超加工食品(Ultra-processed foods)は、工業的な加工を重ね、家庭の調理ではあまり使わない原料や添加物を組み合わせた食品群だ。冷凍、乾燥、低温殺菌、缶詰といった加工を受けた食品すべてを指すわけではない。「加工食品は避ける」という二分法では、冷凍野菜や牛乳、豆の缶詰まで清涼飲料や即席麺と同じ扱いになり、食事を選ぶ物差しとして粗すぎる。
NOVA分類──加工の有無ではなく目的を見る
NOVAはブラジル・サンパウロ大学の研究者らが整備した分類である。Monteiroらの2019年論文は、工業的な加工の程度と目的に沿って、食品を未加工・最小限加工食品、加工調理原料、加工食品、超加工食品の4群に分けている。
第1群は野菜、果物、豆、卵、肉、牛乳などと、冷凍、乾燥、粉砕、低温殺菌を施した食品だ。第2群は油、砂糖、塩など、調理に使う原料を指す。第3群は第1群の食品に塩、砂糖、油などを加えた缶詰、チーズ、焼きたてのパンなどである。第4群は食品由来の成分を分離・変性し、香料、着色料、乳化剤、甘味料などを組み合わせた工業的な製品で、清涼飲料、袋入りスナック、菓子、即席麺、再構成した肉製品などが例に挙がる。
したがって、缶詰やパンという名前だけでは群を決められない。製法と原材料が違えば分類も変わる。同論文は、高果糖コーンシロップ、水素添加・エステル交換油、水解たんぱく質のように家庭でほぼ使わない原料か、香味や見た目を整える添加物が原材料欄にあるかを実用的な識別点としている。原材料の数が多いだけで機械的に判定する仕組みではない。
約988万人のレビューが示したのは「関連」
2024年にBMJへ掲載された傘状レビューは、45件の統合解析、計988万8373人を含み、超加工食品への曝露が高い場合に45の健康指標のうち32項目で不利な関連を認めた。心血管疾患による死亡は摂取の高い群と低い群を比べた相対リスクが1.50、2型糖尿病は摂取量の区分が一段上がるごとの相対リスクが1.12だった。
数字の読み方には二つの留保がある。第一に、比較の単位は研究ごとに異なり、「超加工食品を一品食べると危険が50%増す」という意味ではない。第二に、統計的な確からしさを示すレビュー独自の分類と、研究設計を含めて評価するGRADEは別物だ。心血管疾患死亡の関連は前者で最上位に入ったが、GRADEではvery lowだった。2型糖尿病の用量反応はmoderateである。大半は観察研究で、食事以外の生活習慣による残余交絡も残るため、関連をそのまま因果関係へ読み替えられない。
介入試験の代表例は規模が小さい。米国国立衛生研究所の2019年試験は成人20人を代謝病棟に入れ、超加工食と未加工食を各2週間、好きな量だけ食べる条件で比較した。超加工食の期間は1日平均508キロカロリー多く摂取し、体重が平均0.9キログラム増え、未加工食の期間は平均0.9キログラム減った。短期の管理環境で得た結果であり、長期の食生活や幅広い年齢層を代表しない。
日本の数字に残る空白
日本人が食事の何割を超加工食品から取っているかについて、全国を代表する最新の公的な値は本稿の執筆時点で確認できていない。厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査は米、野菜、肉、菓子、嗜好飲料などの食品群で摂取量を集計しており、NOVAの4群では分類していない。海外の割合や、特定の年齢・地域を対象にした研究を日本全体の現在値として置くのは適切でない。
糖類にも同じ測定上の課題がある。日本人の食事摂取基準(2025年版)は、日本食品標準成分表に添加糖類と遊離糖類の値がなく摂取量の把握が難しいため、糖類の基準設定を見送った。一方、世界保健機関(WHO)は成人と子どもの遊離糖を総エネルギー摂取量の10%未満に減らし、5%未満なら追加の健康上の利点があるとしている。日本で基準が見送られたことは、甘味飲料の糖を考えなくてよいという意味ではなく、国内の摂取実態を精度よく測る基盤が足りないという判断だ。
加工肉の「グループ1」を危険度と読まない
加工肉は超加工食品と重なる場合があるが、二つの分類は別の問いに答えている。NOVAは加工の目的と程度を分ける。国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類は、ある要因ががんを引き起こすという証拠の強さを評価する。
WHOのQ&Aは、加工肉を発がん性について十分な証拠があるグループ1とし、毎日50グラム多く食べる場合に大腸がんの相対リスクが約18%高いとの推計を示している。グループ1は危険の大きさを並べる順位ではない。この評価を清涼飲料や菓子を含む超加工食品全体へ広げることもできない。
