健診で血圧、血糖、LDLコレステロールや中性脂肪を指摘されたとき、優先する食事調整は検査項目によって変わる。高血圧では食塩、高血糖では食事量と配分、脂質異常症では脂肪の種類や過剰なエネルギー摂取を分けて見る必要がある。
共通する土台は、主食・主菜・副菜をそろえ、甘い飲料や脂身の多い肉、塩分の多い汁と加工食品に偏らないことだ。外食やコンビニ食でも、料理名の印象ではなく栄養成分表示と組み合わせから判断する。
胸痛・片まひ・意識障害は食事より119番
突然、顔の片側がゆがむ、片腕に力が入らない、ろれつが回らない、言葉が出ないといった症状があれば119番を急ぐ。国立循環器病研究センターは、顔・腕・言葉の異常を脳卒中の警告サイン「FAST」として示し、発症時刻を確認して救急車を呼ぶよう案内している。冷や汗を伴う強い胸痛や圧迫感、息苦しさ、15分以上続く胸部症状も同様で、同センターは急性冠症候群が疑われる危険な状態として挙げている。
血糖を下げる薬を使っている人の意識がはっきりせず、飲み込めない場合は、食べ物や飲み物を無理に口へ入れず救急車を呼ぶ。糖尿病情報センターは、重症低血糖で無理にブドウ糖を飲ませると誤嚥や窒息の原因になるとしている。
共通の土台──主食・主菜・副菜をそろえる
厚生労働省の糖尿病向け資料は、1回の食事で主食、主菜、副菜を組み合わせ、年齢、目標体重、活動量に合うエネルギー量を取る考え方を示す。主食だけの麺やおにぎりで済ませず、魚、肉、大豆製品、卵などの主菜と、野菜、きのこ、海藻を使う副菜を組み合わせる。
「塩・油・糖を減らす」という標語だけでは、どの検査値に何を優先するかが分からない。食塩相当量、食事全体の量、炭水化物の配分、飽和脂肪酸の多い食品を別々に確認する方が、次の受診で食事記録と検査値を照合しやすい。
血圧──食塩は一般目標と治療目標を分ける
厚生労働省の資料は、成人一般の食塩目標量を男性1日7.5g未満、女性6.5g未満とし、高血圧の人には6g未満を示している。弁当の表示だけを見て終えず、みそ汁、麺の汁、漬物、たれ、ドレッシングを含む1日の合計で見る。麺類は汁を残し、卓上調味料は味を確かめてから使う。
野菜や果物に含まれるカリウムは減塩と組み合わせる選択肢になるが、腎機能が低下した人には制限が必要な場合がある。腎疾患を指摘されている人は、野菜や果物を増やす前に主治医へ確認する。
血糖──甘い物だけを外さず、量と時刻を見る
血糖への対応は、菓子や砂糖だけを数える作業ではない。ご飯、パン、麺などの主食量を含む食事全体を見て、3食の量が一方へ偏らないようにする。清涼飲料水や果汁飲料は糖質が吸収されやすいため、日常の水分は水や無糖茶を基本にする。
主食を急にゼロへ近づける方法にも注意が要る。糖尿病情報センターは、極端な糖質制限について効果と安全性が証明されておらず、脂質やたんぱく質へ偏るおそれがあるとして勧めていない。血糖を下げる薬を使う人は、欠食や主食量の大幅な変更を先に主治医や管理栄養士へ伝える。
LDLと中性脂肪──「油抜き」では見分けられない
LDLコレステロールが高い場合は、肉の脂身、バター、ラード、クリーム、加工肉、脂肪の多い菓子に偏っていないかを確認する。魚、大豆製品、脂身の少ない肉へ主菜を入れ替え、未精製穀類、野菜、海藻、きのこを組み合わせる。厚生労働省の脂質異常症向け資料は、飽和脂肪酸の多い食品を控え、魚、大豆、野菜、海藻、未精製穀類を組み合わせた減塩の食事を示している。
中性脂肪が高い場合は、脂質だけを見ず、食べ過ぎ、甘い飲料、果汁飲料、飲酒も確認する。同じ「血中脂質の異常」でも、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪のどれが外れたかで食事の焦点は同じではない。
コンビニと外食──表示単位から合計する
消費者庁の資料によると、容器包装入り加工食品の栄養成分表示では熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目が原則として義務表示で、100g、100mL、1個、1食など表示単位は商品により異なる。1袋を食べるのに表示が100g当たりなら、内容量に換算する。弁当、総菜、汁物、別添調味料を一緒に取る場合は、それぞれの数値を足す。
組み合わせは、主食、主菜、副菜の三つに分ける。おにぎりやパンだけなら、魚・大豆・脂身の少ない肉を使う主菜と、味付けの濃くない野菜の副菜を補う。麺とおにぎりのように主食が重なる組み合わせ、揚げ物と加工肉が重なる組み合わせは、量と脂質、食塩相当量が増えやすいため表示を比べる。
