SNSに流れるサプリメントの紹介は、投稿者自身の感想と広告が同じ画面に並ぶ。フォロワー数や語り口の親しみやすさは、商品との利害関係や健康効果の根拠を示さない。日本の制度に沿って読むなら、広告であることの明示、食品として許される表示との整合、体験談と研究の中身を分けて確認する必要がある。
広告表示──「PR」は投稿内で明瞭か
景品表示法上のステルスマーケティング(Stealth Marketing)規制は2023年10月1日に施行された。消費者庁のQ&Aは、個別に投稿を依頼して報酬を支払う場合、文面の指定がなくても「事業者の表示」に当たる可能性が高く、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」や「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった明瞭な表示が適切だとしている。規制対象は原則として表示内容の決定に関与した広告主で、依頼を受けたインフルエンサーが常に直接の対象になるわけではない。
無償提供があっただけで、すべての投稿が広告に変わるわけでもない。提供の目的、投稿をめぐるやり取り、過去と将来の取引関係を含めて判断される。投稿本文ではなく返信欄だけに「広告」と置く方法は気付かれにくく、動画では冒頭の一度だけでは見落とされる場合があると同Q&Aは説明する。画面の見やすい位置に関係が示されているかが、最初の確認点になる。
規制はサプリメントの表示にも適用されている。消費者庁は2025年3月、ロート製薬がモニター募集サイトを通じて第三者へ商品を無償提供し、方針に沿うInstagram投稿を依頼したうえ、その画像を依頼投稿だと明らかにせず自社サイトへ掲載したとして、同社に措置命令を出した。処分の対象は画像を投稿した第三者ではなく、その画像を自社の表示として利用した広告主だった。
効能の表現──食品の区分と照合
広告だと明示されていても、そこで語られる効能の裏付けは別の問題だ。消費者庁の留意事項は、疾病の治療・予防や身体機能の増強を健康効果に関する表示に含め、体験談、医師や学者の談話、研究機関の評価を介した暗示的・間接的な表現も同じ枠で扱う一方、特定の文言を一律に禁じるのではなく、表示全体を個別に判断すると明記している。「治る」「改善」「予防」といった語が見えた段階で、投稿の一文だけから適法性を断定するのではなく、容器包装の表示と根拠の対応を調べる必要がある。
消費者庁は、健康食品の広告文句や利用者の体験談だけを信用せず、成分の安全性と有効性の情報を調べるよう案内し、機能を表示する制度上の区分として特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の三つを挙げている。まず商品名と容器包装を確認し、インフルエンサーの表現がそこに記された範囲から広がっていないかを照合する。
機能性表示食品には、もう一つ注意が要る。この制度は事業者が安全性と機能性の科学的根拠などを販売前に届け出る仕組みで、特定保健用食品と異なり、表示する機能性を国が個別審査するものではない。「届出済み」という事実が、投稿で付け加えられた効能まで裏づけるわけではない。
研究と体験談──条件が省かれていないか
本人が実際に摂取して感じた変化でも、それだけで商品による効果は確定しない。消費者庁の留意事項は、体験談の掲載自体が直ちに虚偽誇大表示になるとはしていないが、肯定的な声だけを選ぶ、食事療法や薬物療法の併用を示さない、効果が得られなかった人を見せない、といった表示を誤認のおそれがある例に挙げる。「個人の感想です」と添えても、広告全体から効果があると受け取られるかどうかの判断は変わらないとしている。
「研究で確認」という表現も、研究の対象と方法を見なければ強さが分からない。医薬基盤・健康・栄養研究所は、動物や試験管内の結果を人にそのまま当てはめられず、一人の経過も他の人に同じ結果が出る根拠にはならないと説明する。人を対象にした研究でも、比較する対照群の有無や研究方法で情報の確かさが変わり、一つの報告より複数の研究の積み重ねが強い。研究が商品そのものを調べたのか一成分だけなのか、対象者と摂取条件は広告の想定と合うのか、都合のよい結果だけが抜き出されていないかを切り分ける。
試験結果の見せ方にも注意が要る。消費者庁は、対象者、人数、摂取方法を明示しない表示、複数の試験から有意差の大きい結果だけを使う表示、グラフの目盛りを切り詰めて差を大きく見せる表示を問題例として示している。研究論文へのリンクがなく、「専門機関」「大学との共同研究」とだけ書かれた投稿では、この照合を進められない。
投稿画面から外へ出る三段階
第一段階は、投稿内で広告主との関係を確認することだ。「PR」があるかに加え、誰の依頼か、商品提供か報酬かが読み取れるかを見る。表記があれば効能が正しいと決まるわけではなく、表記がなければ直ちに違反と決まるわけでもない。広告関係の透明性を測る確認である。
第二段階は、投稿から販売事業者の公式ページと容器包装へ移り、商品区分、表示する機能、成分、問い合わせ先を照合することだ。「機能性表示食品」と記載された商品なら、消費者庁の届出情報検索で、容器包装の届出番号や商品名から、安全性と機能性の要約、実際のパッケージを確認できる。検索結果は事業者が届け出た情報であり、国の個別認定を示すものではない。
第三段階は、研究名から元の資料へ進み、商品、対象者、比較条件、評価項目を対応させることだ。元資料に到達できない、動物や細胞の結果を人の効果へ置き換えている、特定の結果だけを強調している場合、投稿の「研究あり」は購入判断を支える根拠として不足する。
判定できる範囲と国内データの空白
三つの確認で分かるのは、広告関係と効能の根拠が読者に見える形で示されているかどうかだ。個別投稿の適法性は、画面に出ない契約や指示、対価を含めて行政が判断する。読者が投稿だけを見て法違反と断定するための手順ではない。
消費者庁はステルスマーケティングの運用基準、Q&A、個別の行政処分を公表している。ただし、インフルエンサー経由のサプリメント広告だけを切り出し、投稿の違反割合と購入後の健康被害を結び付けた公的な全国統計は、本稿の執筆時点で確認できていない。「SNSのサプリ広告の何割が問題か」という数字は置けない。広告表示、効能の範囲、研究の中身を投稿ごとに照合するのが現時点の出発点となる。
出典・参考資料
- ステルスマーケティングに関するQ&A(消費者庁)規制対象、広告主の関与を判断する事情、明瞭な広告表示、措置命令を具体例とともに説明したQ&A。
- ロート製薬株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁)第三者へ依頼したサプリメントのSNS投稿画像を自社サイトに掲載した表示について、2025年3月に出された措置命令。
- 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(消費者庁)健康効果の直接・間接表示、体験談、試験条件、試験結果やグラフの扱いを整理した留意事項。
- 健康食品(一般の方向け)(消費者庁)広告や体験談だけに頼らない確認方法と、保健機能食品の三つの区分を案内する消費者向けページ。
- 機能性表示食品について(消費者庁)機能性表示食品が事業者責任の届出制度であり、国の個別審査を経ないことの説明。
- 機能性表示食品の届出情報検索(消費者庁)届出番号や商品名から、安全性と機能性の要約、容器包装を確認する公式検索ページ。
- 健康食品の「有効性」情報の見極め方(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)体験談、動物・試験管内研究、人を対象とする比較研究、複数研究の位置づけを解説した資料。