AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、旧称GOT)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ、旧称GPT)は、肝臓などの細胞が傷ついたときに血液中へ流れ出る酵素だ。日本医師会は、ASTは肝臓のほか心臓や骨格筋にも含まれ、ALTの大部分は肝細胞に含まれると説明している。このためALTは肝細胞の傷害をより強く反映する一方、ASTだけの上昇は筋肉など肝臓以外の影響も検討する。

検査票では「肝機能」の欄に並ぶが、両者だけで肝臓の合成・排泄能力や形を測るわけではない。数値が高ければ原因の評価が必要になり、基準範囲内でも慢性肝疾患や肝がんを除外したことにはならない。国内で、ASTとALTが施設基準内だった健診受診者のうち、画像検査などで肝疾患が見つかる割合を示す最新の公的な全国統計は、本稿の執筆時点で確認できていない。

119番を急ぐ症状──検査票より先に見る

反応が鈍い、受け答えがおかしい、意識がない、血を吐く、便に血が混じる、真っ黒い便が出る場合は、健診結果の数値にかかわらず119番を急ぐ。厚生労働省は、意識の障害、吐血、血便や黒色便を、成人が迷わず救急車を呼ぶ症状に挙げている。突然の激しい腹痛や呼吸困難も同じ扱いだ。

皮膚や白目が黄色い、腹部の張りや全身のむくみが新たに出た場合は、救急症状がなくても早めに医療機関へ相談する。国立国際医療センターは、肝硬変が進行したときの症状として、腹水、浮腫、黄疸、意識の低下を挙げている

「40以下」ではなく、検査票とALT30を分けて読む

ASTとALTの基準範囲は、測定法や検査施設の設定によって異なる。まず受け取った検査票の範囲と判定欄を確認する。その上で、日本には健診後の受診を促す別の目安がある。日本肝臓学会の「奈良宣言2023」は、健康診断などでALTが30U/Lを超えた場合、まずかかりつけ医を受診し、原因を調べ、必要なら消化器内科などの精密検査につなぐとしている

ALT30U/L超は病名を決める線でも、直ちに治療を始める線でもない。検査施設が「基準範囲内」と表示していても受診のきっかけになりうるという位置づけだ。前回値からの変化、飲酒、体重、糖尿病や脂質異常症、処方薬、市販薬、サプリメント、直前の激しい運動を医師に伝えると、再検査や追加検査を選ぶ材料になる。薬は自己判断で中止しない。

肝細胞が傷ついたときにASTとALTが血液中へ出る仕組みの図

AST・ALTは傷害、アルブミンなどは機能を映す

肝臓がたんぱく質を合成し、物質を処理して排泄する働きは、ASTとALTだけでは評価しない。日本肝臓学会の一般向け冊子は、肝細胞が合成するアルブミンと、解毒・排泄に関わるビリルビンなどを肝機能を反映する項目とし、AST、ALT、血小板、年齢から算出するFIB-4 indexを線維化の手がかりに挙げている。必要に応じて超音波による肝硬度測定やMRIなどを組み合わせる。

つまり「AST・ALTが正常」と「肝臓の機能と構造に問題がない」は同義ではない。反対に、ASTやALTが高いだけで原因や重症度も決まらない。医師は他の血液項目、過去の推移、病歴、画像を合わせて判断する。

肝がんはAST・ALTやAFPだけで判定しない

ASTとALTは肝がんの有無を調べる検査ではない。AFP(アルファ・フェトプロテイン)などの腫瘍マーカーも単独では確定診断にならない。国立がん研究センターは、肝細胞がんの有無や場所は腫瘍マーカーだけでは確定できず、超音波、CT、MRIなどの画像検査と合わせて医師が判断すると説明している。超音波にも、病変の場所や皮下脂肪の厚さによって十分に観察できない場合がある。

