新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019、COVID-19)の全国定点報告は、直近では増加していない。厚生労働省が2026年8月21日に公表した第33週(8月10〜16日)の報告数は3,896、定点当たり1.12で、前週の1.79から減少し、前年同期の6.30も下回った。
ただし、定点報告は指定医療機関を受診した患者の集計で、国内の感染者総数ではない。2025年第15週から定点医療機関の選定基準も変わった。1週間の全国値だけで個人の接種要否を決める資料にはならず、年齢と健康状態、定期接種の対象区分を分けて見る必要がある。
接種後30分以内の息苦しさ・反応低下は119番
新型コロナワクチンでは、まれにアナフィラキシー(Anaphylaxis)が起こる。接種後、おおむね30分以内に全身の強いかゆみ、まぶたや唇の腫れ、持続するせき、ぜーぜーする呼吸、息苦しさ、繰り返す嘔吐、強いふらつき、顔色不良、呼びかけへの反応低下が急に現れた場合は、接種会場なら直ちに職員へ伝える。帰宅後に呼吸症状や反応低下が出た場合は119番を要請する。医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency、PMDA)の2026年改定マニュアルも、注射薬によるアナフィラキシーは発症が早く、呼吸症状やショック症状がある場合は救急車を呼ぶとしている。
mRNAワクチンの接種後には、頻度はまれだが心筋炎や心膜炎が報告されている。厚生労働省は、接種後4日程度の間に胸の痛みや息切れが現れた場合、速やかな医療機関の受診を求めている。急な強い胸痛、呼吸困難、意識の異常があれば119番を要請する。
65歳以上と条件を満たす60〜64歳が定期接種
60〜64歳の「所定の障害」は、慢性病がある人全体を指さない。心臓、腎臓、呼吸器の機能障害で身辺の日常生活が極度に制限される人、またはヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus、HIV)による免疫機能障害で日常生活がほとんど不可能な人に限られる。
新型コロナは予防接種法上のB類疾病で、接種の法律上の義務はなく、本人の意思に基づく。厚生労働省は、定期接種でも自治体が定める自己負担額がかかり、対象年齢外や定期接種期間外の成人は任意接種として原則自費になると案内している。
厚生労働省の一般向けページでは、2025年度の定期接種は2026年3月31日に終了し、2026年度の対象者とスケジュール、使用ワクチンは「詳細が決まり次第」とされている。全国共通の開始日、自治体別の終了日、自己負担額、使用製剤は2025年度の情報だけでは確定しない。
過去の回数だけでは決まらない──抗原は毎年見直し
過去の接種歴は確認材料の一つだが、回数だけで現在の保護を判定できない。厚生労働省は、感染や発症を防ぐ効果は100%ではなく時間とともに低下するとし、流行株への対応を踏まえて定期接種に使う抗原株を当面毎年見直すとしている。過去に接種したことは「現在は保護がない」と同義でもなく、2026年度の接種が不要だと示す材料にもならない。
抗原組成の選定は、自治体で使う製品の確定と同じ段階ではない。厚生労働省の小委員会は、LP.8.1、XFG、NB.1.8.1などを含む候補抗原の臨床データは限定的で、引き続き情報収集が必要だと整理した。2024/25シーズンの効果推定は2026/27シーズンの製品へそのまま当てはまらない。
持病・免疫抑制治療中は定期接種の資格と医学的判断を分ける
65歳未満で糖尿病、がん、心臓病などがあっても、それだけで国のB類定期接種に該当するわけではない。一方、持病や免疫機能の低下は感染時の重症化リスクと接種後の免疫応答に関わるため、定期接種の資格と医学的な接種判断は別に確認する。
厚生労働省は、免疫不全、心臓・腎臓・肝臓・血液の病気、過去の接種後アレルギー、けいれん歴、抗凝固療法などがある人を接種時に注意が必要な対象としている。病状が悪化している場合や全身が衰弱している場合、免疫抑制薬や抗がん剤を使用中の場合は、病状、治療予定、常用薬を予診で示し、主治医と接種時期を決める。
妊娠中と小児は成人の枠組みをそのまま使わない
妊娠していること自体は、65歳以上などを対象とする国のB類定期接種の資格ではない。日本産科婦人科学会と日本産婦人科感染症学会は2025年、すべての妊婦への一律接種を推奨せず、重症化リスクのある基礎疾患を伴う妊婦には接種を推奨し、それ以外でも希望する妊婦は産科担当医と個別に決めるとしている。流行状況で推奨が変わる可能性も明記されている。
