カフェイン、アルコール、夜間の強い光は、同じ「眠りが浅い」という訴えにつながっても、睡眠へ作用する時間と仕組みが異なる。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、カフェインは摂取量と時刻、酒は睡眠後半、スマートフォンなどの光は体内時計への影響を分けて説明している。午後の飲み物、寝酒、寝床での画面を順に確認すると、見直す対象が明確になる。

生活習慣の見直しより受診を先にする兆候

厚生労働省のe-ヘルスネットは、十分に眠っているはずなのに日中の強い眠気があり、居眠りで学業や仕事に支障が出る場合は、医療機関で必要な検査・治療を受けることが大切だとしている。運転中や危険作業中に眠気を感じた場合は、その場で運転や作業を止めて安全を確保する。十分な睡眠時間を取っても強い眠気が続く、居眠りで事故を起こしかけた、睡眠中の呼吸停止を繰り返し指摘された場合は、三つの習慣だけを原因と決めず早めに医療機関へ相談する。呼吸停止や大きないびきがある場合に確認する検査と受診の目安は、睡眠時無呼吸の記事で整理している。

「深睡眠を奪う」と一括りにしない

厚生労働省のガイドでは、カフェインは深い睡眠の減少や中途覚醒、アルコールは睡眠前半の深い睡眠の増加と後半の悪化、夜間の強い光は睡眠・覚醒リズムの遅れと結び付けられている。三つがすべて同じ形で深睡眠を減らすわけではない。朝の疲労感だけから、どの習慣が原因か、どの睡眠段階が変わったかは判定できない。

カフェイン──量と「最後に取った時刻」を見る

厚生労働省のガイドは、日本人のカフェインの血中半減期を3~7時間とし、総摂取量を減らすとともに夕方以降のカフェイン含有食品・飲料を控えるよう示している。半減期は、血液中の濃度が半分になるまでの時間である。同ガイドが示す半減期5時間の例では、19時に100mgを取ると24時にも50mg相当が体内に残る。

同ガイドは成人の摂取量について、1日400mgを超えないよう示している。ドリップコーヒーなら約700ccが400mgの目安だが、400mgまでなら睡眠に影響しないという境界ではない。コーヒーのほか、紅茶、緑茶、ウーロン茶、コーラ飲料、エナジードリンク、一部の清涼飲料にもカフェインが入る。寝つきや中途覚醒が気になる場合は、銘柄名ではなく1日の合計と最後に取った時刻を記録し、夕方に取っている分から時間を早める。

午後の机に置かれたコーヒーカップ(イメージ)

アルコール──寝つきと睡眠後半を分ける

厚生労働省のガイドは、アルコールが一時的に寝つきを促し、睡眠前半では深い睡眠を増やす一方、後半の眠りを顕著に悪化させ、飲酒量が増えるほど中途覚醒も増えると説明している。このため、早く眠れたという感覚だけでは、その夜の睡眠全体を評価できない。飲酒した夜の総睡眠時間が一律に何分短くなるかを示す日本の公的な数値は、本稿の執筆時点で確認できていない。

寝つくための飲酒を繰り返すと、耐性や依存が生じ、酒がないと眠れない状態へ進む場合がある。毎晩の寝酒がやめられない、量が増えている、酒を抜くと不眠が強まる場合は、自己流で中止手順を決めず医療機関へ相談する。アルコールは閉塞性睡眠時無呼吸を悪化させる可能性もある。

夜間の光──青色だけでなく明るさと時刻を見る

厚生労働省のガイドは、就寝の約2時間前から分泌が始まるメラトニンが照明やスマートフォンの強い光で抑えられ、睡眠・覚醒リズムが遅れて入眠を妨げる可能性を示している。同ガイドは体内時計に関わる光受容細胞の感受性のピークを460~480nm付近とする。これは光源や測定条件を離れて、端末ごとの影響量へ換算できる数値ではない。

端末の影響は波長だけでは決まらない。画面の明るさ、見る時刻、顔との距離、使う時間が重なる。厚生労働省が示す基本策は、日中にできるだけ日光を浴び、就寝前は明るい光を避け、スマートフォンやタブレットを寝室へ持ち込まず、寝室を暗くすることだ。夜間モードやブルーライトカット眼鏡だけで同じ対策になるとは、同ガイドから確認できない。

暗い部屋でスマートフォンの画面を見つめる人(イメージ)

1週間の記録で時刻と翌日の状態を見る

厚生労働省の「睡眠チェックシート」は、就床・起床時刻、実際に眠った時間、起床時の休養感を1週間記録し、寝床での端末使用、寝酒、1日400mg以上と夕方以降のカフェイン摂取を別に確認する形になっている。最後にカフェインを取った時刻と量、飲酒の有無と量、画面を閉じた時刻も同じ日付で残す。記録は原因を確定する検査ではないが、生活との時間関係を受診時にも伝えやすくなる。

カフェインは夕方の分を前へ移し、酒を入眠手段にせず、端末は寝室の外へ置く。十分な睡眠時間そのものを削って三つの影響を比べる方法にはしない。

三つを整えても、十分な睡眠機会があるのに寝つけない、夜中に何度も目が覚める、日中の生活に支障が出る状態が続く場合は、睡眠衛生だけで治療を完結させない。成人の慢性不眠で使われる不眠症の認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia、CBT-I)は、一般的な生活習慣の助言とは別の治療である。

子ども・妊婦・高齢者・持病や常用薬がある人

厚生労働省の睡眠ガイドは、子どもは成人より少ないカフェイン量で影響を受け、高齢者は代謝能力が低下するため少量でも睡眠へ影響する可能性があるとする。妊婦には潜在的なリスクを踏まえ、カフェインを可能な限り控えるよう案内している。成人一般の1日400mgを、この三者へそのまま当てはめない。子どもの端末は電源を切り、寝室とは別の場所へ置く。

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、20歳未満の飲酒が法律で禁じられていることを確認し、妊娠・授乳期は飲酒を避け、療養中や服薬後は飲酒の可否を主治医へ尋ねるよう示している。持病や常用薬がある人は、飲酒の可否と、カフェインについて個別の制限が必要かを医師または薬剤師へ確認する。

よくある質問

午後にコーヒーを飲む人は全員眠れなくなるのか
一律ではない。日本人の血中半減期は3~7時間と幅があり、量、就寝時刻、年齢、体質で影響が変わる。厚生労働省は「正午以降は禁止」ではなく、夕方以降を控えるよう示している。眠りに悩みがあれば最後の一杯を早め、経過を記録する。

酒で早く眠れれば睡眠に役立ったと考えてよいのか
寝つきだけでは判断できない。酒は一時的に入眠を促す場合があるが、睡眠後半の質を悪化させ、量が増えるほど中途覚醒が増える。寝酒を睡眠対策にしない。

スマートフォンを夜間モードにすれば寝床で使ってよいのか
夜間モードだけで影響が消えるとは確認されていない。色調に加え、明るさ、時刻、距離、使用時間が関わる。画面を暗くするだけで終えず、端末を寝室の外へ置く。

三つを見直しても眠気が残る場合はどうするのか
睡眠時間、いびきや呼吸停止、脚の不快感、気分、持病、服薬など別の要因を確認する段階である。強い眠気が学業、仕事、運転に影響する場合は受診を優先する。