マンモグラフィは、乳房を圧迫して撮影し、小さなしこりや石灰化を探す乳房専用のX線検査だ。日本の対策型乳がん検診では、この検査が40歳以上の標準となる。乳腺の割合が高い「高濃度乳房」では病変が見えにくくなるが、マンモグラフィで何も見えないという意味ではなく、定期検診をやめる理由にもならない。
2026年には、補助超音波の長期的な効果を調べた国内試験の追跡結果が公表された。超音波併用群で進行乳がんの累積罹患率が低かった一方、乳がん死亡率の低下はまだ確認していない。高濃度乳房なら全員が超音波を追加する、マンモグラフィと超音波を毎年交互に受けるという全国共通の日程は定まっていない。
しこり・血性分泌・ひきつれは検診を待たない
新たなしこり、乳房のひきつれ、乳首から血の混じった液が出る、乳首に湿疹やただれがあるといった変化に気づいた場合は、次回の検診を待たず医療機関を受診する。国立がん研究センターは、こうした症状がある人は検診の対象ではなく、すぐに医療機関を受診するよう案内している。直近のマンモグラフィが「精検不要」でも扱いは変わらない。
検診は症状のない集団からがんの可能性がある人を拾い上げる仕組みで、症状の原因を診断する検査ではない。この線引きは、便潜血検査や低線量CTなど、ほかのがん検診にも共通する。
日本の対策型検診は40歳以上、2年に1回
厚生労働省の2025年7月改正指針は、市町村に住む40歳以上の女性を乳がん検診の対象とし、質問とマンモグラフィを原則2年に1回行うと定めている。特に受診を勧める年齢は40〜69歳だ。70歳以上も対象から外しておらず、対象年度、申込方法、自己負担の有無は居住自治体や職場の案内で確認する。
マンモグラフィには乳がん死亡率を下げる効果が示されている一方、がんがあっても拾えない偽陰性、がんがない人を要精検とする偽陽性、生命予後に影響しないがんを見つける過剰診断がある。国立がん研究センターは、40歳から2年ごとという年齢と間隔を守り、利益と不利益の釣り合いを踏まえて受診するよう示している。
高濃度乳房──病気ではなく、画像の見え方を左右する構成
乳房は乳腺と脂肪で構成され、その割合をマンモグラフィで「脂肪性」「乳腺散在」「不均一高濃度」「極めて高濃度」の4段階に分ける。後ろの2区分を合わせた呼び方が高濃度乳房だ。マンモグラフィでは乳腺と病変がともに白く写るため、白い部分が多い高濃度乳房では病変が乳腺に重なって見つかりにくい。微細な石灰化など、マンモグラフィが捉えやすい所見もある。
日本乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本乳がん検診精度管理中央機構の2026年見解は、乳房構成を病気や異常所見ではなく身体的特徴とし、高濃度乳房だけを理由に要精検とするのは適切でないと説明する。同じ見解は、マンモグラフィで病変を検出しにくいことと、乳がん罹患リスクが相対的に高いことも示している。病気ではない一方、検診の限界と乳がんリスクに関わる情報である。
乳房構成が結果票に書かれるかは地域で異なる。厚生労働省が2026年3月に集計した1,347市町村のうち、乳房構成を全部または一部の受診者へ通知していたのは277市町村、21%だった。結果票に記載がない場合、そのことだけから高濃度乳房ではないとは判断できない。
J-START──超音波併用で感度上昇、要精検も増加
超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial、J-START)は、40〜49歳の無症状女性をマンモグラフィと超音波の併用群、マンモグラフィ単独群に無作為に分けた国内試験だ。2016年の初回報告では、感度は併用群91.1%、単独群77.0%と併用群が高く、特異度は87.7%対91.4%と併用群が低かった。感度の上昇はがんの見逃しが減る方向を、特異度の低下はがんがない人が追加検査へ回る割合が増える方向を表す。
追加検査の増加は数字にも表れた。2021年に公表された初回検診の二次解析では、要精検率は併用群13.8%、単独群8.6%、生検率は5.5%対2.1%だった。超音波で見つかる病変が増えても、追加検査を受けた全員にがんが見つかるわけではない。
2026年の長期解析は、40〜49歳の無症状女性72,661人を中央値約11年追跡し、ステージII以上の乳がん累積罹患率が併用群で低かったと報告した。ハザード比は0.83だった。これは事前に定めた二次解析で、乳がん死亡率を比較した結果ではない。40歳代を対象に2年間で2回検診した試験であり、別の年齢層や毎年の交互検査へ直接外挿できない。
超音波を一律に足さない理由
国内の案内は更新の途中にある。国立がん研究センターの一般向け情報は、マンモグラフィと超音波を同時に受ける方法も、2年ごとのマンモグラフィの間に超音波を受ける方法も現時点で推奨していない。2026年の国内3団体見解は、感度上昇と進行乳がん減少の可能性を評価しつつ、死亡率減少が未確認であること、偽陽性と過剰診断、検査技術と精度管理の地域差を課題に挙げた。対策型検診の標準検査に超音波を位置づけるかは、引き続き検討する段階だとしている。
