虫刺されによるかゆみは、虫の唾液や毒成分に対する皮膚のアレルギー反応で起きる。刺された直後から赤みやじんましんが出る場合と、時間を置いて赤いぶつぶつや水ぶくれが出る場合があり、同じ蚊でも年齢、体質、刺された回数によって反応は変わる。
日本皮膚科学会は、即時型反応は刺された直後から現れて数時間で軽快し、遅延型反応は1〜2日後に現れて数日から1週間で軽快すると説明している。時間がたってから腫れたという経過だけで感染とは決められない一方、全身症状や悪化する痛みを通常のかゆみとして扱ってはならない。
呼吸困難や意識の異常は119番
虫に刺された後、全身にじんましんが広がる、息が苦しい、腹痛が強い、意識がもうろうとする、意識を失うといった症状が現れた場合は、アナフィラキシーを疑って直ちに119番へ通報する。特にハチ刺されでは短時間に進む場合がある。自宅で冷やしたり、かゆみ止めを塗ったりして様子を見る状況ではない。
日本皮膚科学会は、虫の毒成分に対する強いアレルギー反応で全身のじんましん、腹痛、呼吸困難、意識消失が起こり、ハチ刺されでは30分以内にショック状態へ進む人がいると注意を促している。過去に処方されたアドレナリン自己注射薬がある人は、医師から受けた指示に従う。
広がる赤み、熱感、痛み、発熱は受診
かき壊した部分を中心に赤みや腫れが広がる、触ると熱い、かゆみより痛みが目立つ、膿が出る、悪寒や発熱を伴う場合は、早めに医療機関を受診する。皮膚の細菌感染が深い組織へ及ぶ蜂窩織炎では、こうした変化がみられる。
横浜市医師会は、蜂窩織炎を小さな皮膚の傷などから起こる細菌感染症とし、広い範囲の発赤、腫れ、局所の熱感、痛みに加えて悪寒や発熱を伴う場合があると説明している。虫刺されが原因か、別の皮膚病かを自宅で断定せず、症状の広がりと全身状態を医師に伝える。
軽いかゆみは冷却と清潔から
呼吸や意識の異常、広がる痛みや発熱がなければ、まず患部を流水で洗い、清潔な冷たいタオルなどを短時間当てる。皮膚を強くこすらず、冷却材を使う場合は布越しにして、冷たさを我慢し続けない。
日本医師会の子ども向け医療情報は、虫に刺されたら患部を冷やして皮膚を清潔に保ち、かゆみがひどい場合は医師へ相談するよう案内している。冷却はかゆみを和らげ、洗浄は汗や汚れを落とすための対処であり、原因不明の強い症状を治療する手段ではない。
軽症なら市販のかゆみ止め外用薬も選択肢になるが、年齢や妊娠、持病、併用薬によって使えない成分がある。日本皮膚科学会は、赤みやかゆみが強い場合はステロイド外用薬が必要になり、全身症状が強ければ内服治療が必要になるため、皮膚科専門医の受診を勧めている。大きな水ぶくれ、強い腫れ、長引く皮疹を自己判断でつぶしたり、手元の薬を重ね塗りしたりしない。
かき壊した後は小さな傷として観察
皮膚をかき壊したら、流水でやさしく洗い、もう一度かきむしらないようにする。出血があれば清潔なガーゼで圧迫し、止血後も赤みの範囲、熱感、痛み、膿、発熱の有無を確認する。広がる変化があれば受診へ切り替える。
爪で繰り返しかくと皮膚の傷が増え、細菌感染の入口になりうる。かゆみを我慢できないほど強い、眠れない、仕事や学校生活に支障が出る場合は、市販薬を次々に試さず皮膚科へ相談する。
原因の虫が分からない場合
虫の種類によって対処は異なる。ハチ、皮膚に付着したマダニ、毒毛を持つ毛虫、海外や山野での原因不明の刺咬を、蚊と同じ手順で済ませない。安全に撮影できる状況なら虫や患部の写真を残し、刺された場所と時刻、症状が始まった時刻を受診時に伝える。
日本皮膚科学会は、原因となる虫によって対処法や治療法が異なるため、可能なら実物を保管するか、写真で記録して医療機関へ持参するよう案内している。虫を捕まえようとして再び刺される危険がある場合は近づかない。
小児、妊婦、持病や常用薬がある人
小児。 大人用の外用薬をそのまま使わない。爪と皮膚を清潔に保ち、保護者が赤みの広がり、発熱、呼吸や意識の変化を確認する。薬を選ぶ場合は年齢を伝えて医師または薬剤師へ相談する。
妊婦・授乳中の人。 虫刺されに限定した日本国内の公的な一般向け処置手順は、本稿の執筆時点で確認できていない。冷却と洗浄を基本とし、市販薬は自己判断で選ばず、妊娠または授乳中であることを医師か薬剤師に伝える。
持病や常用薬がある人。 糖尿病などの病名だけで感染の有無や重症度は決まらない。一方、市販薬には病気や併用薬によって適さないものがある。PMDAは、治療中の人、妊婦、授乳中の人、薬や食物のアレルギーがある人は、市販薬を選ぶ際に薬剤師へ相談し、常用薬や健康食品も伝えるよう求めている。処方薬を自己判断で中止せず、皮膚症状が悪化する場合は主治医か皮膚科へ連絡する。
よくある質問
蚊に刺された赤みはいつまで続くのか
刺された直後に出る反応は数時間で軽くなる場合がある。1〜2日後に現れる遅延型反応は、数日から1週間ほど続く場合があり、年齢や体質による差も大きい。
どの症状なら119番を呼ぶのか
全身のじんましんに呼吸困難、強い腹痛、意識の異常が重なる場合は、アナフィラキシーを疑って119番へ通報する。ハチ刺されでは特に短時間で進む場合がある。
かき壊した傷はいつ受診するのか
赤みや腫れが広がる、熱感や痛みが強まる、膿が出る、悪寒や発熱を伴う場合は早めに受診する。かゆみだけだった部位で痛みが目立ち始めた変化も医師へ伝える。
市販のかゆみ止めを使ってよいか
軽症では選択肢になるが、小児、妊婦、授乳中、持病や常用薬がある人は購入前に医師か薬剤師へ相談する。赤みやかゆみが強い場合や改善しない場合は皮膚科を受診する。
出典・参考資料
- 虫刺され Q2 虫刺されの皮膚症状は?(日本皮膚科学会)即時型反応と遅延型反応の現れ方、軽快までの目安を示す一般向け資料
- 虫刺され Q3 虫刺されの全身症状は?(日本皮膚科学会)虫刺され後のアナフィラキシーで現れる全身症状を示す一般向け資料
- 虫刺され Q12 虫刺されの治療はどうすればよいですか?(日本皮膚科学会)軽症時の市販外用薬、強い症状の受診、原因昆虫の記録を案内する一般向け資料
- 白クマ先生の子ども診療所 夏の皮膚トラブル(日本医師会)子どもの虫刺されで患部を冷やし、皮膚を清潔に保つ対処を示す資料
- 皮膚の細菌感染症(横浜市医師会)蜂窩織炎の発赤、腫れ、熱感、痛み、悪寒、発熱を説明する一般向け資料
- Q6 市販のくすりを使用する場合、どんなことに注意したらよいですか?(医薬品医療機器総合機構)小児、妊婦、授乳中、持病や常用薬がある人の市販薬選択で薬剤師への相談を求める公的資料