鼻出血(鼻血)が始まったら、椅子に座り、顔を床へ向ける程度に少し下げ、小鼻の軟らかい部分を親指と人差し指で5〜10分続けて押さえる。鼻筋の硬い骨ではなく、鼻孔に近い左右の軟らかい部分を圧迫する。
顔を上へ向けると、血が喉へ流れてせき込んだり、飲み込んで吐き気や嘔吐につながったりする。止血の成否は、流れ出る血を見えなくすることではなく、出血部位へ圧力をかけ続けられたかで決まる。
呼吸・意識の異常と頭部外傷は119番
鼻血とともに呼吸が苦しい、意識がはっきりしない、顔色が明らかに悪い、支えなしでは立てないほどふらつく場合は119番へ通報する。厚生労働省の救急車利用案内は、急な呼吸困難、明らかに悪い顔色、支えなしで立てないほどの急なふらつきを、すぐ救急車を呼ぶ成人の兆候に挙げている。
転倒や交通事故などで頭を打った後に鼻血が出た場合は、家庭で止まるまで待たない。日本赤十字社の応急手当教材は、頭を打った後の鼻出血では手当と同時に119番へ通報し、出血が止まった後もすぐ鼻をかまないよう示している。顔面を強く打ち、鼻の変形、強い腫れや痛みを伴う場合も、単純な粘膜出血として扱わず早めに受診する。
正しい位置を圧迫しても20分たって止まらない、顔を下へ向けても血が喉へ流れ続ける、勢いが強い、発熱を伴う、短期間に何度も繰り返す場合は耳鼻咽喉科か救急医療機関へつなぐ。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、小鼻を5〜10分圧迫する手当を示したうえで、20分で止まらない出血、喉へ流れ続ける強い出血、発熱、1週間に3回ほどの反復を受診の目安としている。明らかな大量出血や全身状態の悪化があれば、20分を待たず119番へ切り替える。
家庭での止血──姿勢、位置、時間
座って顔をやや下へ向ける。 背もたれのある椅子などで上体を起こし、血が喉へ回らない姿勢を取る。口へ流れた血は飲み込まず、吐き出す。座っているのがつらい場合は、頭を少し高くして横向きに寝かせ、あおむけにはしない。
小鼻の軟らかい部分を押さえる。 親指と人差し指で左右から挟み、口で静かに呼吸する。時計やタイマーで5〜10分を測り、その間は力を緩めて確認しない。鼻の片側だけから血が見えても、左右をまとめて押さえる。
時間が来てから一度確認する。 血が止まっていれば、すぐには鼻をかまず、鼻の中を指で触らない。まだ流れていれば、指の位置が鼻筋へ上がっていないかを確かめ、同じ圧迫を再開する。開始から20分で止まらなければ、家庭で手当を重ねず受診へ切り替える。
上を向く、紙を詰める、鼻筋を押すのは避ける
上を向く。 血が鼻の外へ見えにくくなるだけで、出血部位への圧迫にはならない。喉へ流れた血でせき込む、吐き気が出る、嘔吐するといった事態を避けるため、顔はやや下へ向ける。
ティッシュペーパーや脱脂綿を鼻孔へ詰める。 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、粘膜を傷つけたり、奥へ入り込んで取り出せなくなったりするおそれから推奨していない。外へ出た血を紙やタオルで拭う使い方にとどめ、鼻孔には入れない。
鼻筋の硬い部分を押す。 多くの鼻血で圧迫する位置は、鼻孔に近い小鼻の軟らかい部分である。硬い鼻筋をつまんでも、その下にある出血部位へ十分な圧力が届かない。
小児、妊婦、高血圧・服薬中の人
小児。 保護者が座らせ、顔をやや下へ向けたまま小鼻を左右から押さえる。泣いたり動いたりして圧迫が途切れないよう、時計で約10分を測る。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の小児向け資料は、小鼻を中心に鼻全体を約10分押さえ、30分ほど圧迫しても止まらない、ふらつく、顔色が悪い、勢いが強い、顔面外傷を伴う場合は早めに耳鼻咽喉科か救急病院を受診するよう求めている。呼吸や意識に異常がある時は30分を待たず119番へ通報する。
妊婦。 妊娠中の鼻血に特化し、家庭での圧迫時間や受診時点を一律に示す国内の公的な一般向け資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。出血中は上を向かず小鼻を圧迫し、止まらない、量が多い、反復する、ふらつきなどを伴う場合は、産科のかかりつけ医か耳鼻咽喉科へ連絡する。
高血圧がある人。 血圧が高い状態では、出血の勢いが強く止まりにくい場合がある。一方、鼻血だけで原因を高血圧と断定せず、まず前傾姿勢と小鼻の圧迫を始める。止まらない場合や反復時は、耳鼻咽喉科の診察とともに、普段の血圧管理をかかりつけ医へ確認する。
抗凝固薬や抗血小板薬を服用中の人。 血が止まりにくい場合があるため、受診時には薬の名称、服用理由、最後に飲んだ時刻を伝える。厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)の重篤副作用疾患別対応マニュアルは、抗凝固薬の服用後に鼻出血などが現れる場合がある一方、患者の判断による休薬や減量は血栓症を招くおそれがあるとしている。出血を理由に処方薬を自己判断で止めたり減らしたりせず、処方した医師へ連絡する。
よくある質問
鼻血が出た時、顔は上と下のどちらへ向けるのか
椅子に座り、床を見る程度に顔をやや下へ向ける。上を向くと血が喉へ流れ、せき込み、吐き気、嘔吐につながる場合がある。
どこを何分押さえるのか
鼻筋の硬い骨ではなく、鼻孔に近い小鼻の軟らかい部分を左右から5〜10分押さえる。その間は指を緩めて確認しない。
何分で受診へ切り替えるのか
国内の専門学会資料には20分と30分の目安がある。本稿では20分で止まらなければ受診へ切り替え、強い出血、呼吸・意識の異常、頭部外傷があれば時間を待たず119番へ通報する。
ティッシュペーパーを鼻へ詰めてよいか
鼻孔には詰めない。外へ出た血を拭うために使い、止血は小鼻の軟らかい部分への圧迫で行う。
出典・参考資料
- 鼻出血(鼻血)~原因・止め方・こんな鼻血は要注意!~(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)小鼻を5〜10分圧迫する姿勢、避ける処置、危険な出血と受診の目安を示す一般向け資料
- 子どもの鼻出血(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)小児の圧迫止血と、止まらない出血や顔面外傷で早期受診する目安を示す資料
- 多量の出血-止血法-(日本赤十字社)鼻出血の姿勢、止血後の注意、頭部外傷時の119番通報を示す応急手当教材
- こんな時は迷わず119へ(厚生労働省)呼吸困難、意識や顔色の異常、強いふらつきなど救急車を呼ぶ兆候を示す案内
- 重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血傾向(厚生労働省・医薬品医療機器総合機構)抗凝固薬服用中の鼻出血と、自己判断による休薬・減量の危険を説明するマニュアル