高濃度乳房との通知だけで、直ちに追加検査が必要になるわけではない。検診結果が「要精検」の場合や症状がある場合に行う超音波は、疑わしい部位を調べる診療上の検査であり、無症状の人が高濃度乳房だけを理由に追加する補助検診とは目的が異なる。追加を検討する場合は、乳房構成だけで決めず、年齢、家族歴、既往歴、過去画像と今回の判定を医師と確認する。
40歳未満・妊娠中・治療中は同じ日程を当てはめない
国の40歳以上・2年に1回という日程は、症状のない一般集団に向けたものだ。小児や30歳代を含む40歳未満、妊娠・授乳中の人へ同じ日程をそのまま当てはめない。30歳代について、厚生労働省は日頃から乳房の状態を意識し、異常があれば早期に専門の医療機関を受診するよう指針に記している。妊娠中や授乳中に変化がある場合は、検診時期を自己判断せず、産科または乳腺を扱う医療機関へ相談する。
乳がんや別の乳房疾患で治療中・経過観察中の人は、住民検診より主治医が示す日程を優先する。持病、胸部の植込み型機器、豊胸術や乳房手術の既往、常用薬がある人は予約時に伝え、撮影の可否や追加検査時の対応を検診施設または主治医に確認する。
結果は「乳房構成」と「要精検」を分けて読む
「高濃度乳房」は画像上の乳房構成、「要精検」はがんの疑いを詳しく調べる必要があるという検診判定だ。高濃度乳房でも精検不要なら、症状がない限り次回の定期マンモグラフィが基本となる。要精検なら結果通知に従って医療機関を受診し、追加撮影、超音波、細胞診や組織診などから必要な検査を受ける。
ブレスト・アウェアネスは、決まった手順で病変を探して自己診断する方法ではない。普段の乳房の状態を知り、しこり、ひきつれ、血性分泌、乳首の湿疹やただれといった変化があれば診療につなぐ生活習慣を指す。定期マンモグラフィの代わりにはならない。
よくある質問
日本の乳がん検診は何歳から、どのくらいの間隔で受けるのか
対策型検診は40歳以上を対象に、質問とマンモグラフィを原則2年に1回行う。特に受診を勧める年齢は40〜69歳で、対象年度や申込方法は自治体または職場の案内で確かめる。
高濃度乳房は病気なのか
病気や異常所見ではなく、乳腺と脂肪の割合を示す身体的特徴だ。ただし、マンモグラフィで病変が隠れやすく、乳がん罹患リスクも相対的に高いという二つの意味を持つ。
高濃度乳房なら超音波を追加するのか
高濃度乳房だけを理由に一律追加する基準にはなっていない。国内試験では感度上昇と進行乳がんの減少が示されたが、偽陽性や生検も増え、死亡率減少は未確認だ。全国の対策型検診で標準にするかは検討が続いている。
マンモグラフィが精検不要なら症状を放置してよいのか
放置しない。しこり、ひきつれ、血性の乳頭分泌、乳首の湿疹やただれに気づいたら、次回検診を待たず医療機関を受診する。
自己触診はマンモグラフィの代わりになるのか
代わりにはならない。普段の状態と変化を意識するブレスト・アウェアネスは受診につなげるための習慣で、検診や診断そのものではない。
出典・参考資料
- がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和7年7月1日一部改正)(厚生労働省)対策型乳がん検診の対象年齢、受診間隔、検診項目、ブレスト・アウェアネス
- 乳がん検診について(国立がん研究センター がん情報サービス)40歳から2年に1回のマンモグラフィ、症状がある場合の受診、超音波併用の位置づけ
- 乳がん 検査(国立がん研究センター がん情報サービス)マンモグラフィと高濃度乳房の見え方、診断時の超音波検査
- 対策型乳がん検診における「乳房構成の通知」に関する見解(日本乳癌検診学会・日本乳癌学会・日本乳がん検診精度管理中央機構)高濃度乳房の位置づけ、超音波併用の利益と不利益、2026年時点の標準化の課題
- 高濃度乳房について(厚生労働省)乳房構成の年齢層別調査、自治体の通知状況、ガイドライン更新状況
- Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in J-START(The Lancet / PubMed)J-START初回検診の感度、特異度、がん発見率
- Evaluation of Adjunctive Ultrasonography for Breast Cancer Detection Among Women Aged 40-49 Years With Varying Breast Density(JAMA Network Open / PubMed Central)乳房構成別の二次解析、要精検率と生検率
- Cumulative incidence of advanced breast cancer in women aged 40-49 years in J-START(The Lancet / PubMed)2026年の長期追跡二次解析、ステージII以上の乳がん累積罹患率