小児には、成人の定期接種対象、回数、接種時期を当てはめない。年齢によって承認された製剤と接種方法が異なるため、保護者は小児用の最新案内を自治体と医療機関で確認する。本稿の成人向け区分から小児の接種要否は判断できない。
発熱時は見合わせ、同時接種は医師が判断
明らかな発熱がある人、重い急性疾患にかかっている人、ワクチン成分でアナフィラキシーなど重い過敏症を起こしたことがある人は、その時点で接種を受けない対象となる。明らかな発熱は通常37.5℃以上を指すが、平熱との比較も含めて予診医が判断する。
新型コロナワクチンとインフルエンザを含む他のワクチンは、医師が認めた場合に同時接種が可能で、別日に接種する場合も一律の間隔制限はない。同時接種を全員に求める制度ではなく、当日の体調、過去の接種後反応、扱う製剤を予診で確かめる。
接種部位の痛み、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛は公表されている主な副反応で、多くは数日以内に軽快する。高熱や強い痛みが続く場合、接種後として典型的でない症状がある場合は、接種した医療機関へ連絡する。症状が出る前から市販薬を繰り返し服用する方法は、厚生労働省のQ&Aでは推奨されていない。
新型コロナに感染したことがある人も接種対象になりうる。感染後は体調が回復してから検討するが、感染から接種までの全国一律の待機期間はない。治療内容と回復状況を接種医へ伝えて時期を決める。
2026年度の予約前に照合する項目
予約前に照合する情報は、年齢と定期接種資格、市町村の実施期間、指定医療機関、自己負担額、使用製剤、過去の接種日、感染歴、持病、常用薬、妊娠の有無である。国の対象に該当しても、自治体の期間外や指定外の医療機関では任意接種の扱いとなりうる。
2026年度の全市区町村について、実施期間、自己負担額、指定医療機関、任意接種への独自助成を一括で照合できる公的資料は、本稿執筆時点で確認できていない。厚生労働省の詳細発表と、住民票のある市区町村の案内がそろってから予約条件を確定する必要がある。
よくある質問
過去に何回も接種していれば、2026年度は不要か
回数だけでは決まらない。発症予防効果は時間とともに低下し、抗原株も毎年見直される。一方、過去の接種が無効になったとの意味でもない。年齢、持病、直近の接種日、2026年度の製剤と自治体案内を照合する。
65歳以上なら無料か
無料とは限らない。新型コロナはB類定期接種で、自治体が自己負担額を定める。実施期間と指定医療機関も市区町村で異なる。
健康な65歳未満の成人は接種を受けられないのか
国の定期接種対象外でも任意接種の選択肢があり、費用は原則自費となる。必要性は過去の接種歴、感染歴、持病、職業上の曝露などを医師に示して個別に判断する。
インフルエンザワクチンと同じ日に接種できるか
医師が認めた場合は同時接種が可能で、別日に受ける場合も一律の間隔制限はない。当日の体調と過去の接種後反応を予診で確認する。
妊娠中なら接種を受けるべきか
日本の専門学会は全妊婦への一律接種を推奨していない。重症化リスクのある基礎疾患を伴う妊婦には推奨し、それ以外は本人の希望と流行状況を踏まえ、産科担当医と個別に決める。
出典・参考資料
- 新型コロナウイルス感染症の発生状況(2026年第33週)(厚生労働省)全国の定点報告数、前週・前年同期との比較、集計上の注意
- 定期接種実施要領(2026年6月1日改正)(厚生労働省)新型コロナ定期接種の対象、毎年度の実施期間、回数、本人意思の確認
- 新型コロナワクチンについて(厚生労働省)2026年度の使用製剤と具体的な実施方法の公表状況
- 新型コロナワクチンQ&A(厚生労働省)定期・任意接種、費用、効果、副反応、接種前確認、同時接種
- 新型コロナワクチン製造株(国立健康危機管理研究機構)2026/27シーズンの抗原組成
- 2026/27シーズンの新型コロナワクチン抗原組成に関する小委員会議事録(厚生労働省)候補抗原の臨床データとサーベイランスの限界
- 重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー(医薬品医療機器総合機構)発症しやすい時間、症状、救急車を呼ぶ状況
- 妊婦に対する新型コロナウイルスワクチン接種について(日本産科婦人科学会・日本産婦人科感染症学会)妊婦への一律推奨を行わない方針と個別判断