ルイジ・マンジョーネ(Luigi Mangione)被告は2026年8月14日、ニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁で、ユナイテッドヘルスケア最高経営責任者(CEO)ブライアン・トンプソン(Brian Thompson)氏の死亡につながった二つのストーキング罪について有罪を認めた。被告は2024年12月4日にマンハッタンでトンプソン氏を撃ち、死亡させたと法廷で認めた。連邦事件は量刑段階に移ったが、ニューヨーク州の殺人罪事件は残り、弁護側は同じ行為を二度訴追する「二重の危険」に当たるとして州事件の棄却を求めている。

認めたのは二つの連邦ストーキング罪

米司法省ニューヨーク南部地区連邦検事局によると、マンジョーネ被告が認めたのは、州間移動を伴うストーキング致死罪と、州際通信手段を用いたサイバーストーキング致死罪の各1件で、いずれも法定上限は終身刑である。マーガレット・ガーネット(Margaret Garnett)連邦地裁判事は量刑言い渡しを12月18日に設定した

今回の有罪答弁(guilty plea)には、検察と量刑を取り決める合意がない。AP通信は、検察と弁護側の双方が取引や見返りはないと説明し、検察は12月の量刑で終身刑を求める方針だと報じた。裁判官が被告から事実関係と答弁の自発性を確認して有罪答弁を受け入れたため、2027年1月に予定されていた連邦公判は開かれない。

政府側が算定した連邦量刑ガイドラインの範囲は24~30年だが、ガーネット判事はガイドラインにも当事者の主張にも拘束されず、適切と判断する刑を決めると法廷で説明した。終身刑は検察の求刑方針であり、確定した刑ではない。

木製の法壇と肖像画が並ぶ米国の法廷内部(イメージ)

死刑対象の連邦罪は1月に棄却

有罪答弁は死刑を避けるための取引ではない。死刑の可能性は、その半年前に連邦事件から外れていた。ガーネット判事は2026年1月30日、銃器を使用した殺人罪と関連銃器罪を棄却した。死刑対象の殺人罪には前提となる「暴力犯罪」が必要だが、連邦ストーキング罪は構成要件上、必ずしも物理的な力の行使を伴わないため、その前提を満たさないと判断した

連邦検察は2月27日、棄却決定を第2巡回区連邦控訴裁判所へ上訴しないとガーネット判事に通知した。残った二つのストーキング罪でも終身刑はあり得るが、死刑は選択肢から外れた。

連邦と州は別の「主権」

米国憲法修正第5条の二重の危険禁止条項(Double Jeopardy Clause)は、同じ犯罪で同一人を二度訴追・処罰することを禁じる。ただし、米国の連邦と各州は刑事法を定めて執行する別々の主権と扱われる。米最高裁は2019年のGamble v. United States判決で、一つの行為が二つの主権の法律に違反する場合は二つの犯罪が成立し、州の訴追後に連邦が同じ行為を訴追しても修正第5条には反しないとする従来の法理を維持した。順序が連邦から州になっても、憲法上の出発点は同じだ。

日本にも再度の刑事責任追及を防ぐ規定がある。日本国憲法第39条は、すでに無罪とされた行為について刑事上の責任を問わず、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問わないと定める。米国では「同じ行為」かという日常語の感覚より、どの主権のどの法律に対する犯罪かが先に問われるため、日本の一事不再理をそのまま当てはめると制度を見誤る。

日本の法務省や裁判所が、この事件のニューヨーク州法上の争点を解説した公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。本稿では米国の裁判資料、法令、最高裁判例を基に争点を整理した。

ニューヨーク州法には、より広い別訴規制

連邦憲法が州事件を直ちに阻まなくても、ニューヨーク州法は別の審査を求める。同州刑事訴訟法(Criminal Procedure Law)40.30条は、米国内の裁判所に起訴され、手続きが有罪答弁による有罪判決で終わった場合を、二重訴追規制の前提となる「前の訴追」に含めている。マンジョーネ被告の有罪答弁を受け、弁護側が州事件の棄却を改めて申し立てたのはこのためだ。

もっとも、先行する有罪答弁があれば後の事件が必ず消えるわけではない。同法40.20条は、同じ行為または一連の犯罪取引に基づく別訴を原則として禁じる一方、二つの罪の構成要件が実質的に異なり、各罪を成立させる行為が明確に区別される場合などには別訴を認める。マンハッタン地区検察局は、州の殺人・銃器罪と、州間移動や通信手段の使用を要件とする連邦ストーキング罪では、構成要件と対象行為が異なるとして申立てに反対する。

弁護側は、両事件の中心は2024年12月4日の同じ銃撃であり、連邦でその事実を認めた後に州が二級殺人罪を審理すれば二重訴追になると主張する。州側は、連邦罪が州境を越えた移動や事前の追跡を含むのに対し、州罪はニューヨークでの殺人と銃器所持を対象にすると反論する。どちらの整理を採るかは、州裁判所のグレゴリー・カーロ(Gregory Carro)判事が今後判断する。

州事件は9月8日の陪審員選任を維持

ニューヨーク州裁判所の8月11日付資料によると、州事件には二級殺人1件、銃器所持7件、偽造文書所持1件の計9件が残り、公判は9月8日に始まる予定である。同日の命令は、陪審員への嫌がらせや外部からの圧力を防ぐため、氏名は当事者と弁護士以外に、住所は弁護士以外に開示せず、公開法廷では番号を使うと定めた

ただし、9月8日に予定通り陪審員選任へ進むかは、棄却申立てへの判断に左右される。州裁判所が申立てを退けても決定は上訴の対象となるため、州事件を開けるかという争いが直ちに確定するとは限らない。連邦側では12月18日の量刑手続が残り、州側では公判そのものを続けられるかが先に争われる。

よくある質問

連邦で有罪を認めたため、ニューヨーク州事件も自動的に終わるのか
自動的には終わらない。弁護側は州事件の棄却を申し立てたが、州裁判所はまだ判断しておらず、陪審員選任は9月8日に予定されている。

同じ銃撃について連邦と州がそれぞれ訴追してよいのか
連邦憲法上は、連邦と州を別の主権とする米最高裁判例が双方の訴追を認める。ニューヨーク州法は別訴をより広く制限しており、今回の連邦罪と州罪が例外に当たるかが未決着だ。

マンジョーネ被告には現在も死刑の可能性があるのか
連邦事件では死刑対象だった二つの罪が2026年1月に棄却され、検察も上訴しなかった。被告が認めた二つのストーキング罪の法定上限は、それぞれ終身刑である。

連邦事件の刑期は何年になるのか
12月18日の言い渡しまで決まらない。政府側の量刑ガイドライン算定は24~30年だが、検察は終身刑を求める方針で、最終判断はガーネット判事が下す。