定期検査の対象と間隔は、全員一律ではない。同センターは、B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変と診断された人に、3〜6カ月ごとの超音波検査と腫瘍マーカー検査を勧めている。家族歴だけでこの間隔を自己適用せず、自分が対象かを担当医に確認する。

腹部超音波で肝臓の状態を確認する検査の様子(イメージ)

B型・C型肝炎は別の採血で確認

ASTとALTが基準範囲内でも、B型・C型肝炎ウイルスへの感染歴は判定できない。感染の有無はHBs抗原やHCV抗体など、目的の異なる採血で調べる。厚生労働省は、肝炎ウイルスは感染しても自覚症状に乏しいとして、すべての人が少なくとも一度は肝炎ウイルス検査を受ける必要があるとの考えを示している。保健所や自治体が委託する医療機関では無料検査があるが、日程、対象、費用は自治体ごとに異なる。

陽性歴がある人、慢性肝炎や肝硬変で通院中の人は、健診の判定より担当医の計画を優先する。検査結果を紛失した、過去に受けたか分からない場合は、自治体や医療機関に受検方法を確認する。

赤字の原因は一つに絞れない

ALT上昇の背景には、脂肪性肝疾患、飲酒、ウイルス性肝炎、薬剤による肝障害、自己免疫性の病気などがある。ASTは骨格筋の傷害でも上がりうる。数値の組み合わせだけで脂肪肝や飲酒を原因と決めず、必要な問診と検査を受ける。

厚生労働省の健康情報は、脂肪肝の主な要因に多量飲酒と生活習慣を背景にした肥満を挙げる一方、遺伝的な原因などで肥満でない人にも起こるとしている。体格だけで除外せず、体重、腹囲、血糖、脂質、飲酒量と画像所見を合わせて評価する。

B型・C型肝炎の採血検査と肝臓の画像検査を示す図

「肝臓に良い」健康食品で検査を代えない

ASTやALTを下げる目的で健康食品を追加しても、原因の診断や肝がんの定期検査の代わりにはならない。消費者庁は、錠剤・カプセル状の製品を複数使ったり、医薬品のような効果を期待したりしないよう注意を促し、医薬品との併用を自己判断で行わず、不調時は医師や薬剤師へ相談するよう求めている

受診時には処方薬と市販薬に加え、健康食品の製品名、成分表示、摂取開始日を伝える。数値を見栄えよくすることより、上昇の原因を特定し、必要な追跡から外れないことが先になる。

妊娠中、子ども、持病や常用薬がある人

本稿のALT30U/L超という目安は、成人の一般的な健康診断後に受診へつなぐ枠組みだ。妊娠中と子どもは年齢や妊娠経過に応じた評価が必要で、成人の数値をそのまま当てはめない。肝疾患の治療中、がん治療中、糖尿病などの持病がある人、処方薬やサプリメントを常用する人も、検査時期や追加項目を担当医と確認する。

よくある質問

GOTとGPTは、ASTとALTとは別の検査か
同じ検査の旧称だ。GOTがAST、GPTがALTに当たる。現在の報告書ではAST、ALTが一般的だが、括弧内に旧称が併記される場合がある。

ALTが30U/L以下なら受診しなくてよいのか
30以下だけを理由に受診不要とは決められない。検査票の判定、過去値、症状、肝炎ウイルス感染歴、治療歴を合わせて考える。黄疸やむくみなど新しい症状があれば医療機関へ連絡する。

ASTだけが高いと肝臓病なのか
ASTは心臓や骨格筋にも含まれるため、肝臓病だけを意味しない。激しい運動、筋肉の傷害、ほかの血液項目を含めて医師が原因を評価する。

ASTとALTが正常なら腹部超音波は不要か
一律には決まらない。B型・C型肝炎による慢性肝炎や肝硬変がある人には定期的な超音波検査などが勧められるため、担当医の計画を優先する。一般の健診受診者が自己判断で同じ間隔を当てはめるものではない。