減らす時は原材料欄と栄養成分表示を分けて見る
NOVA分類は食事全体を見直す補助線で、個々の製品の栄養価を順位づける制度ではない。まず原材料欄で第4群に当たりそうかを見て、次に栄養成分表示で熱量、脂質、炭水化物、食塩相当量を確認する。この二段階なら、「超加工ではないから量を問わない」「超加工だから一口も食べない」という両極端を避けやすい。日本では容器包装された加工食品と添加物に、食品表示基準にもとづく栄養成分表示が義務づけられている。
優先順位は、日常的に重なる品目から置き換えることだ。甘味飲料を水や無糖の飲み物へ、袋入り菓子の頻度を下げて果物などへ、即席の一品だけの食事を主食・主菜・副菜の組み合わせへ寄せる。厚生労働省の健康情報は、菓子や嗜好飲料を一律に禁じず、食事バランスガイド上の目安を1日200キロカロリーとして、一定期間の食事全体で調整する考え方を示している。
子どもは間食が不足する栄養を補う機会になり、妊娠中や高齢期も必要なエネルギーと栄養素が異なる。糖尿病、腎臓病、食物アレルギーがある人や治療中の人は、一律の置き換えをせず、主治医や管理栄養士と食事の条件を確認する必要がある。
よくある質問
冷凍食品と缶詰はすべて超加工食品なのか
違う。冷凍しただけの野菜は第1群、豆や魚に塩や油を加えた缶詰は第3群になりうる。製品名ではなく、加工の目的、製法、原材料で判定する。
原材料が長ければ第4群なのか
長さだけでは決まらない。家庭でほぼ使わない食品由来物質や、香味・色・食感を整える添加物が識別の手がかりになる。栄養価の評価には栄養成分表示も併せて読む必要がある。
超加工食品を完全にやめれば病気を防げるのか
そうは断定できない。大規模レビューの中心は観察研究で、示したのは高い摂取と複数の健康転帰との関連である。短期の介入試験は摂取エネルギーと体重への影響を示したが、20人を各食事2週間追った結果に限られる。
出典・参考資料
- Ultra-processed foods: what they are and how to identify them(Public Health Nutrition(Monteiro et al.))NOVAの4群、超加工食品の定義、原材料表示から識別する際の特徴を示す論文
- Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review of epidemiological meta-analyses(BMJ(Lane et al.))45件の統合解析と約988万人を対象に、健康転帰との関連と根拠の質を評価した2024年の傘状レビュー
- Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain(Cell Metabolism(Hall et al.))成人20人を代謝病棟で観察した無作為化比較試験。摂取エネルギーと体重の変化を報告
- 日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント(厚生労働省)添加糖類と遊離糖類の摂取把握が難しく、糖類の基準設定を見送った理由を示す公式資料
- 令和6年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)国内調査が独自の食品群分類を用い、NOVA分類別の集計ではないことを確認する資料
- 栄養成分表示を表示される方へ(消費者庁)容器包装された加工食品に義務づけられる栄養成分表示の公式案内
- Information note about intake of sugars recommended in the WHO guideline for adults and children(World Health Organization)遊離糖を総エネルギー摂取量の10%未満とする勧告と、5%未満への追加的な提案
- Cancer: Carcinogenicity of the consumption of red meat and processed meat(World Health Organization)IARCの加工肉評価、グループ分類の意味、1日50グラム当たりの大腸がんリスク推計を説明するQ&A
- お菓子や間食の取り入れ方(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)菓子と嗜好飲料を食事全体の中で扱う日本の公的な栄養情報