韓国統一省の鄭東泳(チョン・ドンヨン)長官は8月5日、大統領への政策報告で、10年間中断していた京元線の韓国側区間の復旧工事を再開する方針を明らかにした。将来的に北朝鮮東海岸の元山まで線路をつなぐための足場と位置づける。統一省は19日の国会報告で、2027年に工事を再開し、2029年末の完成を目指す日程を示した

京元線は日本統治下の1914年、京城(現在のソウル)の龍山駅と元山駅を結ぶ223.7キロの路線として全通した。1945年の南北分断と朝鮮戦争を経て、軍事境界線付近の線路が断たれた。2014年には、ソウル駅と白馬高地駅を結ぶ観光列車「DMZ平和列車」が京元線で運行を始めた。

ソウル駅のホームに停車する観光列車「DMZ平和列車」
韓国は2014年、京元線のソウル―白馬高地間で観光列車「DMZ平和列車」の運行を始めた。(Jeon Han/Korea.net、CC BY-SA 2.0)

復旧区間は韓国側の9.3キロ

今回の対象は、江原特別自治道鉄原郡の白馬高地駅から月井里(ウォルチョンリ)駅までの9.3キロである。2015年の起工時点では、月井里駅から軍事境界線までの2.4キロは北朝鮮との合意後に工事を進める区間と整理されていた。2029年末という完成目標は韓国側の9.3キロを指し、元山までの越境運行を意味しない。

工事は2015年8月に始まり、北朝鮮による4回目の核実験を受けて2016年5月に中断した。従来の総事業費1790億ウォンのうち、370億ウォンが執行済みである統一省は2026年中に総事業費の増額、環境影響評価の再協議、地雷除去を進め、翌年の工事再開に備える方針を国会に報告した

南北協力基金の使途拡大と境界地域の振興

統一省は、復旧によって非武装地帯(DMZ)の平和・生態観光地へのアクセスを改善し、軍事境界線周辺の経済活動を促すとしている。同じ政策報告では南北協力基金の使途拡大も示され、鄭氏は過去10年間の年間執行率が予算の2〜3%にとどまったと説明した

北朝鮮は韓国政府の働きかけに応じていない。李在明(イ・ジェミョン)大統領は、その状況を「反響のない虚空に向かって叫ぶようなものかもしれない」と表現しながら、平和と共存を追求する方針を示した

北朝鮮は2024年10月、南北を結んでいた道路と鉄道の一部を爆破し、改正憲法が韓国を「敵対国家」と定めたと発表した爆破されたのは京義線と東海線の連結部で、今回復旧する京元線とは別の路線である。それでも、北朝鮮が南北間の物理的な接続を断つ姿勢を示した事実は、京元線の越境接続を遠い目標にしている。

元山葛麻の観光地区と鉄道構想

元山近郊の元山葛麻海岸観光地区は2025年に開業し、約2万人の観光客を収容する規模とされる。元山は京元線の歴史上の終点でもあるため、韓国政府は復旧区間を将来の「ソウル―元山」接続の足場と説明する。ただし、現在の工事は月井里駅までで止まり、軍事境界線を越える工事や列車運行について南北間の合意はない。

観光列車「DMZ平和列車」の車内
「DMZ平和列車」の車内。列車はソウル―白馬高地間を走り、今回の復旧区間は白馬高地から北へ延びる。(Jeon Han/Korea.net、CC BY-SA 2.0)

日本から見る際の焦点

今回の計画は韓国側区間の復旧であり、日本の鉄道網や物流網に直接つながる事業ではない。日本政府が京元線復旧事業への関与方針を示した公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。

当面の焦点は、韓国政府が総事業費の見直し、環境影響評価、地雷除去を終えて2027年に着工できるか、北朝鮮が接続構想に反応するかの2点である。京元線の再開方針は、国際輸送路の開通計画というより、南北関係が悪化した局面でも韓国側で接続の余地を残す政策とみるのが実態に近い。

よくある質問

京元線とはどの路線か
1914年に龍山駅と元山駅を結んだ鉄道路線である。南北分断と朝鮮戦争を経て軍事境界線付近で途切れ、韓国側と北朝鮮側が別々に運行してきた。

今回の復旧区間と日程は
韓国側の白馬高地駅から月井里駅までの9.3キロで、2027年の工事再開と2029年末の完成を目指す。元山までの運行日程ではない。

なぜ2016年に中断したのか
2015年8月に始まった工事は、北朝鮮による4回目の核実験を受けて2016年5月に止まった。再開方針の公表まで10年を要した。

北朝鮮は接続に応じているか
北朝鮮側が京元線接続に応じるとの公式表明は、本稿の執筆時点で確認できていない。軍事境界線を越える区間の工事と列車運行には南北間の合意が要る。