羊水過少(Oligohydramnios)は、妊娠週数に照らして胎児の周囲の羊水が少ない状態だ。超音波で羊水量を間接的に測るが、一つの数値だけで重症度、胎児の見通し、分娩時期は決まらない。

産科では、破水の有無、胎動、胎児の発育と腎・尿路、胎盤血流、妊娠週数を組み合わせて原因と胎児の状態を評価する。妊娠中期の重度例と、妊娠末期にほかの異常を伴わず見つかった軽度例では、確認項目も見通しも異なる。

産科の診察室に置かれた超音波装置と検査台(イメージ)

先に確認する警告サイン──次の健診を待たない

腟から水のような液体が一度に流れる、または少量ずつ漏れ続ける場合は、陣痛がなくても、かかりつけの産科や分娩施設へ直ちに連絡する。日本産婦人科医会は、羊水が少ないときは破水の可能性を調べる必要があり、水様のおりものは破水を疑う所見だと説明している。漏れた液体の色と量を確認し、タンポンは使わない。

厚生労働省の母性健康管理サイトは、分娩開始前の破水を前期破水とし、子宮内感染の危険が伴いやすいと説明している。発熱や悪寒、性器出血、緑色または悪臭のある流出液、規則的な子宮収縮、腹痛や腰痛がある場合は、直ちに産科へ連絡して受診する。英国王立産婦人科医協会は、破水後にこれらの症状や普段と異なる胎動があれば、直ちに医療機関へ戻るよう求めている

胎動が普段より明らかに弱い、または数時間まったく感じない場合も、食事や休息で様子を見続けない。日本産婦人科医会は、何時間も胎動を感じず不安がある場合はかかりつけ医療機関へ相談し、妊娠末期でも胎動を感じない場合はすぐに連絡するよう促している

産科病棟の通路と診察室へ続く扉(イメージ)

測定は二つ──AFIと最大羊水深度

羊水インデックス(Amniotic Fluid Index、AFI)は子宮内を四つに分け、各区画で測った羊水の深さを合計する。羊水最大深度(Maximum Vertical Pocket、MVP)は、最も深い一つの羊水腔を測る。日本産婦人科医会の超音波解説は、AFI 5cm未満またはMVP 2cm未満を羊水過少の目安としている

胎児画像を映す産科超音波装置と検査用プローブ(イメージ) AFIとMVPの測定法、原因評価、追跡項目を示す図

AFIとMVPは同じ妊婦を異なる分類に置く場合がある。6研究4,278人を含むメタ解析では、最大羊水深度を使うとAFIより羊水過少の診断が少なくなり、統合相対リスクは0.38だった一方、帝王切開、胎便、臍帯動脈血pH、5分後Apgarスコア、新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit、NICU)入院には差がなかった。測定法によって診断の数が変わるため、前回値からの推移とほかの検査所見を合わせて読む必要がある。

原因は妊娠週数で変わる

日本産婦人科医会は、羊水過少の原因として、破水、妊娠高血圧症候群などに伴う胎盤機能不全、胎児の腎・尿路異常、胎児発育不全、過期妊娠などを挙げ、妊娠時期ごとに原因を調べる必要があるとしている

妊娠中期。胎児の尿が羊水量に強く反映される時期に入るため、腎臓と膀胱を含む詳しい超音波検査、胎児発育、破水の有無を確認する。羊水腔がほとんど見えない重度例では、肺や胸郭、手足の発達への影響も評価対象になる。

妊娠末期。急に羊水が減った場合は破水を調べる。徐々に減り、胎児の発育も小さい場合は、胎盤機能と胎児への血流を確認する。出産予定日に近づくと羊水は生理的に減るため、末期の数値を中期の重度例へ当てはめない。

産科の超音波検査室に置かれた装置と診察用品(イメージ)

妊娠中期の重度例と末期の軽度例で異なる見通し

見通しを左右するのは、羊水が減り始めた時期、残っている量、原因、胎児発育、胎盤血流、感染の有無だ。国際産婦人科超音波学会(International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology、ISUOG)は、羊水過少では早産、破水後の感染、胎位異常、臍帯圧迫の危険が増し、妊娠早期から極端に少ない場合は肺や手足の発達に影響しうる一方、妊娠後期に現れた軽度例は一般に見通しが良いとしている

「羊水過少」という診断名が同じでも、孤立性の軽度例と、破水、胎児発育不全、血流異常、感染を伴う例は同じ経過をたどらない。入院、外来追跡、分娩時期は、羊水の数値だけから選ばず、母体と胎児の所見から産科が決める。

超音波装置と胎児監視用の医療機器が並ぶ産科診察室(イメージ)

追跡は羊水量・発育・血流・胎児心拍を組み合わせる

妊娠を継続する場合、追跡には羊水量と胎児発育の超音波検査、腎臓・膀胱の確認、ドプラ法による血流評価、胎動、ノンストレステスト(Non-stress Test、NST)などを組み合わせる。ISUOGは、定期的な発育・羊水量の超音波検査、血流評価、腎臓と膀胱を中心とする詳細検査を追跡項目に挙げている

検査の間隔は、妊娠週数、破水、胎児発育、胎盤血流、母体の病気、前回の胎児心拍所見で変わる。国内の公開資料では、合併症のない孤立性羊水過少について、全国一律の外来監視頻度を本稿の執筆時点で確認できていない。次回受診日を自己設定せず、診断した産科が示す予定を確認する。

家庭では羊水量を測れず、確実に正常化する方法も確立していない。ISUOGも、羊水量を確実に増やす特定の治療はなく、対応は原因と妊娠週数で決まるとしている。飲水量を急に増やす、処方薬を中止する、次の受診まで待つといった判断を自分だけで行わない。

胎児心拍を記録する監視装置と記録用紙(イメージ)

持病・常用薬がある場合

妊娠高血圧症候群、膠原病、血栓症がある人。胎盤機能に関わるため、血圧、胎児発育、胎盤と胎児の血流、羊水量を同じ経過の中で評価する。持病を診る医師と産科の双方へ、検査結果と治療内容を共有する。

常用薬がある人。ISUOGは一部の妊娠中の薬剤を羊水過少の原因候補に挙げているが、薬剤名だけで原因は確定しない。市販薬、処方薬、サプリメントを含む使用状況を産科へ伝え、自己判断で開始、中止、増減しない。

よくある質問

AFIが5cm前後なら、すぐに入院や出産になるのか
数値だけでは決まらない。MVP、妊娠週数、破水、胎動、胎児発育、血流、胎児心拍、感染の有無を合わせて、外来追跡、入院、分娩時期を産科が判断する。

水を多く飲めば羊水は元に戻るのか
家庭の飲水だけで確実に正常化する方法は確立していない。水分量を自己判断で大きく変えず、まず原因と胎児の状態を確認する。

妊娠中期に羊水過少を指摘されても、次の健診まで待ってよいのか
診断した産科へ、原因評価と次回検査の日程を確認する。水様の液体が漏れる、胎動が明らかに減る、出血、発熱、悪臭のある流出液、腹痛がある場合は、予定日を待たず直ちに連絡する。

水様の液体が少量なら破水ではないのか
漏れる量が少ないと、破水か尿漏れかを症状だけで区別しにくい。少量でも漏れが続く場合は産科へ連絡し、診察で確認を受ける。