香港高等法院原訟法廷は2026年8月21日、解散した香港市民支援愛国民主運動連合会(支連会)と元幹部の李卓人(リー・チョクヤン)、鄒幸彤(チョウ・ハントン)両被告を、国家政権転覆扇動罪で有罪とした。香港政府が同日公表した判決概要によると、何俊仁(アルバート・ホー)被告は先に認罪して有罪となり、法廷は8月28日に量刑に向けた情状陳述を聴く

事件の中心は、支連会が掲げた「一党独裁を終わらせる」との綱領と、国安法施行後の発信を法廷がどう評価したかにある。香港電台によると、起訴対象は2020年7月1日から2021年9月8日までの言動で、1月の初公判では何被告が認罪し、支連会と李、鄒両被告は無罪を主張した。判決概要は、一般の合理的な人が被告らのメッセージを受け取れば、中国共産党の指導を終わらせる目的と、他者に実行を促す意図を理解したはずだとする法廷の判断を伝えている。

判決──「一党独裁の終結」と根本制度

香港政府が紹介した法廷の判断では、被告らは中国共産党と中央政府への敵意をあおって分断を生み、同党への信頼を失わせることで、中国憲法が定める国家の根本制度を破壊しようとしたと認定された。被告らは国安法の施行後も支連会の路線を維持し、自らの言動が適法な表現の自由の範囲を超える可能性を認識していたとも判断された。

法廷は、被告らが政治的見解や信念を理由に裁かれたのではなく、関連する法律と証拠だけを検討したと説明した。一方、香港司法機関が公開する判決理由全文は、本稿の執筆時点で確認できていない。本稿が記す法廷の証拠評価と法律判断は、香港政府が公表した概要から確認できる範囲に限られる。

国安法第22・23条──上限は禁錮10年

香港律政司が公開する香港国家安全維持法の注釈では、第22条は、武力、武力による威嚇、その他の違法な手段により、中国憲法が定める根本制度や中央政権機関を転覆・破壊する行為を犯罪とし、第23条は他者による第22条の犯罪を扇動、援助、教唆、資金援助する行為を処罰する

第23条の法定刑は二段階である。情状が重大と判断されれば禁錮5年以上10年以下、軽い場合は5年以下となる。李、鄒両被告が直面する上限は10年だが、法廷がどちらの区分を適用し、どの刑期を選ぶかは決まっていない。

被告側は民主化要求と反論

AP通信によると、李被告は「一党独裁の終結」を人民が指導者を選ぶ民主化への移行と説明した。自ら弁護した鄒被告も、権力に制約がない体制を終わらせるとの意味であり、中国共産党の指導そのものを終わらせる要求ではないと反論した法廷はこの解釈を退け、綱領と国安法施行後の発信を一体として有罪判断の根拠にした

天安門事件の追悼集会を担った支連会

欧州連合(EU)の8月21日付声明は、支連会が香港で天安門事件の大規模なろうそく追悼集会を毎年主催し、参加者が10万人を超えた年もあったと記す。香港では国安法が施行された2020年以降、同様の集会は開かれていないとしている。同声明は、有罪判決を表現・集会の自由と独立した市民社会の空間がさらに縮小した例と評価した

香港行政長官会同行政会議は2021年10月26日、支連会を会社登記簿から抹消するよう命じた。当時の政府発表も、「一党独裁を終わらせる」との綱領は中国共産党の指導を終わらせる意味だと解釈していた

香港政府と欧州各国で対立する評価

香港政府は有罪判決を支持し、被告らは政治的見解ではなく法律と証拠に基づいて裁かれたと主張した。政府は、本件と適法な結社、集会、言論の自由の行使を区別すべきだとしている。この説明に従えば、今回の判決から、あらゆる天安門事件の追悼や政府批判が直ちに同じ罪に当たるとは導けない。

英外務・英連邦・開発省は、平和的な追悼まで国家安全保障上の脅威として扱われたと批判し、国安法による表現の処罰は1984年の中英共同声明で中国が香港に示した約束を損なうとの見解を表明した。国安法の廃止と権利・自由の尊重も求めた。

フランスとドイツの外務省は共同声明で、鄒被告への有罪判決に「深い遺憾」を示し、平和的な人権擁護は犯罪ではないとして即時釈放を要求した

日本外務省の香港情勢に関する公表資料一覧には、本稿の執筆時点で本判決を個別に扱う声明は確認できない。日本政府が今回の判決や量刑手続きにどのような立場を取るかは、公表資料から判断できない。

次の焦点は量刑に向けた情状陳述

法廷は8月28日、量刑に向けた情状陳述を聴く。これは刑期の言い渡しそのものとは限らず、香港政府の8月21日付発表も判決期日を示していない。現段階で確定しているのは有罪判断と法定刑の範囲であり、10年という上限は実際の刑期ではない。

よくある質問

李卓人、鄒幸彤両被告は何の罪で有罪になったのか。
香港国家安全維持法第23条の国家政権転覆扇動罪である。法廷は、支連会の「一党独裁を終わらせる」との綱領や国安法施行後の発信が、他者に違法な手段で国家の根本制度を破壊するよう促すものだったと認定した。

2人の刑期は決まったのか。
決まっていない。第23条の上限は禁錮10年だが、8月28日に予定されているのは量刑に向けた情状陳述であり、最終的な刑期はまだ公表されていない。

天安門事件を追悼すれば同じ罪に問われるのか。
今回の判決だけからは判断できない。法廷が審理したのは支連会と被告らの特定の綱領、発信、意図であり、香港政府も本件と適法な集会・言論の行使を区別すべきだと説明している。