、唇が紫色、水分や唾液を飲み込めない、ぐったりして反応が鈍い場合は救急対応を急ぐ。うがい液を吐き出せない年齢では塩水うがいをさせず、窒息の危険がある小さく硬いあめも与えない。水分が取れない、尿が明らかに減った、症状が悪化する場合は小児科または耳鼻咽喉科へ相談する。
1歳未満の乳児には、蜂蜜や蜂蜜入りの飲料・食品を与えない。厚生労働省は、蜂蜜に混入する可能性があるボツリヌス菌が乳児の腸内で増えて毒素を出すため、通常の加熱をした蜂蜜も1歳未満には与えないよう注意している。
妊婦、授乳中の人。 水分補給や刺激を避ける対応は選択肢になるが、市販の鎮痛薬、総合感冒薬、薬用トローチ、漢方薬を使う前に妊娠週数や授乳状況を医師または薬剤師へ伝える。処方薬を自己判断で中止しない。厚生労働省事業として設置された国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」は、妊娠中、妊娠希望、授乳中の薬に関する相談を受け付けている。
慢性疾患、免疫機能の低下、常用薬がある人。 糖尿病、がん治療中、免疫を抑える治療中などでは、一般成人より早く医療機関へ相談する。市販薬と常用薬の相互作用がありうるため、お薬手帳を示して薬剤師または医師へ確認する。
妊婦、授乳中の人、慢性疾患や常用薬のある人に共通するのどの痛みの自宅対応をまとめた国内の公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。一般成人向けの手順を一律に当てはめず、症状と背景を医療者へ伝える。
改善しない、繰り返す場合の受診
救急の兆候がなくても、1週間たっても改善しない、何度も繰り返す、首や口の中にしこりがある、口内炎が3週間を超えて続く場合は医療機関へ相談する。高熱や悪寒、尿量の減少など脱水の兆候、免疫機能の低下がある場合は1週間を待たず早めに受診する。
よくある質問
のどの痛みで119番を呼ぶのはどのような時か
急な呼吸困難、唇が紫色、意識がはっきりしない場合だ。水や唾液を飲み込めない、よだれが出る、息を吸う時に高い音がする、重い症状が急速に悪化する場合も救急対応を急ぐ。
自宅では何をすればよいのか
呼吸と嚥下に異常がなければ、水分を少しずつ取り、冷たく軟らかい食品を選び、たばこの煙を避けて休む。成人は、飲み込まずに吐き出せることを条件に温かい塩水でうがいしてもよい。
強く痛み、口が開きにくい時はどうするのか
扁桃周囲膿瘍などを否定できないため、当日中を目安に耳鼻咽喉科へ相談する。呼吸しにくい、水や唾液を飲み込めない状態が加われば119番を優先する。
1歳未満の乳児に蜂蜜入りの飲み物を与えてよいのか
与えない。加熱した蜂蜜や、蜂蜜を含む飲料・食品も避ける。
市販薬はどのように選ぶのか
年齢、妊娠・授乳、持病、常用薬で適否が変わる。添付文書を確認し、複数製品の成分重複を避け、判断に迷えば購入前に薬剤師へ相談する。
出典・参考資料
- こんな時は迷わず119へ(厚生労働省)成人の急な息切れ・呼吸困難と、子どもの呼吸苦や顔色の異常など119番通報を急ぐ兆候
- 口・のどの症状(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)のどの痛みと呼吸困難、強い嚥下痛、含み声の受診目安
- 口腔・咽頭の病気(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)咽頭炎、急性扁桃炎、扁桃周囲膿瘍の症状と治療
- Sore throat(NHS)のどの痛みの自宅対応、薬剤師への相談、救急受診を急ぐ兆候
- ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。(厚生労働省)1歳未満の乳児と蜂蜜による乳児ボツリヌス症の危険
- 令和7年度 今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策(厚生労働省)手洗いとマスク着用を含む咳エチケット
- 妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター)妊娠中、妊娠希望、授乳中の薬に関する相談窓口