食品包装の「天然」「無添加」「ゼロ」は、同じ意味の品質表示ではない。「無添加」は食品添加物を使っていない範囲を示す任意表示、「ゼロ」は対象によって数値基準がある栄養強調表示、「有機」は対象品目に認証制度がある表示だ。包装前面の大きな文字だけで比べず、裏面の一括表示と対応させる必要がある。
健康を連想させる言葉は、表示の根拠までそろっているとは限らない。宣伝文句の検証方法は、「デトックス」「アルカリ性体質」「ケトジェニック」を一次資料で確かめた記事でも整理している。本稿では日本の食品表示制度に絞り、包装をどこから読むかをたどる。
「無添加」は全面禁止でも認証でもない
消費者庁は2022年3月、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表した。ガイドラインは不使用表示を一律に禁止するものではなく、食品表示基準の表示禁止事項に当たるおそれが高い表示を10類型に分けている。事実に即した任意表示を認めつつ、内容物について誤認を招く見せ方に線を引く構成である。
最初の類型は、対象を示さず単に「無添加」と記す表示だ。何を加えていないのかが不明確なら、消費者が事業者の意図とは違う意味を推測し、内容物を誤認するおそれがある。保存料不使用、着色料不使用のように対象が書かれていても、それだけで商品の添加物全体を説明したことにはならない。
同じ働きを持つ別の添加物や原材料に置き換えながら、特定の添加物だけを「不使用」と強調する表示も対象になる。ガイドラインは、保存性を高める目的で保存料以外の添加物を使った食品に「保存料不使用」と記す例を挙げる。不使用表示を健康や安全の理由にしたり、一括表示より過度に目立たせたりする見せ方も、実際より優良だとの誤認につながりうる。
「天然」は添加物の安全性を分ける基準ではない
「天然」という語が付けば、公的な認証を受けた商品になるわけではない。食品添加物の制度は、化学的合成品と天然物を安全性の上下として分けていない。消費者庁のガイドラインは、食品添加物には化学的合成品と天然物の双方が含まれ、食品添加物の表示で「天然」やこれに類する表現を認めていないと説明する。「天然だから安全」「合成だから危険」という読み分けは、制度の仕組みと一致しない。
食品添加物には別の管理がある。消費者庁は、原則として指定された添加物だけが使用でき、純度や成分の規格、使用量の基準が設けられ、安全性は食品安全委員会が科学的データに基づいて評価すると説明している。天然か合成かではなく、使用が認められた物質か、規格と使用基準に沿っているかを見る制度である。
認証表示として比較するなら「有機」との違いが明確だ。農林水産省によると、有機JASマークが付いていない農産物、畜産物、加工食品には「有機○○」などと表示できない。「天然」「無添加」の文字だけから、有機JASと同じ認証過程を経たと読むことはできない。
「ゼロ」は対象成分と基準を確かめる
「ゼロ」はすべてが曖昧な宣伝語というわけではない。熱量、脂質、糖類、ナトリウムなどについて「無○○」「○○ゼロ」「ノン○○」と表示する場合、栄養強調表示の基準が適用される。消費者庁は、対象となる栄養成分の含有量が食品表示基準別表第13の基準値未満であることを「含まない旨」の条件としている。したがって「ゼロ」が常に測定上の絶対的な0を意味するとは限らない。
「糖類ゼロ」と「砂糖不使用」も別の表示だ。前者は製品中の糖類が基準値未満であることを示し、後者は糖類を添加していない旨の表示に当たる。後者には、糖類を加えず、糖類に代わる原材料や添加物を使わず、糖類の含有量を表示するなどの条件がある。どの成分についての「ゼロ」か、無添加なのか含有量なのかを栄養成分表示と照合する必要がある。
裏面は原材料、添加物、栄養成分の順で読む
最初に原材料名を見る。消費者庁の消費者向け資料では、加工食品の原材料は一般的な名称を使い、使用した重量割合の高い順に表示される。果物やはちみつを大きく見せた商品でも、原材料名の先頭に別の原材料があれば、配合の中心は包装前面の印象と異なる可能性がある。
次に添加物の区切りを探す。原材料名と添加物を別欄にする方法のほか、原材料名欄の途中をスラッシュや改行で区切る方法がある。添加物も、その食品に使われた添加物中の重量割合が高い順に並ぶ。ただし、用途名と物質名を併記するもの、一括名で表示するもの、一定の条件で表示を免除されるものがあるため、名前の数だけで商品の良否は決まらない。
最後に栄養成分表示で、包装前面の強調表示と同じ成分を確認する。「糖類ゼロ」なら糖類、「食塩不使用」なら食塩相当量と原材料名を見る。保存方法、消費期限または賞味期限、アレルゲン表示も商品選択に必要な別の情報であり、「無添加」の一語では代替できない。
よくある質問
「無添加」とあれば、食品添加物は一切入っていないのか
対象が書かれていなければ、その意味を確定できない。消費者庁のガイドラインは、対象を示さない単なる「無添加」を、内容物の誤認につながるおそれが高い表示の一つに挙げている。保存料不使用など対象が明示されていても、裏面の添加物欄でほかの添加物を確認する必要がある。
「天然」と「有機」は同じ意味か
同じではない。有機JASは対象となる農産物、畜産物、加工食品の認証表示で、有機JASマークがなければ「有機」などと表示できない。「天然」という文字だけでは、有機JASの認証を受けたことを示さない。
「糖類ゼロ」なら糖類は完全に0なのか
栄養強調表示の「ゼロ」は、食品表示基準が定める基準値未満であることを示す。絶対的な0と同義ではない。「砂糖不使用」は糖類を添加していない旨の別の表示であり、栄養成分表示と原材料名を併せて読む必要がある。
原材料名は少ないほど安全なのか
項目数だけでは判断できない。原材料と添加物にはそれぞれ表示方法があり、添加物には用途名、物質名、一括名による表示や表示免除がある。原材料の数ではなく、アレルゲン、栄養成分、保存方法など、自分が確認する目的に対応した欄を見る。
出典・参考資料
- 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(消費者庁)食品添加物の不使用表示を10類型に整理し、表示禁止事項に該当するおそれが高い例を示した2022年3月30日付のガイドライン
- 知っておきたい食品の表示(消費者庁)加工食品の原材料名、添加物、一括表示の読み方を消費者向けにまとめた資料
- 栄養成分表示について(消費者庁)栄養成分表示と「ゼロ」「無」「ノン」、糖類無添加などの栄養強調表示の基準
- 食品添加物に関する消費者向けQ&A(消費者庁)食品添加物の指定、規格、使用基準、安全性評価、表示の原則を説明したQ&A
- JASってどんな制度?(農林水産省)有機JASマークと有機表示の条件を含むJAS制度の概要