便潜血検査(Fecal Immunochemical Test、FIT)は、日本の大腸がん検診で便に混じる目に見えない血液を調べる検査だ。陽性は出血反応を捉えた判定であり、大腸がんの確定診断ではない。国立がん研究センターが厚生労働省の2019年度市区町村検診を基に示す数字では、大腸がんの要精密検査者のうち実際にがんが見つかった割合は約3.1%だった

この3.1%は集団統計で、陽性となった個人の病変を否定する数字ではない。便の血が大腸がん、ポリープ、痔などのどこから出たかは、便潜血検査では判別できないためだ。陽性の役割は病名を付けることではなく、全大腸を調べる精密検査の対象を拾い上げることにある。

血便・黒い便・激しい腹痛は検診を待たない

便潜血陽性だけで救急車を呼ぶ必要があるわけではない。一方、目で見える血便や真っ黒い便、突然の激しい腹痛、激しい腹痛が続く場合は119番を急ぐ。厚生労働省は、これらを成人がすぐに救急車を呼ぶ症状に挙げている。救急症状がなくても、血便、腹痛、便の性状や排便回数の変化がある人は検診ではなく診療の対象だ。国立がん研究センターは、こうした症状が現れた場合、次の検診を待たず医療機関を受診するよう案内している

日本の検診は40歳以上、年1回

国が推奨する大腸がん検診は、40歳以上の男女を対象に、問診と便潜血検査(免疫法)を1年に1回行う。市区町村の住民検診か、事業者・保険者による職域検診で受ける形が中心になる。職場の定期健康診断や特定健康診査に便潜血検査が含まれるとは限らないため、案内の検査項目を確認し、なければ居住する市区町村の窓口を調べる。

標準は別の日に採った2日分を調べる2日法だ。大腸の病変は毎日出血するとは限らず、2本のうち1本だけが陽性でも「要精密検査」になる。採便する場所、容器の扱い、提出期限は実施機関の説明書に従う。

自宅で使う便潜血検査の採便容器と説明書(イメージ)

陽性は「要精検」──便潜血の再検では終わらない

国立がん研究センターは、2日法の1日分でも陽性なら精密検査が必要で、便潜血検査をもう一度受けても精密検査の代わりにはならないとしている。出血が途切れた日に再検すれば陰性になり得るため、再検の陰性は最初の陽性を取り消さない。痔がある人も、出血源を自己判断せず精密検査へ進む。

陽性後の受診には全国的な空白が残る。2022年度の大腸がん検診で、40〜74歳の精密検査受診率は全国71.5%だった。国立がん研究センターは本来100%を目指す指標とし、精検受診率の改善を最優先課題に位置づけている。未受診のほか、自治体が結果を把握できなかった人も分母に残るため、28.5%全員が受診を拒んだという意味ではない。

診察室で大腸内視鏡検査の流れを説明する医師(イメージ)

精密検査の第一選択は全大腸内視鏡

精密検査では、下剤で腸内を空にした後、内視鏡で直腸から盲腸までを観察する全大腸内視鏡検査が第一選択になる。病変が疑われれば組織を採り、ポリープは大きさや形に応じてその場で切除する場合がある。全大腸の観察が難しいときは、大腸CT検査など別の方法を医師が検討する。

日本消化器内視鏡学会は、大腸内視鏡検査や治療では、まれに出血や穿孔が起こり、入院、緊急処置、手術が必要になる場合があると説明している。検査後に出血量が増えて止まらない、腹痛が続く場合は検査施設へ至急連絡する。鎮静薬や鎮痛薬を使った日は、自動車、バイク、自転車を運転しない。

予約時には便潜血の結果通知、紹介された医療機関の一覧、マイナ保険証または資格確認書、服薬情報、過去の内視鏡結果が必要かを確認する。精密検査は検診の追加採便ではなく、病変の有無を診断する保険診療になる。

小児・妊娠中・持病や常用薬がある人

国が推奨する40歳以上・年1回の枠組みは、症状のない一般集団向けだ。小児や40歳未満に同じ日程を当てはめず、症状、家族歴、既往歴がある場合は医師に相談する。大腸がんや前がん病変の治療中・経過観察中の人も、住民検診ではなく主治医が示す検査日程を優先する。

日本消化器内視鏡学会によると、鎮静薬は呼吸を弱めたり血圧を下げたりする場合があり、高齢者、肝機能・腎機能障害や呼吸不全がある人では偶発症の危険が高まる。妊娠中・授乳中の人は、検査の目的を含めて担当医との相談が要る。持病と薬を予約時に伝え、前処置と鎮静の方法を確認する。

抗血小板薬や抗凝固薬は、内視鏡で行う処置と薬の種類により休薬の判断が変わり、休薬中には血栓塞栓症の危険もある。自己判断で止めず、処方医と内視鏡担当医の指示を受ける。

陰性でも次は1年後、症状があれば診療へ

陰性は今回の検体で血液を検出しなかったという結果で、大腸がんを完全に除外する判定ではない。症状がなければ1年後に再び検診を受ける。血便、腹痛、便の性状や排便回数の変化が出た場合は、陰性結果があっても次回を待たず受診する。

直近の全大腸内視鏡検査で異常なしとなり、その後の便潜血検査が陽性だった人には別の不確実性がある。再度内視鏡を受けるかについて国の方針は本稿執筆時点で定まっていない。前回の検査時期と結果を持ち、検査を担当した医師に相談する。

よくある質問

便潜血陽性は大腸がんの確定なのか
確定ではない。2019年度の市区町村検診では、要精密検査者のうち大腸がんが見つかった割合は約3.1%だった。ただし、個人の確率は年齢や受診歴で変わり、陽性後の精密検査は省けない。

2本のうち1本だけ陽性でも内視鏡が必要なのか
必要だ。大腸の病変は毎日出血するとは限らず、1日分でも陽性なら要精密検査になる。

便潜血をもう一度調べて陰性なら終わりでよいのか
再検は精密検査の代わりにならない。出血のない日に陰性へ変わっても、大腸の病変を除外した結果にはならない。

陰性なら翌年の検診まで何もしなくてよいのか
症状がなければ1年後に受ける。血便、腹痛、便の性状や排便回数の変化があれば、次回を待たず医療機関を受診する。