乗り物酔いは、車、船、飛行機などの揺れを受けた時、目から入る情報と内耳などが捉える動きの情報が食い違い、めまい、吐き気、頭痛、冷や汗などが出る状態だ。症状が始まったら、進行方向の遠くへ視線を移し、近くの画面や文字を見続けない。
多くは移動が終わると治まるが、「乗車中に起きためまい」という理由だけで乗り物酔いと決めつけるのは危険だ。急な神経症状、意識や呼吸の異常、繰り返す嘔吐があれば、視線や座席を変えて様子を見る段階ではない。
119番を急ぐ兆候
急に片側の手足へ力が入らない、しびれる、顔の左右差が出る、言葉がうまく出ない。 これらは脳卒中が疑われる兆候であり、発症時刻を確認して119番へ連絡する。自分で車を運転して受診しない。総務省消防庁の119番通報プロトコルは、急な構音障害、片側の脱力・しびれ、顔面の左右差、急なバランス感覚の欠如、視覚障害、突然の頭痛を脳卒中が疑われる判定項目としている。
呼びかけへの反応がおかしい、呼吸が苦しい、立てないほど症状が強い。 乗り物酔いの典型的な経過から外れるため、119番へ連絡する。胸の痛み、突然の激しい頭痛、見えにくさを伴う場合も同じだ。
嘔吐を繰り返し、水分を取れない。 尿が明らかに減る、口や舌が乾く、ぐったりするといった脱水の兆候があれば、速やかに医療機関へ相談する。意識や呼吸にも異常があれば119番が先になる。総務省消防庁の救急受診ガイドは、成人と小児の「吐き気・吐いた」、成人の「めまい・ふらつき」を独立した症候として受診の緊急度判定に使っている。
症状が出た時の非薬物対策
遠くの動かない点を見る。 車では前席、船では中央部など、揺れが比較的小さく進行方向を見やすい場所へ移る。地平線や遠くの道路へ視線を向け、頭を大きく動かさない。座席を安全に移れない状況では、シートを倒せる範囲で体を支え、目を閉じてゆっくり呼吸する。
スマートフォン、読書、動画を止める。 近距離の画面を見続けず、窓の外を速く流れる車や波も追わない。可能なら換気し、長距離移動では安全な場所で休憩して水分を取る。英国のNHSは、車の前席や船の中央部を選び、地平線などの固定点を見る一方、読書、動画、電子機器の使用を避けるよう案内している。
出発前後の食事を重くしない。 移動直前や移動中の多量の食事、脂っこい物、辛い物、飲酒は避ける。空腹にすれば必ず防げるわけではなく、少量の水分と軽い食事を選ぶ。
市販薬は製品ごとの表示を確認
乗り物酔い薬は成分や剤形によって対象年齢、使用時期、併用できない薬が異なる。口から飲む薬と貼付剤を一つの時間表で扱わず、購入時に薬剤師または登録販売者へ年齢、持病、妊娠の可能性、使用中の薬を伝え、添付文書に記された用法・用量を守る。効きにくいと感じても回数や量を自己判断で増やさない。PMDAは、子どもでは商品名に「小児用」とあっても年齢により使えない場合があり、持病や治療中の薬、妊娠・授乳、常用する薬や健康食品を薬剤師へ伝えるよう求めている。
添付文書に運転禁止の記載がある薬を使った後は、車や危険な機械を操作しない。PMDAは、薬による眠気、注意力低下、目のかすみ、めまいが運転を妨げ、事故例もあるとしている。出発後に運転者へ症状が出た場合は、安全な場所に停車し、運転を交代する。
子ども、妊婦、持病や常用薬のある人
子ども。 会話や音楽で近くの画面から注意をそらし、進行方向を見やすい席を選ぶ。市販薬は成人用を減らして与えず、本人の年齢に使用可能かを表示と薬剤師への相談で確認する。嘔吐が続いて水分を取れない、尿が減る、ぐったりする場合は医療機関へ相談する。
妊婦。 視線、換気、休憩といった非薬物対策を先に行う。市販薬を使う前には妊娠中または妊娠の可能性があることを医師や薬剤師へ伝える。厚生労働省は、妊娠中に特別な注意が必要な薬や避けるべき薬があるため、新たに薬を使う時は医師または薬剤師へ相談するよう案内している。
持病、常用薬のある人。 病気によって使えない薬や、飲み合わせに問題がある薬もある。病名、処方薬、市販薬、健康食品の一覧を購入時に示し、医師、薬剤師または登録販売者に確認する。
移動していない時も続くなら受診
車や船を降りても強い症状が続く、移動していない時に同じめまいや吐き気を繰り返す、慢性的に吐き気・嘔吐が続く場合は、乗り物酔い以外の原因を含めて医療機関で評価を受ける。Cleveland Clinicは、移動していない時の乗り物酔い様症状、慢性的で持続する吐き気・嘔吐、脱水の兆候を医療者への相談目安に挙げている。
よくある質問
乗り物酔いが始まったら最初に何をするのか
読書やスマートフォンを止め、進行方向の遠くにある地平線や道路を見る。可能なら揺れの小さい席へ移り、換気する。
めまいがあれば、まず座席を変えて様子を見るのか
急な片側の脱力、顔の左右差、話しにくさ、意識や呼吸の異常があれば様子を見ず119番へ連絡する。胸痛、突然の激しい頭痛、急な見えにくさも同じ扱いだ。
市販薬は乗る直前に使えばよいのか
使用時期は製品ごとに異なる。添付文書を確認し、回数や量を自己判断で増やさない。子ども、妊婦、持病や常用薬のある人は購入前に医師や薬剤師へ相談する。
薬を使った後に運転してよいのか
添付文書に運転禁止の記載があれば運転しない。眠気や注意力低下、目のかすみ、めまいが出る薬があるためだ。
出典・参考資料
- Motion sickness(NHS)視線、座席、換気、読書や電子機器を避ける方法を示す公的医療情報
- 緊急度判定プロトコルVer.1(119番通報)(総務省消防庁)めまいに伴う脳卒中兆候と119番通報時の判定項目
- 緊急度判定プロトコルVer.3(救急受診ガイド)(総務省消防庁)めまい、嘔吐、構語障害などの受診判断を扱う全国版資料
- Motion Sickness(Cleveland Clinic)移動を伴わない症状、長引く嘔吐、脱水を相談目安に挙げる医療情報
- 市販のくすりを使用する場合の注意(医薬品医療機器総合機構)小児、妊婦、持病・常用薬のある人の薬選びと添付文書確認の注意
- 服用中に運転してはいけない薬がある理由(医薬品医療機器総合機構)眠気や注意力低下など運転に影響する副作用の説明
- 妊娠と薬(厚生労働省)妊娠中または妊娠の可能性がある場合の医薬品使用と相談先