人は、手足から熱を逃がして深部体温が下がり始めると眠りに入りやすくなる。猛暑の夜は、この生理的な変化を妨げない寝室をつくると同時に、室内で起きる熱中症を防ぐ必要がある。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、寝室を暑すぎず寒すぎない温度に保ち、就寝の約1~2時間前に入浴すると入眠しやすくなるとしている。同ガイドは全国一律の冷房設定温度を示していない。冷房の表示だけを基準にせず、実際に眠る場所の温度と体調を確かめるのが出発点だ。
救急要請が必要な熱中症の兆候
暑い寝室で、呼びかけへの反応がおかしい、返事がない、けいれんがある、手足を動かしにくいといった症状が出た場合は、119番通報して涼しい場所へ移し、衣服を緩めて救急隊の到着前から体を冷やす。反応が悪い人や吐いている人には、誤嚥のおそれがあるため無理に水を飲ませない。環境省の熱中症環境保健マニュアルは、自力で水分を取れない場合、緊急で医療機関へ搬送することを最優先としている。
冷房──設定値ではなく寝床の室温を見る
冷房の設定温度と室温は同じとは限らない。部屋の断熱性、窓からの日射、室外機や室内機の状態、温度センサーの位置で差が出る。環境省は、冷房のセンサーが示す温度と実態が異なる場合があるため、人がいる場所で気温を測るよう求めている。温度計は冷房の吹き出し口ではなく、寝床に近い位置で確認する。
環境省の熱中症環境保健マニュアルは、人がいる場所の室温を測り、28度を超えないよう調整することを熱中症予防の目安としている。これは睡眠に最適な温度を示す数字ではない。暑さや冷えの感じ方、湿度、寝具、年齢、健康状態に合わせ、暑さで目が覚めず、冷気が体へ当たり続けない範囲に調整する。
タイマーを使う場合も、切れた後に室温がどこまで上がるかを確認する。室温が再び上がって目が覚めるなら、停止時刻を延ばすか、弱い運転を続ける。電気代を理由に危険な暑さを我慢する判断は避ける。
扇風機──冷房の空気を循環させる
環境省は、冷気が部屋の下にたまらないよう、冷房と扇風機を組み合わせて空気を循環させる方法を示している。風を壁や天井へ向ければ、寝床の一部だけが冷える状態を避けやすい。日中はカーテンやブラインドで日射を遮り、夜まで室内に蓄える熱を減らす。
冷房がない部屋では、屋外のほうが涼しい時間に窓を開け、向かい合う開口部から風を通す。外気も高温なら、扇風機だけに頼らず、冷房のある場所へ移る。環境省の同マニュアルは、気温が体温より高い場合、扇風機が熱風を送り逆効果になるおそれを指摘している。
入浴──就寝の1~2時間前を目安に
就寝直前に体の表面だけを急に冷やすより、入浴後の放熱を利用する考え方が公的な睡眠資料に沿う。厚生労働省の睡眠ガイドは、就寝の約1~2時間前の入浴が熱放散を促す一方、極端に熱い湯は交感神経の活動を高め、入眠を妨げる可能性があるとしている。湯温を上げるほど眠りやすくなるわけではない。
高齢者は別の安全基準も確認する。消費者庁は、高齢者の入浴事故を防ぐ目安として湯温を41度以下、湯につかる時間を10分までとし、飲酒後や医薬品の服用後は入浴を避けるよう求めている。浴槽から急に立ち上がらず、同居者がいる場合は入浴前に声をかける。
寝具と冷却用品──体感と室温を分けて考える
薄手の寝衣、掛け物の枚数、敷き寝具の蒸れにくさは、暑さの感じ方を変える。冷感の枕や敷きパッドは接触した部分の不快感を減らす場合があるが、製品の表示だけで室温や熱中症リスクは判断できない。冷却用品を使っていても、寝床付近の温度を測り、必要な冷房を続ける。
高齢者、子ども、妊娠中の人、持病がある人
環境省は、高齢者、子ども、持病がある人、障害がある人などを熱中症になりやすい人として挙げ、周囲による見守りと屋内での適切な冷房使用を求めている。本人が暑いと訴えなくても、家族や介助者が室温を確認する。乳幼児を冷房のない部屋に一人で残さない。
妊娠中の人、心不全や腎臓病などの持病がある人、常用薬がある人は、水分の取り方や入浴条件を成人一般の方法から自己判断で変えず、主治医に確認する。高齢者や小児にも、同じ湯温、冷房、寝具を一律に当てはめない。
暑さ以外の不眠を見落とさない
寝室を調整しても、眠れない、途中で何度も目が覚める、眠っても疲れが取れない、日中に強く眠くなる状態が続く場合は、暑さ以外の原因も考える。厚生労働省の睡眠ガイドは、睡眠環境や生活習慣を見直しても睡眠休養感が改善しない場合、睡眠障害が潜んでいないか医師へ相談するよう示している。
よくある質問
冷房は28度に設定すればよいのか
28度は環境省が熱中症予防で示す室温の上限目安で、冷房機器の設定値ではない。寝床付近の温度を測り、湿度、日射、寝具、体調に合わせて調整する。
扇風機だけで一晩過ごしてよいのか
外気が室内より涼しく、風を通せる条件では選択肢になる。室内が体温を上回るほど高温なら熱風を送るおそれがあるため、冷房のある場所へ移る。
冷房のタイマーは何時間にすべきか
全国共通の時間は決められない。タイマーが切れた後の寝床付近の室温を確認し、暑さで目が覚める、室温が上がり続ける場合は運転方法を見直す。
眠る直前に熱い風呂へ入ればよいのか
厚生労働省の目安は就寝の約1~2時間前である。極端に熱い湯は入眠を妨げる場合があり、高齢者は消費者庁の入浴事故防止策も優先する。
出典・参考資料
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)深部体温と入眠の関係、寝室の温度、就寝前の入浴を解説する
- 熱中症環境保健マニュアル2022・熱中症になったときには(環境省)熱中症を疑う症状、救急要請、冷却と水分摂取の判断を示す
- 熱中症環境保健マニュアル2022・日常生活での注意事項(環境省)室温測定、冷房と扇風機の併用、遮光など住まいの対策を示す
- 高齢者の事故を防ぐために(消費者庁)高齢者の入浴時の湯温、時間、服薬後などの注意点を示す
- 熱中症特別警戒情報とは(環境省)高齢者、子ども、持病がある人のリスクと涼しい環境の確保を示す