BrewDog共同創業者のジェームズ・ワット(James Watt)氏が、かつての株主に送った電子メールを巡り、英国の情報コミッショナー事務局(Information Commissioner's Office、ICO)へ苦情が寄せられた。ワット氏は7月15日、新たなビール会社Second Bestを通じてBrewDogを買い戻す案を公表した。元株主4万3000人の支持を得たとワット氏側が説明する一方、連絡を受けた複数の元株主は、自分の連絡先を同氏がどう入手したのか分からないとしてICOに申し立てた

ICOは「評価中」 正式調査とは別の段階

ICOはBrewDogに関する事案を把握し、提供された情報を評価していると説明した。現時点で、正式調査の開始や英国一般データ保護規則(UK General Data Protection Regulation、UK GDPR)違反の認定、制裁の決定を公表したわけではない。

ICOの苦情処理指針は、受け取った情報を確認して関与の程度を決める初期評価と、組織へ開始通知を送る正式調査を区別している。初期評価の後も、情報の記録にとどめる場合、詳しい照会へ進む場合、改善を勧告する場合、規制措置を取る場合がある。このため、苦情が提出された事実だけで法令違反があったとは判断できない。

BrewDogのロンドン・ウォータールー店(資料写真)

ワット氏は適法性を主張、入手経路は説明せず

ワット氏は、法的助言を受けたうえで、適法に得たデータを使い、株主の正当な利益に関係する連絡を送ったと主張した。一方で、連絡先をどこから取得したのかは明らかにしなかった。

「正当な利益」は個人情報の利用を無条件に認める言葉ではない。ICOの公式指針は、目的が正当か、情報の利用がその目的に必要か、本人の権利や利益が優先しないかという三段階の検討を求めている。本人が予期しない利用である場合や、より侵害の小さい手段がある場合は、この根拠を使えない可能性がある。ただし、今回の電子メールが要件を満たしたかどうかについてICOの判断は出ていない。

Tilrayは名簿取得と情報共有を否定

Tilrayは、BrewDogのブランドと資産を取得した際、「Equity for Punks」と呼ばれる元株主の名簿を取得していないと説明した。名簿を管理する仕組みは、会社管理手続き中のBrewDog plcに残っているという。TilrayはSecond Bestによる連絡を承認、支援、実施しておらず、保有データを外部や元取締役へ共有していないとも否定した。

BrewDogの公式告知も、ワット氏は2024年5月に最高経営責任者を退き、現在のBrewDogとSecond Bestは別会社で、顧客・従業員・取引先・マーケティングを含む事業情報を共有していないとしている。ただし、これらはBrewDogとTilray側の説明であり、連絡先の実際の入手経路を確定するものではない。

3300万ポンドの資産取得から4カ月

個人情報を巡る苦情は、BrewDogの資産売却から約4カ月後に浮上した。Tilrayは3月2日、BrewDogの世界ブランドと知的財産、英国の醸造事業、英国とアイルランドの11店舗を計3300万ポンドで取得したと発表した

ワット氏の案は、この事業をSecond Bestを通じて再取得し、以前の持ち分と同じ割合の株式を元株主へ無償で割り当てるという内容だ。Tilray側はBrewDogを売却する考えはないとしている。買い戻し案が成立するか、ICOが追加の照会や正式調査へ進むかは決まっていない。

日本への直接の影響は確認されず

今回の申し立ては、英国での元株主情報の取り扱いを巡るものだ。日本の個人情報保護委員会が本件への見解や、日本国内の株主・利用者への影響を公表した資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。英国で苦情が受理されたとの報道を、日本国内で個人情報保護法違反が生じたとの判断に置き換えることはできない。

よくある質問

ICOはBrewDogを正式に調査しているのか
正式調査の開始は公表されていない。ICOが明らかにしたのは、事案を把握し、寄せられた情報を評価している段階までだ。

ワット氏は元株主の連絡先をどこから得たのか
入手経路は明らかになっていない。ワット氏はデータを適法に取得したと主張し、Tilrayは元株主名簿の取得とデータ共有を否定している。

4万3000人の支持は確認されたのか
ワット氏側が示した数字で、独立した確認は公表されていない。