糖尿病情報センターのコンビニ献立資料も、主食・主菜・副菜を組み合わせ、栄養成分表示を確認し、市販総菜の塩分に注意する手順を示している。ただし、掲載献立は1600、1800、2000kcalの例であり、自分の目標量をそのまま示すものではない。
自炊は毎日でなくてよい
自宅で用意する回数を増やすなら、味付け前の冷凍野菜、豆腐、魚、脂身の少ない肉、無塩の主食を数食分に分けると、食塩と主食量を調整しやすい。調味料は鍋全体へ先に入れず、食べる分に計量して加える。作り置きと市販品を併用する日も、1食を主食・主菜・副菜に分け、足りない区分だけを補う。
腎疾患、服薬、妊娠、小児、高齢者は別に考える
糖尿病情報センターは、腎症の病期により食事療法が変わり、たんぱく質やカリウムの調整を主治医や管理栄養士と決めるとしている。透析中の人や、医療機関から食事・水分の個別指示を受けている人も、成人一般の減塩やカリウム摂取を自己判断で強めない。
血糖を下げる薬を使う人は、欠食や急な糖質制限で低血糖が起きる場合がある。食事量を変える際は薬の調整が必要かを処方医へ確認し、薬を自分で減らしたり中止したりしない。
妊娠中、小児、高齢者では、成人一般の分量をそのまま当てはめない。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」も、妊婦・授乳婦、乳児・小児、高齢者を対象特性ごとの別章で扱っている。妊娠経過、成長、食欲低下や筋力低下を含め、医師や管理栄養士と食事量を決める。
高血圧、糖尿病、脂質異常症を併せ持つ人に、コンビニ各社の商品名まで指定した全国一律の公的な献立資料は、本稿執筆時点で確認できていない。特定商品を「安全」と決めず、今食べる量に換算した栄養成分表示と、医療機関から示された個人目標を照らし合わせる必要がある。
よくある質問
最初に一つだけ変えるなら何を見るか
汁物、麺の汁、漬物、たれを含めた食塩相当量を確認し、主食だけで終わる食事に主菜と副菜を補う。甘い飲料を日常的に飲んでいる場合は、水か無糖茶へ替える。
高血糖なら主食を抜くべきか
一律には抜かない。適切な主食量は目標体重、活動量、治療内容で変わる。血糖を下げる薬を使う人は低血糖を避けるため、主食量を大きく変える前に主治医や管理栄養士へ相談する。
コンビニで「健康そうな商品名」を選べばよいか
商品名だけでは判断しない。表示が1食当たりか100g当たりかを確かめ、実際に食べる量へ換算し、同時に取る汁物や調味料まで合計する。
健診後は食事だけで様子を見てよいか
健診で指示された受診区分を優先する。食事記録と商品ラベルの写真を残し、検査結果と一緒に医師や管理栄養士へ示すと、一般論ではなく本人の治療内容に合わせて調整しやすい。
出典・参考資料
- 高血圧(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)成人一般と高血圧の食塩目標、減塩の方法、カリウム摂取時の腎疾患への注意
- 糖尿病の食事(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)適正エネルギー、主食・主菜・副菜、食物繊維、清涼飲料水、食事時刻の考え方
- 脂質異常症の食事(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)飽和脂肪酸、加工肉、魚、大豆、未精製穀類、高トリグリセライド血症への食事対応
- 糖尿病の食事のはなし(献立編)(国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター)コンビニ食での組み合わせと栄養成分表示、極端な糖質制限の限界
- 栄養成分表示を活用しよう①(消費者庁)義務表示5項目、表示単位、食塩相当量の読み方
- 脳卒中(国立循環器病研究センター)脳卒中を疑うFASTと救急要請
- 急性冠症候群(国立循環器病研究センター)冷汗を伴う胸痛、圧迫感、15分以上続く症状
- 低血糖(国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター)意識障害を伴う重症低血糖の対応と食事・薬の調整
- 腎症(国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター)腎症の病期別食事療法、たんぱく質とカリウムの調整
- 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(厚生労働省)妊婦・授乳婦、乳児・小児、高齢者を分けた対象特性別の基準