民族解放軍(Ejército de Liberación Nacional、ELN)は、コロンビア政府と半世紀以上にわたり武力衝突を続けてきたゲリラ組織だ。ベネズエラ国境に近い北東部ククタでは8月1日未明、北サンタンデール県警察本部前に置かれたトラックが爆発し、警官11人が負傷、警察犬1頭が死んだ。
AP通信によると、ウィリアム・リンコン警察長官は、爆発で警察本部の屋根の大部分が損壊し、窓ガラスが割れたと説明した。爆発は夜明け前に起きた。現場のククタはベネズエラとの国境に接し、密輸ルートの支配をめぐって麻薬組織と武装勢力の争いが続く地域である。
政府はELN関与を主張 6万ドルの報奨金
ペドロ・サンチェス国防相はELNが攻撃に関与したと主張し、実行者の特定につながる情報に6万ドルの報奨金を提示した。リンコン氏は事件をテロ攻撃と位置づけ、責任者を訴追するまで捜査を続けるとの考えを示した。
政府の発表は捜査当局や裁判所が認定した結論ではない。攻撃主体がELNだと確定したことを示す公表資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。政府による容疑と、裏づけの取れた事実を分けて見る必要がある。
ELN──国境地帯に約6000人との推計
ELNは1960年代、労働運動の指導者、学生、農民らによって結成された。社会正義を掲げた組織だったが、コロンビア当局は現在、違法な金採掘と麻薬取引を資金源にする犯罪組織へ変質したとみている。AP通信は、コロンビアと隣国ベネズエラで活動する戦闘員を約6000人と伝えた。この数字は推計であり、構成員数を確定する独立した名簿ではない。
ククタの北側に広がるカタトゥンボでは、ELNと他の武装勢力が国境地帯の支配を争ってきた。AP通信によると、2025年初めの攻撃では推計78人が死亡し、少なくとも5万6000人が避難した。
和平交渉は2025年1月に停止
グスタボ・ペトロ政権は複数の武装組織との交渉を「全面和平」(Paz Total)政策の柱に据え、ELNとも和平協議を進めた。だが、ペトロ大統領は2025年1月17日、カタトゥンボでの攻撃を受け、ELNとの和平交渉を停止すると表明した。事件発生時までに交渉再開を示す公表はなかった。
事件は政権交代の直前に起きた。記事公開時点で、保守派のアベラルド・デラエスプリエジャ氏は8月7日にカリで大統領に就任する予定だった。同氏は選挙期間中、ELNや犯罪組織に対する軍事的圧力を強め、コカ栽培への空中散布を再開する方針を掲げた。公約がどの範囲で実施され、治安にどのような影響を及ぼすかは、事件時点では見通せなかった。
よくある質問
ククタの爆発で確認された被害は何か
警官11人が負傷し、警察犬1頭が死んだ。警察本部の屋根の大部分と窓も損壊した。
ELNが実行したと確定したのか
確定していない。国防相がELNの関与を主張したが、捜査や司法手続きによる認定を示す公表資料は確認できていない。
なぜククタで武装勢力の衝突が続くのか
ククタはベネズエラ国境に位置し、密輸ルートをめぐって麻薬組織と武装勢力が支配を争ってきた。
ペトロ政権とELNの和平交渉は続いていたのか
ペトロ大統領は2025年1月、カタトゥンボでの攻撃を受けて交渉停止を表明した。事件発生時に交渉は再開していなかった。
出典・参考資料
- Truck explodes outside Colombia police base, injuring 11 officers and killing a dog(Associated Press)爆発の日時と場所、警官11人の負傷、警察犬の死亡、建物被害、政府によるELNへの容疑と報奨金、ELNの背景を確認
- Presidente Petro suspende diálogos con el Eln tras ‘crímenes de guerra’ en el Catatumbo(Presidencia de la República de Colombia)ペトロ大統領が2025年1月17日にELNとの和平交渉停止を表明したことを確認