プロバイオティクス(probiotics)は、適切な量を摂取したときに健康上の利益をもたらす生きた微生物を指す。製品を比べる起点はパッケージ上の総菌数ではなく、どの菌株を、どの目的で、どの量使った人体試験があるかである。

菌落形成単位(colony-forming unit、CFU)は増殖可能な微生物を数える単位だ。数字が大きければ効果も一律に大きくなるという尺度ではない。発酵食品も生きた微生物を含む場合があるが、製品自体に健康上の利益を示す根拠がなければ、科学的な定義上のプロバイオティクスとは区別される。

症状があるなら購入判断より受診を優先

プロバイオティクスは、腹痛や下痢の原因を自分で診断する道具ではない。厚生労働省は、突然または持続する激しい腹痛、吐血、血便、黒い便を成人が呈した場合、迷わず119番を利用する症状として挙げている。こうした兆候があれば、食品を試して経過を見る場面ではない。

免疫機能が著しく低下している人、重い基礎疾患がある人、入院中の人、乳幼児、妊娠・授乳中の人、常用薬がある人は、摂取前に医師や薬剤師へ確認する必要がある。厚生労働省eJIMは、多くの用途で有用な菌の種類や最適量が未確定であり、免疫機能が弱い患者を安全性評価から分けて考える必要があると説明している。消費者庁も、健康食品と医薬品の自己判断での併用を避け、不調時は医師・薬剤師に相談するよう案内する。

菌数──大きさより菌株と実証用量

世界消化器病学会(World Gastroenterology Organisation、WGO)の2023年指針は、必要なCFUに共通値を置いていない。WGOが示す例では、市販品の多くが1回10億〜100億CFUである一方、Bifidobacterium longum subsp. longum 35624は過敏性腸症候群の症状を対象に1日1億CFUで検討され、別の製品では1回3000億〜4500億CFUを1日3回使った試験もある。これは購入量の推奨ではなく、有効量が菌株と製品で大きく異なることを示す比較だ。

「1000億CFU配合」という総量だけでは、各菌株が何CFU含まれるのか、表示する目的と同じ条件の人体試験があるのかは分からない。高菌数を理由に摂取目安量を超える判断も根拠を欠く。消費者庁は、保健機能食品について、1日当たりの摂取目安量を超えても高い効果が得られるものではないとしている。

菌株によって実証された生菌数が異なることを示す図

同じ菌種でも菌株が違えば同じ根拠にはならず

菌株は、属、種に続く英数字などで識別される。Lacticaseibacillus rhamnosusという種名が同じでも、末尾の菌株番号が違えば同一の試験結果を共有するとは限らない。WGO指針も、健康上の利益を特定の菌株または菌株の組み合わせと、その試験で用いた量に結び付ける方法を重視する。

表示を見る際は、菌株番号まであるか、その菌株を使った人体試験があるか、試験の対象者と目的が自分の確認したい表示に対応するかを分けて読む。「乳酸菌」「ビフィズス菌」といった広い名称だけでは、該当する試験を特定できない。複数菌株をまとめた総CFUも、菌株別の配合量がなければ個々の試験との照合は難しい。

期限末の生菌数と保存条件を確認

生きた微生物は保管中に減少しうるため、製造時の数字と賞味期限が近づいた時点の数字は同じとは限らない。国際プロバイオティクス・プレバイオティクス科学協会(ISAPP)は、菌株ごとの名称、賞味期限末の最低生菌数、根拠となる摂取量、保存条件、事業者の連絡先をラベルで確かめる項目として示している

ただし、これは科学的な選択基準であり、日本の一般食品すべてに菌株別CFUの記載を義務づけるルールではない。表示が「製造時○個」だけなら期限末の量は読み取れず、複数菌株の総数だけなら菌株別の量は判断できない。冷蔵の要否は一律ではなく、パッケージに記載された保存方法に従う。常温保存が可能という性質は、健康上の利益の強さを意味しない。

プロバイオティクス製品の菌株名、期限末の生菌数、保存条件を読む図

日本の表示──トクホと機能性表示食品を区別

日本で機能を表示する食品には、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品がある。消費者庁によると、トクホは製品ごとに有効性と安全性の審査を受けて許可される一方、機能性表示食品は事業者の責任で科学的根拠などを届け出る仕組みである。機能性表示食品を「国が効果を認めた製品」と読むのは正確ではない。

機能性表示食品の安全性と機能性の根拠、生産・製造や品質管理の情報は、販売前に消費者庁へ届け出られ、公開情報から確認できる。パッケージでは届出番号、機能性関与成分、届出表示、1日当たりの摂取目安量、注意事項を対応させる。広告の「腸活」「すっきり」といった表現だけで判断せず、届出表示が対象とする人と機能を読む。

保健機能食品は医薬品とは異なり、疾病の治療や予防を目的に摂取するものではない。一般食品として売られる製品を菌株と実証用量まで横断比較した国内の公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。公的な一覧がない部分は、メーカーの問い合わせ窓口に菌株別の量、期限末の保証、根拠となる人体試験を尋ね、回答資料の対象製品と対象者を照合するほかない。

購入前に照合する6項目

確認の順番は次の通りだ。①菌株番号まで表示されているか、②表示する機能と同じ菌株・対象者・目的の人体試験があるか、③1日当たりの摂取目安量が試験で使われた量と対応するか、④CFUは製造時ではなく賞味期限末まで保証されるか、⑤保存条件と期限を守れるか、⑥日本の表示区分と届出番号を確認できるか、である。

消費者庁は、広告や体験談だけを信用せず、成分の安全性と有効性、個別の含有量、製造者と問い合わせ先を確認するよう勧めている。菌株や期限末の生菌数が見当たらない場合、記載がない事実と効果がないという判断は別である。確認に必要な情報が不足している製品として扱うのが妥当だ。

よくある質問

CFUは多いほどよいのか。
一律には比較できない。WGO指針は、必要量を菌株と製品ごとの人体試験に基づいて決めるとしている。総CFUが大きくても、目的に対応する菌株と量が不明なら根拠との照合はできない。

「乳酸菌」と書いてあれば菌株は分かるのか。
分からない。乳酸菌は広い呼び方であり、属名と種名、菌株番号まで確認しなければ特定の人体試験と結び付けにくい。

常温保存できる製品のほうが優れているのか。
保存のしやすさと健康上の利益は別の評価軸だ。記載された保存条件を守り、賞味期限末まで保証される生菌数と、対象菌株の人体試験を確認する。