フランスやスペインで山火事の拡大が鈍る一方、ギリシャでは強風が消火活動を阻み、危険な火災前線が沿岸部へ移った。アッティカ地方西部のプサタでは8月2日、消火活動中のベル製ヘリコプター2機が空中で衝突し、1機が墜落した。

AP通信によると、死亡したのはギリシャ人とデンマーク人の乗員で、別の機体にいたギリシャ人と英国人の乗員は生還した。2機にはそれぞれ2人が搭乗していた。事故原因は公表されておらず、現段階で確認できるのは衝突と死傷状況までである。

西欧では避難解除進む 残る地中の火点

AP通信は8月1日、フランス南西部ジロンド県の大規模火災が約420平方キロの松林を焼き、避難した約22万4000人のうち約19万8000人が帰宅を認められたと報じた。スペインの主要火災も前進を止め、ポルトガルの主要火災は制御下に入った。

ただし、ジロンドの火災は延焼範囲内に抑えられた段階であり、消し止められたわけではない。焼失区域では活動中の区画や地中の火点が残り、8月1日時点で帰宅できない住民もいた。避難解除の人数と火災の状態は、同じ日の発表でも集計時刻によって変わる。

フランス・ランド県ビスカロッスで山火事の残り火を消すマルセイユ海軍消防隊員(資料写真)

ギリシャ沿岸、道路を断たれ海上退避

火勢が強まったのは、アテネから西へ約70キロのコリント湾沿岸にあるポルト・ゲルメノ周辺である。乾燥した松林を進んだ火が集落と工業地区を脅かし、強い突風で航空機が海上から取水できない場面もあった。

消防隊は7月31日に254人、8月1日に12人を海路で退避させた。火災はアギオス・バシレイオス付近からポルト・ゲルメノ方面へ広がり、カンディリ、アギア・スケピ、トゥトゥリに避難命令が出た。煙と炎が沿岸道路を遮る状況では、船が退避経路となる。

地中海沿岸の町と、遠くの丘から上がる山火事の煙(イメージ)

火災の影響範囲は40〜50平方キロと報じられたが、これはアテネ国立天文台の山火事気象学者による推計である。ギリシャ当局は8月1日時点で公式の焼失面積を示しておらず、確定値としては扱えない。

1週間で山火事関連任務の死者5人

ヘリ事故に先立ち、ギリシャでは消防士3人が死亡していた。ギリシャ紙Kathimeriniは7月29日、クレタ島レティムノ地方で消防士2人が炎に取り囲まれて死亡し、ペロポネソス半島ギティオ近郊でも消防士1人が意識不明で見つかり、病院で死亡したと伝えた

これにヘリ事故の2人を加え、同じ週の山火事関連任務で亡くなった人は計5人となった。ただし、ギティオ近郊の消防士について消防当局は死因を明らかにしていない。すべてを炎による死亡と断定するのは早い。

欧州の昇温、世界平均の2倍超

今回の個々の火災原因と、長期的な気候傾向は分けて考える必要がある。そのうえで、暑さと乾燥が植生から水分を奪い、強風が加わると火が広がりやすい条件になる。

EUのコペルニクス気候変動サービスは、欧州の昇温速度が1980年代以降、世界平均の2倍を上回り、1990年代半ば以降は10年当たり約0.53度上昇したと分析している。大気循環の変化、海より速く暖まる陸地の性質、大気汚染の減少などが地域差に関わるという。

この長期傾向は、8月2日のヘリ衝突の原因を説明するものではない。事故は別途調査が必要であり、山火事の発火原因も現場ごとに異なる。一方、消火活動を難しくする高温、乾燥、強風の条件が長期的な昇温のなかで重なる事実は、欧州各国の避難計画と航空消火の安全管理に共通する課題である。

日本向け公表情報には空白

今回の火災やヘリ事故で日本人が被害を受けたことを示す日本政府の公表資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。これは被害がないとの断定ではない。避難区域と交通規制は変わるため、現地に滞在する人はギリシャ当局や在ギリシャ日本国大使館の更新を確認する必要がある。

よくある質問

消火ヘリの衝突で何人が死傷したのか
2機に計4人が搭乗し、ギリシャ人とデンマーク人の2人が死亡した。別の機体のギリシャ人と英国人の2人は生還した。

ポルト・ゲルメノ周辺では何人が海路で退避したのか
7月31日に254人、8月1日に12人の計266人である。道路が煙や炎で使えない沿岸部では海路が退避経路となった。

フランスの大規模火災は鎮火したのか
8月1日時点では延焼範囲内に抑えられていたが、活動中の区画や地中の火点が残っていた。帰宅許可が進んだことは、鎮火を意味しない。