LDLコレステロール(Low-Density Lipoprotein Cholesterol)は、健診結果の基準範囲だけでは管理の要否を決められない。日本では、健診で生活改善や受診を促す判定値と、動脈硬化性疾患を防ぐために個人ごとに定める管理目標が分かれている。
厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」は、LDLコレステロール120mg/dL以上を保健指導判定値、140mg/dL以上を受診勧奨判定値としている。一方、140mg/dL未満なら誰にとっても治療目標内、という意味ではない。病歴と将来の発症リスクを先に確かめる必要がある。
119番を急ぐ症状──LDLの数字より先に見る
LDL高値そのものから救急性を判断するのは難しい。ただし、突然の激しい胸や背中の痛み、急な息切れや呼吸困難、胸の中央を締めつけるような痛みや圧迫感が2〜3分続く場合は119番を急ぐ。厚生労働省は、これらをすぐに救急車を呼ぶ成人の症状として挙げている。
突然、顔の片側がゆがむ、片腕や片脚に力が入らない、ろれつが回らない場合も同様だ。厚生労働省の救急車利用案内は、顔半分の動かしにくさやゆがみ、話しにくさ、片側の腕や脚の脱力を119番の対象としている。健診の再検査を待つ場面ではない。
健診の判定値──120は指導、140は受診勧奨
厚生労働省の一般向け資料は、LDLコレステロール140mg/dL以上を高LDLコレステロール血症、120〜139mg/dLを境界域高LDLコレステロール血症とする。HDLコレステロールは40mg/dL未満、トリグリセライドは空腹時150mg/dL以上または随時175mg/dL以上、non-HDLコレステロールは170mg/dL以上が診断基準に当たる。
これらはスクリーニングの入口である。健診プログラムの注記も、受診勧奨判定値を超えた人には再検査、生活習慣改善指導、医療機関での管理が必要な場合があるとしており、薬を始める一律の境界とはしていない。反対に、LDLが120mg/dL未満でも、すでに冠動脈疾患を経験した人の管理目標を満たすとは限らない。
治療目標──一次予防は160・140・120、二次予防は100
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」は、発症前の一次予防でLDLコレステロールの管理目標を低リスク160mg/dL未満、中リスク140mg/dL未満、高リスク120mg/dL未満とし、冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞などの既往がある二次予防では100mg/dL未満としている。いずれも到達努力目標で、一次予防は生活習慣の改善を基本に、必要に応じて医師が薬物療法を検討する。
高リスクの糖尿病で末梢動脈疾患、網膜症・腎症・神経障害のいずれかを合併する場合や喫煙がある場合は、100mg/dL未満を考慮する。二次予防では、急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞などの併存という条件のいずれかがあれば70mg/dL未満を考慮する。55mg/dLを日本の成人全員に当てはめる構成にはなっていない。
自分の区分──病名の有無と10年リスクで決まる
国立循環器病研究センターは、虚血性心疾患またはアテローム血栓性脳梗塞などの既往を二次予防、糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患の合併を高リスクとし、それらがない人は年齢、性別、血圧、脂質、喫煙、耐糖能異常を使う久山町スコアで10年間の発症リスクを評価すると説明している。健診票のLDL欄だけを見ても、この区分は決まらない。
受診時は、健診結果に加えて、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞の既往、糖尿病や腎臓病の診断、服用中の薬、喫煙状況、家族に若くして冠動脈疾患を発症した人がいるかを伝える。LDLが180mg/dL以上なら、指針は一次予防のどの区分でも薬物治療を考慮し、家族性高コレステロール血症の可能性も念頭に置くとしている。
日本国内で、こうしたリスク別目標を健診受診者がどの程度理解しているかを示す最新の公的な全国統計は、本稿の執筆時点で確認できていない。報告書に記された基準範囲と自分の管理目標が同じかは、診察で明示的に確認する必要がある。
紅麹サプリ──表示は国の個別審査ではない
「LDLを下げる」と表示された食品も、治療薬と同じ位置づけではない。消費者庁によると、機能性表示食品は事業者が安全性と機能性の根拠を販売前に届け出る制度で、特定保健用食品と異なり国は個別審査を行わない。届出があることを、医薬品として承認されたことや、自分の治療目標に適することと取り違えられない。
紅麹では安全性も製品ごとに見る必要がある。消費者庁は2024年、健康被害が報告された紅麹関連3製品について直ちに摂取を中止し、異常がなくても摂取歴に不安があれば医療機関または保健所へ相談するよう案内した。この回収は紅麹を使う全食品を一括して対象にしたものではないが、天然由来なら一律に安全という見方は成り立たない。
国立健康・栄養研究所の資料は、紅麹と血中脂質の関連を調べたメタ分析で試験間のばらつきが大きかったことに加え、脂質異常症治療薬などとの相互作用が疑われた横紋筋融解症の症例を収載している。処方薬を紅麹に置き換えたり、併用で効果を足そうとしたりせず、利用中のサプリメントを医師や薬剤師に伝える。
子ども・妊娠中・持病や常用薬がある人
本稿の数値は成人の一般的な健診と動脈硬化予防の枠組みである。子ども、妊娠中または授乳中の人にはそのまま当てはめず、医師に相談する。糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある人は成人一般より低い目標が検討されるため、健診結果が基準範囲でも自己判断で通院や服薬を中断しない。常用薬がある人は、紅麹を含むサプリメントを使う前に医師または薬剤師へ確認する。
よくある質問
LDLが120mg/dL未満なら問題はないのか
一律には決まらない。120mg/dLは健診の保健指導判定値であり、冠動脈疾患などの既往がある二次予防の目標は100mg/dL未満、特定の高リスク病態では70mg/dL未満が考慮される。
LDLが140mg/dL以上なら薬が必要なのか
140mg/dL以上は高LDLコレステロール血症の診断基準であり、健診では受診勧奨判定値に当たる。薬物療法の要否は、再検査の結果、病歴、併存疾患、10年間の発症リスク、生活習慣の改善状況を踏まえて医師が判断する。
LDLだけを見ればよいのか
LDLが管理の中心になるが、HDL、空腹時または随時のトリグリセライド、non-HDLコレステロールも確認する。採血が空腹時だったかも判定に関わるため、検査条件を健診票で確かめる。
紅麹なら薬より安全なのか
そうは判断できない。機能性表示食品は国が機能性を個別審査した製品ではなく、紅麹関連製品では2024年に健康被害を受けた製品回収も起きた。医薬品との相互作用が疑われた症例もあり、治療薬の代替や自己判断での併用は避ける。
出典・参考資料
- 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)(厚生労働省)LDLコレステロールの保健指導判定値と受診勧奨判定値
- 脂質異常症(厚生労働省 健康日本21アクション支援システム)成人の脂質異常症診断基準と各検査項目の説明
- 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第3章(日本動脈硬化学会)リスク区分別の脂質管理目標値と厳格管理を考慮する条件
- 脂質異常症(国立循環器病研究センター)既往歴、併存疾患、久山町スコアによるリスク区分
- こんな時は迷わず119へ(厚生労働省)救急車を呼ぶべき胸部症状と顔・腕・言葉の異常
- 機能性表示食品について(消費者庁)機能性表示食品は国の個別審査を経ない制度であることの説明
- 紅麹を含むいわゆる「健康食品」関係について(消費者庁)2024年の紅麹関連製品の回収と摂取中止の案内
- ベニコウジに関する有効性/安全性情報(国立健康・栄養研究所)紅麹の臨床研究のばらつき、医薬品との相互作用に関する症例と基礎研究