英国最高裁は、親パレスチナの直接行動団体パレスチナ・アクション(Palestine Action)に対する禁止指定の適法性を審理する。共同創設者フダ・アモリ氏の申立てを一部認めたもので、指定そのものを取り消した判断ではない。7月30日にはロンドンのウェストミンスター治安判事裁判所前で抗議があり、警察は117人を逮捕した。
最高裁が審理するのは政策適用
英国最高裁の事件ページによると、セールズ卿、レガット卿、シムラー判事は7月29日、二つの上告理由のうち第1理由だけを許可し、第2理由を退けた。事件は迅速に扱い、2026年の秋期に審理する。報道では10〜12月が見込まれている。
許可された第1理由は、イベット・クーパー前内相が禁止指定に関する政府自身の政策を正しく適用したかという問題だ。欧州人権条約10条の表現の自由と11条の集会・結社の自由に対する介入が比例的だったかを問う第2理由は、今回の上告対象に入らない。最高裁での核心は、抗議の是非を広く判断することではなく、内相の行政判断が定められた政策に沿っていたかに絞られる。
高裁と控訴院で分かれた判断
高等法院は2026年2月、内相の理由づけが政府方針と整合せず、禁止指定は欧州人権条約10条、11条とも相いれないとしてアモリ氏側を支持した。控訴院は6月、この二点をともに覆した。英国司法府の判決ページによると、控訴院ではイングランド・ウェールズ首席判事ら5人の合議体が審理し、判決は2026年6月15日に言い渡された。
禁止指定は最高裁の判断まで効力を保つ。上告許可はアモリ氏側に本案審理への道を開いたにすぎず、禁止の違法性を認定したものではない。
禁止指定で何が犯罪になるのか
パレスチナ・アクションは2020年に発足し、英国からイスラエルへの軍需品供給に反対して企業や施設を標的にした直接行動を重ねた。転機となったのは2025年6月20日の英空軍ブライズ・ノートン基地への侵入である。クーパー氏は3日後の議会声明で、同団体を2000年テロリズム法3条にもとづき禁止指定する方針を表明し、基地での事件を過去から続く重大な器物損壊の一例に挙げた。指定命令は上下両院の承認を経て、同年7月5日に発効した。
英内務省の公式説明では、禁止組織への所属、支持の勧誘、相手に支持を促すおそれを顧みない支持意見の表明、支持者と疑わせる衣服や物品の公の場での表示などが犯罪となる。所属や支持の勧誘などに対する最高刑は禁錮14年で、物品表示は禁錮6月または罰金の対象だ。パレスチナ問題やイスラエル政府への反対を表明する行為が一律に禁じられたわけではなく、禁止組織そのものへの支持に当たるかが境界になる。
117人逮捕、刑事事件は最高裁待ち
当日の現地報道によると、7月30日にウェストミンスター治安判事裁判所前で逮捕されたのは117人で、大半は指定組織への支持を表明した疑い、4人は犯罪の奨励または幇助の疑いだった。予定されていた2,000件超の関連事件は10月に延期された。逮捕は犯罪の確定を意味せず、個々の事件で起訴や有罪判断が出たわけではない。
英政府の公式統計では、指定発効後から2026年3月末までにパレスチナ・アクションへの支持に関連して2,819人がテロ関係事案として逮捕され、484人が起訴された。この集計は7月30日の逮捕を含まず、報道で示される「3,000人超」と直接比較する際には期間の違いに注意が要る。
次に決まること
最高裁が判断するのは、前内相が自らの政策を正しく適用したかである。アモリ氏側が勝てば指定判断の法的基盤が再び揺らぎ、政府側が勝てば控訴院判断が維持される。判決時期と、保留中の刑事事件をいつ再開するかは公表されていない。
日本の外務省や在英日本大使館が、この訴訟の審理範囲や一連の逮捕を独自に検証した公表資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。日本語で流通する数字を読む際も、英国政府の集計期間と当日報道の速報値を分ける必要がある。
よくある質問
最高裁はパレスチナ・アクションの禁止を解除したのか
解除していない。上告理由の一部について本案審理を認めた段階で、禁止指定は効力を保っている。
最高裁では表現の自由も審理されるのか
今回許可された上告理由には含まれない。審理対象は、前内相による政府方針の適用が適法だったかという点だ。
パレスチナ支持の表明は英国で違法なのか
一律に違法ではない。英国政府は、パレスチナ人の権利擁護やイスラエル政府への反対と、禁止組織パレスチナ・アクションへの支持を区別している。
出典・参考資料
- R (on the application of Ammori) v Secretary of State for the Home Department(UK Supreme Court)上告の争点、下級審の判断、上告許可日、許可された理由の範囲、担当判事と審理迅速化を示す事件ページ
- Proscribed terrorist groups or organisations(UK Home Office)禁止指定の要件、2000年テロリズム法11〜13条に定める犯罪と刑罰、パレスチナ・アクションの指定を説明する政府資料
- Home Secretary -v- Huda Ammori(Courts and Tribunals Judiciary)控訴院判決の事件番号、判決日、5人の構成判事を示す英国司法府の判決ページ
- Statement on the decision to proscribe Palestine Action(UK Parliament)2025年6月20日のブライズ・ノートン空軍基地侵入と、当時の内相が指定方針を表明した理由を記録した議会声明
- Operation of police powers under the Terrorism Act 2000: quarterly update to March 2026(UK Home Office)2026年3月末までのパレスチナ・アクション支持に関連する逮捕者数と起訴数の公式統計
- UK court allows Palestine Action appeal as 117 arrested at movement's protest(Israel National News)2026年7月30日の抗議での逮捕者117人、逮捕容疑の内訳、2,000件超の事件延期を伝えた当日報道