子宮頸がん検診は、自覚症状のない人から子宮頸部の前がん病変や早期がんを見つけるための検査だ。ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus、HPV)の感染が長く続くと発症につながる場合がある。国立がん研究センターは、子宮頸がんの95%以上がHPVの2年以上の持続感染から発生する一方、感染の多くは2年以内に検出されなくなり、感染者全員ががんへ進むわけではないと説明している。
HPVワクチンは特定の型への感染を防ぐ一次予防、検診は細胞の変化や感染を調べる二次予防で、役割が異なる。厚生労働省は、9価ワクチンが子宮頸がんの原因の80〜90%を防ぐとする一方、すべての高リスク型を防ぐわけではないため、ワクチンと検診の両方が必要だとしている。接種歴は検診を省く条件にならない。
不正出血やおりものの異常は検診を待たず受診
月経以外の出血、閉経後の出血、性交時の出血、おりものの異常、下腹部痛がある場合は、次回の検診日を待たず産婦人科を受診する。日本産科婦人科学会は、初期の子宮頸がんでは自覚症状がほとんどなく、進行すると不正性器出血、性交時出血、おりものの異常、下腹部痛が現れるとして、早めの受診を案内している。
検診は無症状の人を対象とする。国立がん研究センターは、不正出血や月経不順がある人に、検診ではなく公的医療保険を使った診療をすぐ受けるよう案内している。前回の検診が「精検不要」でも、症状があれば次回まで待たない。
接種後も検診──予防と早期発見の役割が違う
ワクチンは感染前の予防を担うが、すでに感染しているHPVを排除するものではない。接種したワクチンが対象としない高リスク型もある。接種時期や製剤にかかわらず、対象年齢になったら自治体や職場の案内に沿って検診を受ける。
子宮頸部細胞診は、ブラシやヘラで採った細胞を顕微鏡で調べ、異常な細胞がないかを見る。HPV検査単独法は、同じく子宮頸部から採った細胞でHPV感染の有無を調べる。陽性なら残った同一検体で細胞診を行い、感染と細胞変化の組み合わせから次の検査を決める。住民検診のHPV検査は、ウイルスの活性や濃度を本人が読み取って受診時期を決める仕組みではない。
日本の標準は細胞診20歳から2年に1回
厚生労働省の現行指針は、市区町村の子宮頸部細胞診を20歳以上の女性に原則2年に1回行い、20〜69歳には特に受診を勧めている。HPV検査単独法は30歳以上を対象に原則5年に1回とし、特に30〜60歳へ勧めている。20歳代は細胞診の対象となる。
HPV検査単独法は、追跡と精度管理の体制を整えた自治体だけが住民検診に導入する。細胞診とHPV検査のどちらを採用するかは自治体が決めるため、受診者が窓口で自由に選ぶ制度ではない。居住する市区町村の受診券、公式サイト、広報で検査方法と対象年度を確認する。
導入は全国一律ではない。厚生労働省が2026年5月に実施した調査では、2025年度までに導入した自治体は7、2026年度に導入済みまたは導入予定は1だった。調査は1,741自治体中1,469自治体の回答に基づく。全国の市区町村別導入状況を網羅した公的一覧は、本稿執筆時点で確認できていない。
結果ごとに2年後・1年後・直ちに精密検査
細胞診が「精検不要」なら、症状がない限り次回は2年後となる。「要精検」なら症状の有無にかかわらず、指定された医療機関でコルポスコープによる観察や組織診などの精密検査を受ける。細胞診だけでがんの診断が確定するわけではない。
HPV検査単独法が陰性なら、次回は原則5年後だ。陽性の場合は同一検体の細胞診を加え、細胞変化がなければ「要追跡精検」として1年後にHPV検査を受ける。細胞変化も見つかった「要確定精検」なら、指定された専門医療機関で直ちにコルポスコープと組織診を受ける。HPV陽性は感染を示す結果で、子宮頸がんの確定診断ではない。
推奨間隔より多く受けても利益は増えない
細胞診とHPV検査には、病変があっても拾えない偽陰性、病変がない人を精密検査へ回す偽陽性、生命予後に影響しない病変を見つける過剰診断、検査に伴う偶発症がある。厚生労働省は、こうした利益と不利益を説明した上で検診を行うよう指針に定めている。
国立がん研究センターは、本来2〜5年に1回で効果がある検診を毎年受けても効果は上がらず、偽陽性などの不利益が増える可能性があるとしている。前回結果と自治体の案内に従い、自己判断で間隔を短くしない。一方、症状が出た場合はこの間隔に関係なく診療を受ける。
20歳未満・妊娠中・治療中は一般日程を当てはめない
20歳未満の小児と若年者は、国の対策型検診の対象ではない。症状や既往歴がある場合は一般の検診日程を当てはめず、産婦人科または小児・思春期の診療を扱う医療機関へ相談する。
月経中は検体に血液が混じるため、検診日を可能な範囲でずらす。妊娠中の検査は望ましくないとされ、受診する場合も時期を含めて事前に産科医へ相談する。持病がある人や常用薬がある人も、予約時に医師へ伝え、日程を確認する。
前がん病変の治療後や経過観察中は、住民検診より主治医が示す日程を優先する。子宮全摘後は子宮頸部の有無で検診対象が変わるため、手術名だけで判断せず主治医へ確認する。経過観察を終えて検診へ戻る時期も主治医と決める。
よくある質問
HPVワクチンを接種したら子宮頸がん検診は不要になるのか
不要にはならない。ワクチンはすべての高リスク型を防ぐわけではなく、既存の感染を排除するものでもない。接種後も対象年齢と自治体の案内に沿って検診を受ける。
細胞診は何歳から、どのくらいの間隔で受けるのか
市区町村の対策型検診は20歳以上が対象で、原則2年に1回だ。20〜69歳には特に受診が勧められている。実施月、費用、申込方法は自治体や職場の案内で確認する。
細胞診とHPV検査を自分で選べるのか
住民検診では自由に選ぶ制度ではない。自治体が細胞診かHPV検査単独法のどちらを採用する。HPV検査単独法を実施していない地域では、対象年齢になっても住民検診としては受けられない。
HPV検査が陽性なら子宮頸がんなのか
確定診断ではない。同じ検体の細胞診結果と合わせて判定し、「要追跡精検」なら1年後のHPV検査、「要確定精検」なら直ちにコルポスコープと組織診へ進む。
検診が陰性なら次回まで症状を待ってよいのか
待たない。月経以外や閉経後の出血、性交時出血、おりものの異常、下腹部痛があれば、陰性結果があっても次回検診を待たず産婦人科を受診する。
出典・参考資料
- がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(厚生労働省)子宮頸部細胞診とHPV検査単独法の対象年齢、受診間隔、追跡検査、検診の利益と不利益
- 子宮頸がん検診について(国立がん研究センター がん情報サービス)HPV感染と子宮頸がん、細胞診とHPV検査の違い、判定後の流れ、妊娠中と治療後の注意
- HPVワクチンに関するQ&A(厚生労働省)9価HPVワクチンが対象とする型、接種後も子宮頸がん検診が必要な理由、日本の検診方法
- 子宮頸がん(日本産科婦人科学会)自覚症状、受診の目安、HPVワクチン接種後の子宮頸がん検診
- HPV検査単独法の導入状況について(厚生労働省)2026年5月調査に基づく市区町村の導入状況と回答率