熱湯や火による熱傷(やけど)は、皮膚から熱源を離し、速やかに冷やすことが初動になる。服の上から熱湯を浴びた場合も、皮膚に貼り付いた衣服を急いで剝がすのではなく、その上から流水を当てる。

ただし、広い範囲を冷やし続ければ体温が下がる。呼吸や意識に異常がある、顔を含む広範囲を受傷したといった場合は、家庭で傷の深さを見極めようとせず、119番通報と搬送を優先する。

水道の流水で手のやけどを冷やす様子

先に確認する警告サイン

背中、胸、顔、両脚の全体に及ぶやけど、呼吸が苦しい、歩けないほどのめまいやふらつき、意識がぼんやりする、皮膚が白く痛みを感じない場合は119番へ連絡する。強い酸性・アルカリ性の薬品による損傷、首・手・足を一周するやけど、見えにくさがある場合も同じ扱いになる。火災の煙を吸った後の喉の痛みや声がれ、顔や口の中のすすも気道熱傷を疑う警告サインだ。総務省消防庁の全国版救急受診ガイドは、これらを「119」の判定項目に置き、無理に衣服を取らず観察するよう示している

手のひらより広い、強い痛みがある、手や陰部に水ぶくれがある、顔面・耳・陰部・首・手・足・関節を受傷した場合は、直ちに医療機関を受診する目安となる。白や黒に変色したのに痛みが弱い傷も軽症とは限らない。消防庁の教材は、こうした深い熱傷について、痛みがなくても受診を求めている。

清潔なガーゼでやけどを覆う手順(イメージ)

熱湯や火によるやけどの初動

熱源を断ち、流水で冷やす。 火を消し、熱い液体や器具から離れる。厚生労働省事業で作成された「救急蘇生法の指針2015(市民用)」は、衣服の上からでも水道の流水で、痛みが和らぐまで10分以上冷やすとしている。強い水圧を傷へ直接当てず、蛇口の下に置きにくい部位はシャワーを使う。

貼り付いた衣服を無理に剝がさない。 衣服の上から冷やし、時計、指輪、ベルトなど、腫れると外せなくなる物は皮膚に貼り付いていない範囲で外す。傷に付着した布や皮膚を引っ張らない。

水ぶくれを潰さず、清潔に覆う。 冷却後は清潔な布やガーゼを軽く当てる。総務省消防庁の応急手当教材は、水ぶくれには傷口を保護する働きがあるため潰さず冷却して受診し、通常の熱傷では衣服の上から冷やすよう案内している。軟こう、油、消毒薬、歯磨き粉などを自己判断で塗らない。

やけどを清潔なガーゼで保護する手順(イメージ)

氷と長すぎる冷却を避ける

氷や氷水を傷へ当てる冷却は避ける。低温で組織をさらに傷めるおそれがある。広範囲の受傷では、流水を続けるほど全身の体温が下がるため、119番通報後は通信指令員の指示に従う。

冷却時間は国内資料でも一つに定まっていない。日本熱傷学会は一般的な冷却時間を最低5分から30分程度とし、小児の広範囲を長く冷やすと低体温から意識障害や不整脈を起こす場合があるため、過度の冷却を避けるよう注意を促している。本稿では市民用指針の10分以上を基本とするが、広範囲、小児、高齢者、寒気や震えが出た場合は時間だけを目標にしない。

やけどに歯磨き粉や調味料を塗る誤った手当の例(イメージ)

電撃傷と化学損傷は分けて考える

電気による事故では、救助者が電源に触れたままの人へ近づくと二次被害が起きる。まず電源を遮断し、安全を確保して119番へ連絡する。皮膚の傷が小さく見えても、体内の損傷や不整脈の有無は外見から判断できない。

化学薬品が付着した場合は、救助者自身が薬品に触れないようにする。日本中毒情報センターは、化学物質が皮膚に付いた場合はすぐに大量の流水で洗い、付着した衣服を脱ぐよう案内している。熱湯による熱傷で「衣服を無理に脱がさない」とする手順を、そのまま適用しない。薬品の容器や製品名が分かる情報を、救急隊や医療機関へ伝える。

子ども、妊婦、高齢者、持病や常用薬のある人

子ども。 皮膚が薄く、受傷範囲に比べて体温を失いやすい。日本赤十字社は、広範囲を10分以上冷やし続けることを避け、特に子どもと高齢者では低体温に注意するよう示している。水流を直接強く当てず、衣服の上から受傷した場合は脱がさず冷やす。消防庁の受診ガイドでは、15歳以下は成人より受診を急ぐ側に判定される。

妊婦。 消防庁の救急受診ガイドは、赤みと痛みだけの比較的軽い区分でも、妊娠中なら当日または翌日の通常時間に受診する判定を示している。一方、妊婦固有の家庭での冷却方法や薬の選択を示す国内の公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。一般の初動後に産科または受診先へ連絡し、薬を使う場合は医師や薬剤師に確認する。

高齢者、持病や常用薬のある人。 日本熱傷学会は、高齢者や有病者では成人一般より低い基準で重症度を考える必要があるとしている。糖尿病、血流や免疫に関わる病気、腎臓病がある人や常用薬のある人に一律の家庭処置を当てはめず、早めに医療機関へ相談し、病歴と服薬内容を伝える。

子どものやけどを冷やす際に低体温へ注意する様子(イメージ)

よくある質問

やけど直後は氷と流水のどちらを使うのか
水道の流水を使う。市民用指針は10分以上を目安とし、氷や氷水は傷を悪化させる場合があるとしている。広範囲では全身が冷えるほど続けない。

服はすぐ脱がせるのか
熱湯や火による熱傷では、皮膚に貼り付いた衣服を無理に剝がさず上から冷やす。化学薬品が付着した衣服は早く取り除くため、原因を区別する。

水ぶくれは潰すのか
潰さない。清潔な布やガーゼで保護し、手のひら以上の範囲、強い痛み、手や陰部の水ぶくれなどがあれば直ちに受診する。

見た目が小さければ自宅で様子を見てよいのか
白色や黒色で痛みが弱い傷、低温熱傷、電撃傷は、見た目より深い場合がある。顔、耳、首、手、足、陰部、関節の受傷も早期受診の対象になる。