家庭血圧は、診察室の外で普段の生活に近い条件から得る血圧値だ。健診や受診時の1回だけでは緊張や移動、直前の飲食に左右されるため、日本の指針は複数日の家庭血圧を重視している。日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」は、上腕式血圧計で朝と晩に原則2回ずつ測り、7日間、最低でも5日間の平均を診断と降圧薬の効果判定に用いる

食卓の椅子に座り、上腕式血圧計と記録帳を使って家庭血圧を測る人

119番を急ぐ症状──血圧の数字だけを見ない

家庭血圧が高いときも、救急性は数字だけで決めない。突然、顔の片側がゆがむ、片腕に力が入らない、ろれつが回らない、言葉が出ない、これまでにない激しい頭痛が起きた場合は119番を急ぐ。国立循環器病研究センターは、顔・腕・言葉の異常を脳卒中の代表的な警告サイン「FAST」として示している。冷や汗を伴う強い胸痛や圧迫感、息苦しさ、15分以上続く胸部症状も同様で、同センターは急性冠症候群でみられる危険な症状として挙げている

こうした症状がなく、救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合は、実施地域で救急安心センター「♯7119」を利用する手もある。総務省消防庁によると、医師、看護師、救急救命士が緊急性を判断し、必要なら119番への転送やかけ直しを案内する。♯7119は全国一律の実施ではないため、居住地の対応地域と受付時間の確認が要る。

日本の家庭血圧は「朝晩7日間」

朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食と降圧薬の服用前に測る。夜は就寝前が基本になる。椅子に座って1〜2分安静にし、脚を組まず、腕を机に置いてカフを心臓の高さに合わせる。測定中は話さず、原則2回の値をどちらも記録する。厚生労働省の一般向け資料も、上腕式血圧計を使い、朝と夜に安静後2回測って平均を取る方法を示している。高い値を除いたり、納得する値が出るまで測り直したりすると記録が偏る。

血圧計はカフが腕の太さに合う上腕式を選び、取扱説明書どおりに使う。日本高血圧学会は、国内で販売される上腕式血圧計について、製造会社別の精度検定情報を2025年版として公開している。購入済みの機種が掲載されているかを確認し、診察時に家庭の機器を持参して医療機関の測定値と比べる方法もある。

台湾で呼ばれる「722」と日本の方法は似ているが、同一ではない。どちらも7日間、朝晩、各回2回を基本とする一方、日本の指針は初日の測定値を捨てるよう求めていない。日本と海外の指針を比較した2025年の解説は、日本が少なくとも5日、望ましくは7日の朝晩平均を使い、初日を除く規定は欧州高血圧学会の方式だと整理している。日本で記録を医師に示すなら、初日を含む全測定値を残す。

135/85は診断、125/75は治療目標

2025年指針が高血圧の目安とするのは診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上で、両者の判定が食い違う場合は家庭血圧を優先する。収縮期か拡張期のどちらか一方が基準以上なら、記録を持って医療機関で評価を受ける対象になる。ただし、家庭で1回だけ135/85を超えたことと、高血圧の診断は同じではない。

診断の目安と治療中の目標も分けて読む必要がある。日本高血圧学会は2025年指針で、治療中の降圧目標を診察室130/80mmHg未満、家庭125/75mmHg未満とした。これは医師が治療を調整するときの目標であり、125/75を超えた人を直ちに高血圧と診断する線ではない。薬を増減したり中止したりする判断は、家庭血圧の推移と副作用、併存疾患を医師が合わせて行う。

収縮期血圧と拡張期血圧を表示する上腕式血圧計と手書きの家庭血圧記録帳

白衣高血圧と仮面高血圧

診察室では高いのに家庭では基準を下回る状態が白衣高血圧だ。反対に、診察室では基準未満でも家庭で高い状態を仮面高血圧と呼ぶ。厚生労働省の資料は、仮面高血圧は家庭で測らなければ見つからず、白衣高血圧も将来、持続性高血圧へ移る場合があるため定期的な家庭測定が望ましいとしている

どちらも1回の診察室血圧と1回の家庭血圧を比べただけでは確定しない。朝晩の記録を7日間そろえ、受診時に測定時刻、服薬時刻、体調も伝える。差が続く場合は、医師が24時間自由行動下血圧測定(Ambulatory Blood Pressure Monitoring、ABPM)を組み合わせることがある。

妊娠中、子ども、持病や服薬がある人

ここまでの測定法と基準は成人一般を中心にした枠組みだ。妊娠中は妊娠高血圧症候群、小児は年齢や体格に応じた評価が必要で、成人の135/85mmHgを機械的に当てはめない。腎疾患、糖尿病、心血管疾患がある人や降圧薬を服用中の人も、目標値と測定時刻が個別に変わりうる。自己判断で服薬を変えず、主治医から指定された時刻と回数を優先する。

記録を診察につなげる

記録表には朝と夜を分け、測った値をすべて残す。7日間続けられない場合も、最低5日分を確保する。平均値に加えて、測定時刻、服薬時刻、睡眠不足、発熱など普段と違う条件を書き添えると、医師が変動の理由を検討しやすい。家庭血圧は自己診断の判決ではなく、診察室だけでは見えない時間帯を医療者と共有するための資料になる。

よくある質問

初日の値は捨てるのか
日本の2025年指針では捨てない。朝晩の全測定値を記録し、7日間、最低5日間の平均を使う。初日を除く方法は海外の一部指針で採用されるが、日本の標準とは異なる。

1回だけ家庭血圧が135/85mmHgを超えたら高血圧なのか
1回では決まらない。朝晩に原則2回ずつ測った複数日の平均を持って受診し、診察室血圧や病歴と合わせて評価を受ける。

手首式血圧計でもよいのか
日本の指針が基本とするのは上腕式だ。手首式を使う事情がある場合は、機器の位置や測定結果を医師に確認する。

家庭血圧が低ければ薬を減らしてよいのか
自己判断では減らさない。低い値が続く、立ちくらみや失神があるなどの変化を記録し、処方した医師に相談する。