介護の見守り機器は、ベッド脇のマット、身に着ける加速度センサー、室内カメラ、ミリ波レーダーまで方式が幅広い。決められた値を超えたら通知する機器もあれば、機械学習(Machine Learning)で動作の特徴を分類する機器もある。「介護テクノロジー」や「AI見守り」という表示は製品群を示す言葉であり、判定精度や介護現場への適合を保証する認証ではない。

日本の重点分野はAIを共通要件にしていない

厚生労働省と経済産業省は2024年6月、介護テクノロジー利用の重点分野を9分野16項目に改訂し、2025年4月から新しい区分を運用する方針を示した。対象には移乗、排泄、入浴、機能訓練などと並んで、施設と在宅の「見守り・コミュニケーション」が入る。

在宅向け見守りの定義は、各種センサーと外部通信機能を備え、状態や変化を検知して家族や介護従事者へ通知し、情報を蓄積する機器やシステムとしている。端末の携行を必須とせず、浴室や暗所への対応などは加点項目だ。一方、AIや機械学習の搭載は共通の必須要件に含まれない。つまり、重点分野への該当と「AI製品であること」は同じ意味ではない。

天井に設置したミリ波レーダーが人体の動きを点群として捉える図(イメージ)

固定ルールと学習モデル──違いは判定の中身

センサーと判定ロジックは分けて考える必要がある。加速度計、圧力マット、レーダー、カメラは動きや荷重を測る入口だ。その値を一定の閾値と照合するのか、複数の特徴を学習済みモデルへ入れて転倒らしさを分類するのかは、次の処理に当たる。同じレーダーでも固定ルールは組めるため、「ミリ波だからAI」とは限らない。逆に、カメラを使わない機器でも学習モデルは実装しうる。

学習モデルなら常に精度が高いとも断定できない。2026年にScientific Reportsへ掲載されたミリ波レーダーの研究は、健康な成人10人による模擬転倒で全体精度97.9%を報告した一方、日常動作を含む試験の精度は86.5%に下がり、人数が増えると見逃しが増えた。研究チーム自身も、模擬した転倒は実際の転倒と生体力学的に異なるとしている。製品資料の「精度」には、対象者、部屋の広さ、障害物、日常動作、測定期間が伴っているかを見る必要がある。

登録番号は性能保証ではない

製品を探す入口の一つが、公益財団法人テクノエイド協会の福祉用具情報システム(TAIS)だ。仕様、機能、性能などの情報を検索でき、登録製品にはTAISコードが付く。ただし、同協会の運用案内は、登録が製造・輸入事業者の任意申請に基づき、製品の安全性や有効性を保証するものではなく、登録品のすべてが介護保険給付や都道府県の補助対象になるわけでもないと明記している。コードの有無と、実環境での性能評価は切り分けるべきだ。

日本の介護保険による福祉用具貸与は、「スマート機器」を一括して給付する制度ではなく、対象種目ごとに運用される。厚生労働省が示す貸与対象は車いす、特殊寝台、認知症老人徘徊感知機器などの種目で、利用者はケアマネジャーと福祉用具貸与事業者に相談して用具を決める。介護事業所向けの導入支援は都道府県を通じた別の仕組みである。誰向けの制度か、保険給付か事業者補助かを先に確認しないと、製品の掲載情報をそのまま利用者個人への給付と取り違える。

介護する家族がタブレット端末で複数の見守り機器の仕様を比較する様子(イメージ)

誤報と見逃しを同じ表で見る

転倒検知で見るべき数字は正解率一つではない。実際の転倒を拾った割合である感度、転倒ではない動作を正しく除外した割合である特異度、通知のうち本当に転倒だった割合である適合率は、それぞれ違う。転倒しない時間が圧倒的に長い環境では、全体の正解率が高くても誤報が運用を圧迫する場合がある。

転倒検知ウェアラブルのシステマティックレビューをまとめた2021年のアンブレラレビューは、虚弱な高齢者が暮らす実環境で精度を確かめる質の高い研究がさらに必要だと結論づけた。実験室で若い参加者が行った模擬転倒と、住宅や介護施設で起きる転倒は同じではない。国内で流通する見守り機器についても、共通条件で測った誤報率と見逃し率を横断比較できる公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。

導入前に残すべき確認項目

確認項目は「AI搭載か」より具体的にする。何を検知し、通知まで何秒かかるのか。感度、特異度、適合率はどの対象者と環境で測ったのか。誤報時に閾値を調整できるのか。停電、通信断、センサーの死角をどう知らせるのか。試用期間中に実際の居室で誤報と見逃しを記録し、家族や介護職が対応可能な通知量かを確かめる。

データの確認も欠かせない。カメラ画像を保存するのか、端末内で解析して結果だけを送るのか、クラウドへ送るなら保存先、保存期間、閲覧権限、契約終了時の削除方法はどうなるのか。個人情報保護委員会は、カメラ画像や顔特徴データを扱うシステムについて、利用できる従業者の限定、責任者と規程の整備、アクセス制御、漏えい防止、アクセスログの取得・分析などを安全管理措置として挙げている。映像を使わないレーダーにも、行動履歴を誰が保管するかという問いは残る。

よくある質問

「介護テクノロジー」に該当すればAI製品なのか
そうとは限らない。国の重点分野はセンサー、通信、状態変化の検知・通知などを定義しているが、AIの搭載を共通要件にしていない。判定方法は製品ごとに確認する必要がある。

TAISコードがあれば性能は国に認められているのか
TAISは選定に役立つ製品情報のデータベースだ。運営者は登録製品の安全性や有効性を保証しないと明記しており、コードだけで転倒検知の性能は判断できない。

カメラを使わない見守り機器なら個人情報の問題はないのか
映像を保存しなくても、在室、離床、睡眠、移動などの履歴が個人と結び付く場合がある。取得項目、送信先、保存期間、閲覧者、削除方法を導入前に確認する必要がある。