生理痛は、月経の直前から月経中にかけて現れる下腹部痛や腰痛などを指す。痛みが強く日常生活に支障を来す状態は月経困難症であり、原因となる病気がない機能性月経困難症と、子宮内膜症や子宮筋腫などに伴う器質性月経困難症に分かれる。

普段と同程度の痛みで全身状態が安定していれば、腹部を温める、温かい風呂やシャワーを使う、無理のない範囲で体を動かすといった非薬物対応が選択肢になる。ただし、急激な悪化や大量出血を「いつもの生理痛」とみなして自宅で様子を見るのは危険だ。

先に確認する救急の兆候

下腹部や骨盤の痛みが激しく、さらに悪化している、動いたり腹部に触れたりすると強く痛む、大量の性器出血がある、息が苦しい、意識が混乱する、めまいや失神がある場合は119番へ連絡する。自分で車を運転して受診しない。英国の国民保健サービス(NHS)は、悪化する激しい骨盤痛、大量出血、呼吸困難、失神や意識の変化を直ちに救急部門へ向かう兆候としている

発熱や悪寒、繰り返す嘔吐、普段と違う帯下や性器出血、排尿時痛を伴う場合は、当日中を目安に医療機関へ相談する。妊娠中または妊娠の可能性がある人の下腹部痛も、一般の生理痛として扱わない。月経が遅れた後に不正出血と下腹部痛が重なる場合は、早期の評価が要る。NHSは、月経の遅れ、不正出血、腹部または骨盤の痛みが重なる場合、異所性妊娠の可能性があるため速やかな確認を求めている

婦人科の診察室へ続く廊下と扉(イメージ)

日常生活を妨げる痛みは婦人科へ

救急の兆候がなくても、学校や仕事を休む、横にならなければ過ごせない、毎月の生活に支障が出るほどの痛みは受診の対象になる。月経のたびに痛みが強くなる、月経が終わっても痛む、経血量が増えた、周期が不規則になった、性交時や排尿・排便時にも痛む場合も婦人科で相談する。

厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」は、強い腹痛や腰痛で日常生活に支障を来す状態を月経困難症とし、子宮内膜症や子宮筋腫が原因となる場合があるため、異常を感じた段階で婦人科・産婦人科を早めに受診するよう案内している。痛みが始まる時期、続いた日数、出血量の変化、生活への影響を月経周期と一緒に記録しておくと、診察で経過を伝えやすい。

日本産婦人科医会は、機能性月経困難症では月経初日から2日目ごろに痛みが強い一方、器質性月経困難症には子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの原因があり、思春期でも器質的な病気を見逃さない対応が必要だとしている。年齢が若いことだけを理由に、強い痛みを放置する根拠にはならない。

温める、休む、軽く動く

救急の兆候がなく、普段から経験している生理痛であれば、温かい風呂やシャワー、腹部を温める器具、腹部や背中の軽いマッサージを試す余地がある。歩行、ヨガ、水泳、自転車などの軽い運動も選択肢だが、痛みが増す場合は中止して休む。NHSは生理痛の自宅対応として、温かい入浴、布で包んだ湯たんぽや温熱パッド、腹部と背中のマッサージ、ヨガや歩行などの軽い運動を挙げている

温熱は心地よい範囲にとどめ、製品の取扱説明書にある加熱方法、用途、使用時間を優先する。温熱器具を皮膚へ直接当て続けず、眠る時は使わない。熱い、ひりつく、皮膚が赤いと感じたら直ちに外す。

消費者庁は、湯たんぽを長時間体に接触させず、就寝時に布団を温める場合は就寝前に取り出し、製品ごとに指定された加熱方法と時間を守るよう注意している。布やカバーを使っていても、同じ部位を長時間温めれば低温やけどは起こりうる。

下腹部に布で包んだ温熱器具を当てる人(イメージ)

食べ物や代替療法を治療とみなさない

特定の食品や飲料を摂れば生理痛が治るとは確認されていない。チョコレート、牛乳、サプリメントを鎮痛手段として勧める根拠は十分ではなく、通常の食事を置き換える理由にもならない。水分を取り、食べられる範囲で普段の食事を続ける。

指圧、鍼、漢方薬などを検討する場合は、効果や安全性を一括りにしない。妊娠の可能性、持病、常用薬を伝えた上で、医師または薬剤師に確認する。処方薬を自己判断で中断したり、他人の薬を使ったりしない。

食卓に置かれた飲み物と軽い食事(イメージ)

思春期、妊娠の可能性、持病がある人

思春期。 初経後の生理痛でも、通学、睡眠、運動などに支障が出る場合は「年齢とともに治る」と待たず、産婦人科または小児科へ相談する。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の診療ガイドラインは、思春期の月経痛や持続する骨盤痛では子宮内膜症も念頭に置き、月経痛を訴える場合は初交前でも必要に応じて画像検査などを検討するとしている。診察方法は年齢や性交経験、症状に応じて医師と相談する。

妊娠中、妊娠の可能性がある人。 妊娠中の下腹部痛や出血を生理痛として自宅対応しない。月経が遅れている、妊娠検査が陽性、妊娠の可能性を否定できない場合は、温熱や運動を始める前に産婦人科へ連絡する。突然の激痛、肩先の痛み、脱力、めまい、失神、大量出血は119番を急ぐ。

持病や常用薬のある人。 糖尿病などで温度や痛みを感じにくい人、皮膚や血流に問題がある人は温熱器具を自己判断で使わず、医師へ相談する。常用薬がある人は処方薬を止めず、市販薬や漢方薬を追加する前に医師または薬剤師へ確認する。

妊婦、糖尿病などの持病や感覚低下がある人に共通する生理痛の非薬物対応をまとめた国内の公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。一般成人向けの温熱や運動をそのまま当てはめず、症状と背景を医療者へ伝える。

診察室で医師に下腹部痛を相談する妊婦(イメージ)

よくある質問

生理痛で119番を呼ぶのはどのような時か
激しく悪化する下腹部痛、大量出血、呼吸困難、意識の混乱、めまいや失神がある時だ。妊娠の可能性があり、突然の激痛や肩先の痛み、脱力がある場合も救急対応が要る。

温熱器具は何度で何分使うのか
全製品に共通する温度と時間はない。製品の取扱説明書を優先し、皮膚へ直接当て続けず、同じ場所を長時間温めない。就寝中は使わない。

軽い運動は痛みがある時にも必要か
義務ではない。歩行やヨガなどを無理なく試し、痛みが増す場合は中止して休む。普段より強い痛みや悪化が続く場合は婦人科へ相談する。

毎月の生理痛は我慢するしかないのか
我慢する必要はない。学校や仕事、睡眠などに支障がある、痛みが次第に強くなる、月経後も続く、経血量や周期が変わった場合は婦人科で原因を確認する。